[ 0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 第1回「崖の上のポニョ」は結局成功したのか? ] |
第1回 「崖の上のポニョ」は、結局成功したのか?(1) 斉藤守彦 ■ 「崖の上のポニョ」は、ヒットしたのか? 我ながらせっかちだとは思う。宮崎駿監督作品「崖の上のポニョ」は、7月19日の公開から約3か月を経過。スカラ座他でのファーストランが12月4日まで。翌日からはみゆき座他で続映されることが決定しているので、まだまだ上映は続くのだが、メインである夏休み興行も終わったことだし、とりあえずこのあたりで、ちょっと早い総括と検証をしてみようという試みである。 全国481スクリーンで7月19日からスタートした「崖の上のポニョ」は、上映第13週週末(10月11~13日)までの87日間累計で、総入場人員1239万2477名、興行収入149億1573万8215円。この記事がアップされる頃には、興収150億円の大台を突破していることだろう。 それでも日本映画としては、2004年11月公開の「ハウルの動く城」以来の興収100億円突破作品であることから、「歴史に残る大ヒット作」と形容しても良いだろう。 筆者は7月19日の初日、新宿ピカデリーで「ポニョ」を鑑賞したが、その時の観客層は、圧倒的に親子連れ、いわゆるファミリー客だった。アンケートに現れた「20~30代女性」とは、即ちヤング・ミセス層を指し、アンケートに現れない幼年層とは、つまり彼女たちが連れてきた子供たちのことだと考えて間違いないだろう。しかしながら、座席数607席の新宿ピカデリー・スクリーン1を占めた観客のほとんどが、こうした層だったのには驚いた。「ファミリー客がたくさん来ている」と言うよりは「ファミリー客しか来ていない」という印象さえ残った。 ところが、9月の半ば以降、目に見えてそのペースが落ちてくる。9月第3週(9/20、9/21)週末成績は、前週対比59.62%(興収)にダウンし、続く第4週では、ついに週末興収が1億円を割り込み(9880万3850円)、 興収150億円を目前に、一種の足踏み状態に陥ってしまった。 2. 「崖の上のポニョ」は、どう評価されたのか?に続く [筆者の紹介] |
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第1回 「崖の上のポニョ」は、結局成功したのか?(2) ■ 「崖の上のポニョ」は、どう評価されたのか? これはもう、賛否両論に別れた。 賛否両論の“賛”=肯定派の人たちは、上記の否定派による指摘すべてを「だって、これはファンタジーの世界なんだから」の一言でかたづけてしまう。1本の映画として、起承転結がはっきりしたエンタテインメントを求めるほうがおかしい、という意見が肯定派の言い分だ。 個人的な感想を述べれば、否定派が指摘するすべての要素は、僕も感じたことである。それが作品評価のすべてではないが、「ポニョ」という映画をすんなり受け入れることが出来ない、一種の障害になっていることは事実だ。肯定派のように「これはファンタジーだから」という理由で鑑賞者たる自分を納得させることが出来ないのだ。無論すべての映画にリアリティを求めるわけではないが、ファンタジー世界の物語であるならば、それを少しでも知らしめるアクションや台詞が欲しかった。ちょっとしたディテイルにでもそれが感じられれば、この作品の楽しさは倍増するだろう。些細な部分で観客を現実世界に戻してしまい、また作品そのものがフォーマットから逸脱したストーリーで、なおかつ精神的なカタルシスも感じられないとあっては、どうしても鑑賞後の感想は「映画を見たという手応えが感じられない」としかなり得ない。 3. 「崖の上のポニョ」と「となりのトトロ」の、ただならぬ関係?に続く 1. 「崖の上のポニョ」は、ヒットしたのか?に戻る 続きを読む "第1回 「崖の上のポニョ」は、結局成功したのか?(2)" » |
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第1回 「崖の上のポニョ」は、結局成功したのか?(3) ■ 「崖の上のポニョ」と「となりのトトロ」の、ただならぬ関係? 日本映画歴代第5位の大ヒットに「ポニョ」を押し上げた、その最大の功労者は、おやじふたりと9歳の少女だ。藤岡藤巻と大橋のぞみが歌う「崖の上のポニョ」は、現在までにCD42万枚(9月現在)を売る大ヒットとなった。この主題歌は去年のクリスマスにリリースされたものの、当初はまったく売れなかったが、映画公開が近づくに連れ、ヒットチャートを席巻したことは、各種の報道で知られている通り。 今回の「ポニョ」に関しても、「トトロ」が受け入れられたプロセスを踏襲したとまでは言わずとも、意識したと思える箇所はいくつか見られる。とりわけ作品の情報を発信する際、常に強調されたのが、「ポニョ」という映画が子供たちのために作られた作品であること、CGなどを極力使わず、手描きのもつ素朴さ、温かさを大切にした作品であること、そしてポニョというキャラクターの可愛らしさだ。 ■ 宮崎駿監督の次回作についての提言 「崖の上のポニョ」について、筆者が知り得たこと、また考えたことや感じたこと、分析したことをずらずらと並べてみたが、ビジネスとしての「ポニョ」は、冒頭で述べたように大成功を収めたと言える。 もし監督自身が作品作りのスタイルを変えるというのであれば、次回作では、ぜひ脚本家を起用することをお薦めしたい。保守化が著しい昨今の映画観客の期待に応えるためには、まずはストーリー面での整合性が重要だと思うからだ。 1. 「崖の上のポニョ」は、ヒットしたのか?に戻る |
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