トランスメディア提供アイコン01フリーサウンドノベルレビュー 『1980円の君~I am a software.~』


今日の副題 「実は純愛ストーリー」

ジャンル:ウィルス対策ソフト擬人化サウンドノベル(サイトより)
プレイ時間:1時間ちょい。
その他:選択肢なし、一本道。本レビューはNon-Voice版にてプレイ。
システム:Live Maker

制作年:2009/?/?
容量(圧縮時):42.5MB


道玄斎です、こんばんは。
今日はちょっとアルコールが入っています。長野県のお酒「翠露」というヤツです。
やっぱり、私は長野の酒が好きみたいですねぇ……。そっちのDNAが確かに存在している事がそんな所からも分かります。
さて、今回はウイルス対策ソフト擬人化サウンドノベルのご紹介。「擬人化」なんて言葉が付くと、ついつい萌え系か? と構えてしまうのですが、実際プレイしてみるとかなりの純愛路線で大いに楽しませて貰いました。こういう穏やかだけれども、強い愛情、みたいなものを描く作品は、実は貴重。他にもちょっと懐かしのウイルスの名前とか、パーソナルコンピュータの歴史、或いはプログラミングのお話とかね。
というわけで、今回は「Physics/Games」さんの『1980円の君』です。
良かった点

・穏やかで、力強い純愛ストーリー。最近、この手のものが少なくなってきているように思える。

・ちょっとした、パソコンの歴史や、プログラミングなんかも学べる。


気になった点

・もう少し、恵菜に対して恋愛感情を持つようになったきっかけなどの描写が欲しい。

ストーリーですが、サイトの方へリンクを張っておきましょう。
こちらからどうぞ。



というわけで、ウイルス対策ソフトの擬人化作品でした。
最初に書きました通り、擬人化って云っても、萌え路線の擬人化ではなくて、純愛路線の擬人化だったのが、本作の最大の特徴かもしれません。擬人化って云ってますが、実はAIなので、擬人化というとちょっと違うかもな、なんて。
敢えて、似たような雰囲気のものを挙げるとすれば『ちょびっツ』が近いかも。って、ちぃ程、本作のヒロインはぽやぽやしているわけじゃなくて、ナチュラルな感じです。

で、1980円で買ったウイルス対策ソフトを立ち上げたら、女の子が出てきて……という或る意味王道的な展開をするわけですが、どうやら、現実世界を生きる主人公が寝ている時のみ、電脳世界とリンク出来、ウイルス対策ソフトこと、恵菜に会える模様。ただし、恵菜の方は「こちら」に実はいつでもアクセスが出来るという。

最初は、ウイルス対策ソフト擬人化サウンドノベルなんて書いてあったから、美少女が悪いウイルスと戦っていくような、そういうちょっとアクションっぽい感触のものかと思っていたら、全然違いました。
本当に大まかに本作を二つのフェーズで分けてみると、「パソコンやプログラミングに関する豆知識」的な部分と何度も述べている「純愛」的な部分で構成されています。

で、前者の方も結構楽しいんですよ。
懐かしいウイルス名がゾロゾロとw 花火を打ち上げるだけのHappy99とか、hybrisとか。名前は忘れましたけれども、デスクトップを左右反転させるようなウイルスもありましたよね。実際、コンピュータウイルスって定義があって、自己複製をするとか、何項目かあったような気がします。

OSに関しても色々出てきて、懐かしのOS/2とか、伝説のLisaとか(Macintoshの前身ですな)が出てきます。Lisaはなんと画像付き。Macintoshファンは必見でしょう。私は昔、その手の本でちらっと見たっきりだったので、カラーの写真で見るのは初めてでした。
そういえば、音楽はNaGISA netさんのものも使われているようです(Macintoshで思い出しました)。ただ、MIDIで公開なさっている曲の中でどれが使われてたのか、分かりませんでした。もしかするとMIDIに音色を当てていて、それ故に分かりにくくなっていたのかも。

更に我らがFirefoxの日本版公式キャラのフォクすけも登場するというw
この名前、どうにかならなかったのか? とか色々考えるんですけれども、実はこのフォクすけは、名前を公募しておりまして、最終的に選ばれたのがフォクすけだった、というわけです。二年くらい前の話ですかね。かく言う私も公募で名前を送ったりしていたのですが、私のものは箸にも棒にもかからなかったようですw

こんな感じで、ウイルスの名前やコンピュータの簡単な歴史、或いはコンピュータの説明や蘊蓄なんかが詰まっていて、私にはとても楽しめました。作品の後半からはプログラミングが随分出てくるように。
Javaなんですが、人工知能をJAVAで書くって、一般的な事なんでしょうか……? 私は詳しくないので分からないのですが、普通人工知能って云ったらLispじゃないかしら? なーんて考えてみていたら、Javaの汎用性に注目して、の事だったみたいです。Javaで書けばWindowsだろうがMacだろうが、UNIXだろうが(今やMacもBSDの派生ですけれども)動くプログラムが出来上がるわけですな。

初心者がいきなりJavaを学ぶというのは、難しい気もしますが。。
昔、数学の時間にBasicなるものをやらされた記憶があるのですが、んもう、全然ダメダメでした。敢えて云ってしまうとやっぱりプログラミングってある種センスの有無が上達を分ける気がしないでもない。
私は全然出来ません。せいぜいCで書かれたソースをコンパイルしてインストールくらいしか、プログラミング的なものとは関わりを持っていないのです。とかいいつつ、最近はLinuxでも強力なパッケージ管理システムがあるから、もう手動でインストールする機会も殆どなくなりました。ああ、脱線ですね……。


大体、こういうコンピュータに関わる知識的な側面が土台にあって、後半からはプログラムである恵菜と主人公の純愛が描かれる事になります。
恵菜はJavaで書かれており、恵菜それ自体は実はウイルス対策ソフトでもなんでもなく、ただのAIです(ただのAIってのも何か変だなw)。ここらへんは作品のネタバレになってしまうので、ぼかして書きますけれども、そういう事情があって、主人公はJava修得の為に色々勉強して、恵菜を救おうとするんですよね。

この恋愛描写は、静かでありながらも、雰囲気があってかなり好みでした。
きゃぴきゃぴしているわけじゃなく、穏やかで或る意味で力強い愛を感じさせてくれるものとなっています。
最近の恋愛モノは、こういう「穏やかな愛情」があまり描かれない気がしますね。やっぱりちょっと派手な感じのものの方がウケるんでしょうか。
だからこそ、余計に本作の恋愛描写が美しく見えてしまうのかも。
あっ、そういえば、本作のイラスト『オムライスにケチャップを』でお目に掛かったイラストと同じものですね。イラスト担当の方が一緒なのかな? 作品の雰囲気に合った絵柄だったと思います。


さて、一方で気になった点ですが、折角上質の恋愛ストーリーが中盤から展開されるのに、その恋愛の発端部分が実はイマイチ不明瞭だった気がします。プログラムである所の恵菜がマスターたる主人公に愛情を持つというのは自然なものとして受け止められるんですけれども、主人公が恵菜を愛するようになった理由付け、そこが少し弱かったかな、と。
折角、ウイルス対策ソフト、という美味しい設定があるわけですから、そこらへんをもう少し活かしても良かったかもしれません。
例えば、私なら、ですよ? ウイルスで「Love Letter」、俗にラブレターウイルスって呼ばれるものがあります。で、ウイルスとしての「ラブレター」を見て恵菜からのものと勘違いして、どっきり。そんでもって微妙に彼女の事を意識するようになるとか、そこで一騒動あって、恵菜との仲が深まっていくとか、そういう感じにしても良いかも、なんて。今日は妄想爆発ですな。
私の妄想は兎も角、もうちょい、恋愛の「必然性」というか「理由付け」が欲しかったです。そうする事で、それ以降の純愛描写もより響いて来るんじゃないかしら、と愚案する次第。


プレイ時間は大体一時間くらい。
昔からコンピュータに親しんでいる人、穏やかで雰囲気のある恋愛モノを読みたい人は是非プレイしてみて下さい。

それでは、また。

# by s-kuzumi | 2009-03-24 23:45 | サウンドノベル | Trackback | Comments(0)

トランスメディア提供アイコン01なんてことない日々之雑記vol.191

道玄斎です、こんばんは。
ちょっと愛用していた椅子が壊れて、食卓用の椅子を流用しているのですが、何か座り心地に違和感が。
近々、椅子を購入する予定。椅子って日常に於いて、地味だけれども、滅茶苦茶活躍する機会が多い家具なわけで、やっぱり値段とか以上に、使い勝手、座りやすさを重視したい所。



■エディタを入れ替え。

入れ替えって書きましたけれども、別にソフトを変えたわけではありません。
単純に一回、アンインストールして再度インストールし直して、バイナリだけ最新のものに差し替えたわけです。別にアンインストールしなくても良かったんですが、一度さっぱりしてから入れ直したかったという、単純な気持ちの問題ですね。

愛用しているテキストエディタは、ご存じサクラエディタ。フリーにして高性能のエディタです。
メモを取ったり、文章を書いたり、或いは後々ワープロソフトに流し込む為の下書きを書いたり……。凡そ私の「文章を書く」という行為に切っても切り離せない道具です。
ちなみに、ブログは別にテキストにおこしてからコピペする、なんて事はしてなくて、いきなり投稿画面でそのまま書いちゃいます。何てことない話ですけれども、それが、ブログを書く時のこだわりになっています。

ノベルゲームを作られている方、作っている方もきっとシナリオを書く際には何かしらのテキストエディタを使用しているでせう。やはり人気が高いのは秀丸エディタでしょうかね。私の知り合いのプロの物書きさん達も秀丸愛好家が多いです。
物書きって一口に言っても、それこそゲームのシナリオライターから、雑誌の編集、或いは翻訳関係のお仕事とか色々あるわけですが、どの方達にも人気が高いのが秀丸。Windows用で、4000円くらいするんだっけ? なんか凄い良いらしいよ。

私は、サクラエディタで十分なので、こいつ択一。
何か、グダグダ説明していてもらちがあかないので、簡単に見本のファイルを載せちゃいましょう。

こんな感じの表示画面になっています。
基本、黒地に白で表示させるよにして、「全角スペース」「半角スペース」「半角数字」なんかを見やすいように変更している、という感じ。やっぱり、全角と半角が意図せずに混在しちゃうのは厭なので、そこらへんを見た目で分かるように。

多分……結構ベーシックな設定なんじゃないかな? と私自身は思っています。
意外な程多くの人が、黒地に白で文章を書いていて、寧ろ白地に黒で書く方が少数かも、というのが私が身の回りの物書きさん達を見ていて思った事。
中には、黒地に黄色で文字を表示する設定をしている人もいます。これは流石に何だかチカチカする、というかトラロープみたいだw
ちなみに、私の設定では、URLを表示する時のみ、黄色で表示するようにしています。完全に好みの世界ですけれども、こういう道具を色々カスタムして使うと、愛着も湧きますし、何より楽しいですよ。



■手帳を新調

大体、年末くらいから本屋さんや文房具屋さんでは、手帳が売られ出すんですけれども、私が手帳を買い換えるのは大抵、年が明けて結構経ってから、だったりします。確か、去年も現行の手帳のスタイルについていちゃもんを付けるような、そんな記事を書いた記憶もありますね。

一々手帳に記入して、手帳を見てスケジュール管理して、ってやっていくのは傍目から見れば、結構カッコいいんですけれど、私にはどうにも性に合わなくて。私の場合は「カレンダー」と「付箋」が手帳の代わりをしてくれるというわけで、実はあまり手帳って使わないんですよね。

カレンダーって一月31日分の日程が一覧で見れたり、或いは二ヶ月分を一枚に表示してくれていたりするでしょ。だから予定は、机の前に張ってあるカレンダーに書き込みをしてしまいます。そちらの方が視覚的に一月、或いは二月のスパンで物事が見えるので、何かと便利。

手帳にも一月ごとのカレンダー的な表示のページって付いているけれども、実際に予定を書き込むのは、一週間分、1ページの所じゃない? で、一週間ごとの予定を見て、更にその週が一月のどこに位置するかを、カレンダー的な部分で見て、とやるのは、なんかかったるい……。
「だったら、カレンダーだけでいいだろう」と極端に走る傾向のある私は思って、ここ数年このスタイルで通しています。

で、スケジュール管理には、付箋も使ってます。
7×7cmのちょいと大きめの付箋。こいつを使う。カレンダーを見れば、予定は分かるわけですから、その日の予定を付箋に書いて、定期入れの内側の部分に張っておく。これでスケジュール管理をする、というとんでもなくアバウトな私なんですが、意外とね、付箋はお勧めですよ。
このくらいのサイズだと、色々書き込めますし、買い物メモを兼ねたりする事も屡々です。財布の中に買い物メモを入れておいてレシートと混ざって、どっかに捨てちゃったりなんて事も無くなりますし、サイズもちょいと大きめですから、余白とか色々利用出来たり。

で、緊急性の高い予定は、もう直接付箋に書いて、パソコンに張っておく。
ちゃんとその予定を消化したら、あとは捨てるだけ。私のパソコンの横板の部分って、ちょっと「付箋スペース」というか「付箋パネル」になっていて、「購入予定の本の一覧」とか、「良く掛ける電話番号」とかそんなもんで埋まっています……。


そんなわけで、あんまり手帳を使わない私ですが、今回ちょっとグーな手帳を発見しました。
それは、「『超』整理手帳」というもの。一月ごとに一週間づつ表示されているスタイルとは違って、月をまたいでいようが関係なく、パッと二週間分の予定を見ることが出来ます。
で、だらっと広げると(そう、ブックタイプじゃなくて、四枚のシートが蛇腹になっており、そこに365日分の記録が出来るのです)、一気に七週間分の予定を見ることが可能。

そうすっと、いっきに一月半くらいの予定が見られるわけで、或る意味でカレンダーみたいなもんじゃない? それに月をまたいでも改ページとかがないから、シームレス。かなり理想に近い手帳です。

ただ、これにもやっぱり不満があって、それはサイズが長すぎるという事。
所謂一般的な札入れよりも縦に長いんだw どうも、この手帳は色々なモジュールを組み込む事でカスタマイズが出来るタイプのもので、A4の書類とかA4で印刷したものとかも手帳に組み込める為、このサイズになっている模様。うーむ、個人的にはもうちょい小さい方がいいんだが……。

後は、メモスペースもモジュール組み込みだという所。
手帳の何が便利かって、後ろの方に付いているフリースペースなんですよね。あれが多い方が私は好き。
デフォルトのセットには「idea memo」なる文字が冠された小さなメモ帳が手帳に組み込まれているが、些か薄いか。ただ、こいつは買い足したり、或いはA4の白紙を組み込んだりすれば解決出来るかな?
この小さなメモ帳は、ちょっとした工夫があって、それは「マス目」が印刷されている、という所。これはいいですね。マス目があると、使い勝手が向上します。アナログで何か大事な事を書いたりする刻には、私もマス目入りのノートを使います。

まぁ、つまり、「ちょっと良さそうだな」と思って衝動買いをしてしまった、とw
だけれども、ちょっとかさばるけれども、良さそうなものなので色々使ってみようかな、と思っています。今のね、机の前に張ってあるカレンダーは、相撲協会のモノなので、予定を書き込もうとすると、土にまみれたしかめっ面の朝青龍がこっちを見ていたりして、あまり気分が良くないのでw


というわけで、今日はこれからちょっと作業をしてきます。
それでは、また。

# by s-kuzumi | 2009-03-23 21:00 | 日々之雑記 | Trackback | Comments(2)

トランスメディア提供アイコン01フリーサウンドノベルレビュー 『Might -I think of you as yourself.-』


今日の副題 「海のような女の子と」

ジャンル:冬の日の恋愛モノ(微鉄道要素あり)?
プレイ時間:一時間程度。
その他:選択場面はあるが、ゲーム自体は一本道。18禁。18歳未満の方はプレイしないように。
システム:NScripter

制作年:2009/3/10(?)
容量(圧縮時):62.0MB



道玄斎です、こんにちは。
今日も一本、ゲームをプレイしました。昨晩、久々にゲームを探してフラフラと情報サイトを巡っていたら、何となくゆかしい作品を発見。どうも鉄道オタクとか、高全(高専の事か?)とか、変わった設定があったのでプレイしてみました。
というわけで、今回は「3 on 10 -サンオントウ- 」さんの『Might -I think of ys yourself.-』です。
良かった点

・ノベルゲームの中でも最高峰のヒロインの優しさ(包容力?)。

・鉄道絡みの効果音などに拘りが。


気になった点

・18禁シーンは無くても良かったかも。

・変わった設定をもっと活かせたら良かった。

最初は、ちょっと変わった設定は持つモノのオーソドックスな学園恋愛アドベンチャーかと思いきや、後半で18禁のシーンが出てきて面食らいました。
18禁の部分を抜かして考えると、割と尺自体は短めですが、ポイントポイントは押さえてあって、中々良いものがあるのでは?
ストーリーは、サイトのページへリンクを張っておきましょう。こちらからどうぞ。まぁ、一言で纏めると「鉄道オタクの男と、やけに家庭的な女が、出会って、歩いて、話して、結ばれるお話」(作者様ブログより)という事になるわけです。ってちょっとこれじゃ身も蓋もない感じですけれどもw


というわけで、いつものように解説に入っていきましょう。
先ず、主人公優と、ヒロインの麻衣は「高全」の生徒。高全ってのは実在するのか、ちょっと分からなかったのですが、大凡「高専」と同じモノと考えて差し支えなさそうです。普通の中等教育とは違い、五年間、技術を習得する為通う学校ですね。工業系がメインという事でいいのかな? 昔知り合いがそこで先生をやっていました。
工業系という事で、男の子が多いというか、女の子は殆どいない、というのが現状のようです。まぁ、アレですよ。文学部には女の子の方が多いけれども、理工学部では女の子は十人に一人くらいの割合でしか存在しない、というそういう感じ。そんな高全の中にあって、珍しい女子生徒がヒロイン麻衣。主人公は機械系の学科で麻衣は建築の方。あまり接点こそないものの、会えば挨拶はし、ちょっとした世間話をしたりするくらいの、普通のお友達、くらいの関係。


さて、物語は、駅のホームにて眠っていた優を、麻衣が通りかかって起こす所から始まります。
そして、あれよあれよという間に、何故か電車に乗って麻衣を家に送る事になって、ご飯までごちそうになって(食後の珈琲付き)……と。この電車に乗る所のシーンは、なんかリリカルで凄く印象的でした。

前半部では、割と鉄道というか、そういう「鉄道オタク」っぽい要素が入ってきて、これはこれで面白いですよね。本物の鉄道オタクの人が見たら、ぼやけた加工をしてある背景画像であっても、それが何の電車かきっと一発で分かるんでしょうw 鉄道がらみの効果音などはリアルで良いものを使っていると思います。

ですから、最初は鉄道と恋愛が絡んでくるような、「鉄道オタク賛歌」的なお話だと思っていたんですよw
しかし、徐々に読み進めていく内に、所謂「恋愛」とか或いは「感動」とかね、そっちの方にウェイトが置かれた話である事が明らかに。
その問題については、後述するとして、本作の最大のポイントは、ヒロイン麻衣のノベルゲーム史上に於いて、最高峰とも言える優しさ、包容力でしょう。「現実にはいねぇよ!」なんて思ってしまいますが、一方で「こういう人がいたならば、人生変わっていたかもな……」と思う人も多いのでは? 
何かこう、自分一人しかいない家に、男の子を招待してご飯を食べさせちゃうなんて、警戒心がないんだか、世間知らずなのか分からない麻衣ですが、そんな些末な部分は実はどうでもよくって、無限大の優しさが、彼女の好感度を劇的に向上させています。

こんな優しい女の子、私は今まで出会った事がない(ゲームだから当たり前なんですが)。
こんな赦してくれる女の子、私は今まで見たことが無い(ゲームだから……以下略)。
ノベルゲームは数多くあれど、ここまで究極的に「優しい女の子」を描いた作品は珍しいのでは? 昨今ではちょっとツンツンしたタイプの娘の人気が高いわけですけれども、もっとおっとりしていて、それ故のリアリティがあって非常に好感度が高いヒロインでした。
ヘンテコな口調や怪しげな特徴(異常な食欲など)ではなく、飽くまで内面の優しさを描写する事で、キャラを特徴付けていく、というのは私は大好きですし、それが王道的なものだと思っています。や、うぐぅとかも嫌いじゃないけれどさ!

何故、彼女がこんなに「優しく見えるのか?」というのは、クリア後に、おまけのページなどからその理由が分かります。同時に作品のコンセプトとか、そういう部分も語られていたりするので、やや蛇足かも、と思いつつも興味のある人は読んでみると良いと思います。
ただ、麻衣の麻衣のバックグラウンドは上手く、本編に絡めた方が良かったんじゃないか、と思わないでもないですよね。ここらへんはネタバレになりますから、このくらいで。

で、本作のコンセプトというか描きたい事が、実はタイトルと絡み合っている事も示されるわけですが、もし、そうだったら「I think of myself as you」の方が正しいんじゃないかなぁ? 私、英語苦手だからアレなんですけれども。thinkという動詞について、ちょっと辞書を引いてみた方がいいかもしれません。
ちょっと蛇足ですが、意外とこういう基本的な動詞こそが、難しいんですよね。think ofなのか、think aboutなのか、はたまたthink toなのか、とかね。


気になった点ですが、先ず18禁は無くてもよかったのでは? と思わないでもない。
やっぱりあった方が、「ウケ」みたいのは良くなるしプレイしてくれる人は増えると思うのですが、ちょっとこう良い感じの純愛路線? みたいなものが展開されるので、そこでえっちぃシーンが挿入されると、私は少し違和感が。というか、私は商業のものも含め、ノベルゲームにえっちぃシーンは必須ではない、と考えているので、そういう偏向はあるんですけれども。

もう一点は、折角「鉄道オタク」的な側面、そして「高全」という普通のハイスクールとは違う設定が為されているわけですから、そこらへんを作品にもっと結びつけても良かったのではないかと。
具体的に云えば、恐らく優が機械系の学科にいる事と、鉄道オタクであるという事は、きっとどこかで結びついていると思われますし(勿論、鉄道オタクには本作の根幹に関わる部分でもあるのですが)、そうした学校の描写なんかがゼロに等しいので、もうちょっとそこらへんの「主人公、ヒロインの日常」を描くと、作品にもっと厚みが出るんじゃないでしょうか。


大体、こんな所かな?
一風変わった設定と、(個人的に)ヒロインが滅茶苦茶魅力的な作品でした。
冬の名残がまだあるうちにプレイしてみて下さい。
どうやら本作が処女作らしいのですが、今後が期待出来る作者様です。次回作も楽しみにしています。


それでは、また。

# by s-kuzumi | 2009-03-22 14:33 | サウンドノベル | Trackback | Comments(0)

トランスメディア提供アイコン01フリーサウンドノベルレビュー 『春よこい』


今日の副題 「同人らしい、作品」

※吟醸
ジャンル:前世を辿るノベル(?)
プレイ時間:30~40分くらい
その他:選択肢なし、一本道。立ち絵は影絵となっている。
システム:NScripter

制作年:2009/3/5(公開)
容量(圧縮時):9.39MB




道玄斎です、こんばんは。
今日はお彼岸なので、お墓参りに行ったりしてきました。東京では、ボチボチ櫻が咲き始めています。今日は湯島というか上野というか、そういう所に行ったわけですが、上野の山の入り口は櫻がかなり咲いていましたよ。暖かい日が続けば、来週か再来週には満開になるかもしれませんね。
今日は、そんな日本人の心に訴えかける、櫻、或いは春をイメージさせる作品のご紹介。
というわけで「どこだい」さんの『春よこい』です。
良かった点

・低容量で尺も短めだが、しっかり作り込まれており、同人作品らしい良さが出ていた。

・ちょっとミステリー的な要素も。


気になった点

・敢えて言えば、飯屋のシーンが長すぎる、かも? (後述)

ストーリーは、今回は私が軽くまとめておきましょう。
高校生の主人公は、春になると原因不明の体調不良、そして記憶の混乱が起きる。
記憶は、昔の女の子のもので、主人公はそれは「前世」の記憶ではないかと推測する。そして女の子の記憶が現れる時期に、夢の中でその女の子が住んでいる地名が明らかになり、調べてみると、現在も名前を変えているが、その土地が実在している事を知る。
自分の前世を取り戻すため、主人公は夢に見た土地へと日帰りの旅行に出かける……。

と、こんな感じですね。

最初、「前世を探るお話」というものを見たときに、何となくスピリチュアルな感じなのかな? と思っていたら全然違いました。もっと、良い意味で、人間臭さが出ていますし、スピリチュアルというよりはヒューマニズムというか、そっちの系統ですよね。

さて、日本人ってのは不思議なもので、櫻なる植物にちょっと異常なまでに何かしらの感情を持っているようです。大凡、万葉時代で「花」と云えば「梅」の事を、それ以降の平安時代からは「花」と云えば「櫻」を指すようになります。「花は桜木、人は武士」なんて言葉もありますしね。

何の予備知識も文脈もなくて、「花が舞っている」なんて文が出てくる時、私達は高確率で「櫻の花」をイメージするのではないでしょうか? これも千年以上に渉る民族的な感覚というかね、そういうものなのでしょう。
ただ単に、櫻が「美しい」ものなのか、って云ったらそれは又違って、そこにはどこかしら「寂しさ」或いは「儚さ」を感じる気がします。
本作はタイトルが示すように「春」を、そして櫻の持つどこか寂しく、儚いイメージを持っているように感じました。そういえば、毎年毎年、櫻をタイトルに冠した歌がヒットしているのも、日本人的ですよね。

作品自体は、短いもので、30分~40分程度で読めてしまいます。
だけれども、作品としてしっかりと纏まっていますし、普通に面白いんですよ。ここで云う面白さは「funny」ではありません。「interesting」の方です。興味深い、或いはより日本っぽい云い方をすれば「ゆかしい」という感じ。少しづつ明らかになる主人公の前世である「ちえ」、そして彼女の母親の記憶は、読者を作品の中に引っ張り込みます。同時に「ちえ」の周りのちょっと隠微な人間関係は、前世の記憶に陰を落とし、「何があったんだろう?」と微かな不安と共に、頭の中に疑問として蓄積されていく事に。

あまり、旅行とかそういう部分に筆は割かれず、自身の持つ前世の記憶、或いは飯屋で聞く、昔話といった「過去の描写」が作品の大部分を占めるわけですが、そうした部分で、生じた「ゆかしさ」や疑問をきっちりと解消してくれるわけで、作品が淀みなく流れていく感じがして、総じてテンポも良くなっていたのではないかな、と。

ラストもとっても良かったですね。
商業のもののように、ビジュアル面が馬鹿みたいに凄いとか、ドハデなエフェクトとかは無いのですが、素朴でありながらも、作品、或いは作風に非常にマッチした演出がなされており好印象。
プレイが終わっても、余韻が残るような、そんな印象的なラストシーンでした。

で、本作は「どこだい」さんという事にしましたが、河童ボーナスさんがお作りになられた作品です。
「どこだい」さんは、この河童ボーナスさん、そして大山椒魚さんお二人のプロジェクトという事でいいのかな? お二人とも作風がどことなく似ていて、何となくうっすらと繋がりを感じていたのですが、まさか本当にプロジェクトを組んでいたとは……。
お二人とも、所謂「明朗ハイスクールラブコメディ」といったものとは、距離を置いた、少し不思議で良い意味での「同人らしい」良作をお作りになられていると思います。美麗な一枚絵とかパンチラとかのサービスシーンは無いんですけれども、そうした素朴な良さみたいなものが全面に出ていて、例えば、現行ではMIDIを使う作品が段々減ってきているという流れがあるような気がしますが、本作に顕著のように、MIDIの素朴さ(というか、MIDIは所謂楽譜ですからね)が作品全体の中で上手く解け合っている、そんな感触があるわけです。
素朴、なんて言葉を使いましたが、「凝っていない」というわけじゃないんですよ。文章の意味的な区切りで出てくるクリック待ちは「○」みたいなヤツですが、画面が変わる時は櫻の花びらになっていたり、或いはプラグインで花を散らすエフェクトを使用していたりと、拘って制作されています。かなり拘って拘って作られている事、想像に難くないのですが、割とね、現在的な絵をふんだんに使って、音楽もハイクオリティの音源のゲームなんかをプレイすると、ついつい相対的に「素朴」に見えてしまう部分もある、という事ですね。


正直、気になった点というのはあまり無いんですよね。
こういう作品に「立ち絵を付けろ」なんて言えませんし、或る意味でスキが無く作品として、完成されてしまっているわけです。
んー、敢えて言えば、飯屋のシーンでかなりの真実が明らかになって、というかなりすぎちゃっているような気がしないでもないかな? といった辺り。結局、前世の記憶にある土地(狭義の土地ですね)に主人公が滞在している期間がラストのシーンだけなわけで、例えば、ちらりと屋敷を出して、それを見て記憶が蘇るとか、そういう演出の仕方もあったのかな、とか。まぁ、敢えて言えばのレベルなんですけれども。


一見すると素朴な印象を受ける作品なんですが、商業でもない、或いは商業を意識してハイクオリティを目指した作品でもない、それらとは全くベクトルが違う、同人作品らしい作品です。
明朗ハイスクールラブコメに、少々食傷気味の方は是非プレイしてみて下さい。ノベルゲームの良さを再発見出来るかもしれませんよ。

それでは、また。

# by s-kuzumi | 2009-03-21 20:49 | サウンドノベル | Trackback(1) | Comments(0)

トランスメディア提供アイコン01なんてことない日々之雑記vol.190

道玄斎です、こんばんは。
何となく寝付けずに、こんな時間に……。
というのも、例によって例の如く、ゲームをやろうと思ったのですが、それより先にやりたい事が出てきてそいつに手を付けていたらあっという間に時間が経ってしまって……というパターン。



■効果音コレクション

何度か、このブログのDTM勉強会で効果音を取り上げてきました。
っていうか半分くらいが効果音についてだw 幸いにも、色々お問い合わせを頂いたり、実際にゲームを作っていらっしゃる方が、関心を持って下さったみたいでちょっと嬉しいですね。
「意外に簡単に作れちゃうんだぜ」ってのをコンセプトにしていたわけですが、最終的には自身の作品の効果音で簡単なものだったら、自身で作って頂いて、そこで得たテクニックをフィードバックしてくれたら嬉しいなぁ、なんてw

とか何とかいいつつ、私自身が断片的にしか(そして低音質)効果音を出してこなかったわけですから、ここいらで、効果音をいくつか纏めて提示してみて、その中から、何か使えそうだったら使って貰えたら嬉しいなぁ、思いました。

まぁ、これも例によって時間が掛かると思うのだけれども、ちょっとした効果音配布場所くらいは作ろうかな、と。頑張って、高品位の効果音を作ります。で、さっきまでその第一弾の効果音を作っていたのでした。
出来たブツは、

こちらからどうぞ。

直リンです。効果音として真面目に作ったので、いつもみたいに.mp3じゃなくて.wavにしてあります。
聞いて頂ければ、どんな音か一発でお分かりでしょう。そう、「教会の鐘」の音です。
2回くらい連続で鳴るようにしておけばより「教会の鐘」っぽくなるのですが、汎用性を重視して一回だけ鳴るように。

使いようによっては、お城の鐘の音とか、そういうのにもイケそう。今回はちょっと頑張って作ってみました。
音色を選定して、音や音程を確かめて、実際にyoutubeなんかで本物の教会の音と聞き比べたりもしましたよ。ですので、ちょっとリアルさ重視。本物はもうちょっとジャラジャラした感じがあるんだけどもね。
ちなみにアシッダイズ済み。効果音としてじゃなくても音楽素材としても一応利用出来る、らしいよ。

更に、今回はしっかりとエフェクトを掛けて(ディレイを薄めに掛けたり、コーラスを加えたり、リバーブで空間を拡げたり)、オートメーションで音量の減衰にも気を遣ってみました。
多分、2回とか3回とかループさせて使うと「らしく」なるんじゃないかしら? もし、使いたいなんて人がいらしたら許可なんかは別に要りませんので、ガシガシ使ってやって下さい。勿論、エンコードして使いやすいフォーマットにしてくれて構いませんし、不要部分をカットしたりしても。
ただ、無用のトラブルを避ける為に一応、著作権は私にあるよ、と。それだけ。きっとその内、ベーシックなものが多くなると思いますが、もうちょい種類も増える事でせう。



■というわけでアンケート

や、実は上に上げたファイル、ちょっとサイズが大きいんですよね。
勿論、.wavだから、という事もあるのですが、ビットレートの問題とか色々あって、それでもサイズダウンを試み試み、結果として3秒で240KBくらいになっちゃいました(最初600KBくらいあって……)。

ちょっと大きいかな? と思いますし、或る程度の目安が知りたいな、と思い実際に、ゲームを作っていらっしゃる方向けにアンケートを。もし宜しければコメントなり、メールなり頂ければ嬉しいです。


1:効果音のサイズって気になさいますか? 気になさるとしたら、どの程度までだったら許容範囲ですか?

2:サイズと音質(やクオリティ)という二つの観点があったら、どちらを重視なさいますか?

3:お作りになっている(なられた)作品では、大体、効果音のサイズってどの程度でしたか?


以上、三つになります。
もし、宜しければご回答下さいませ。


それでは、また。

# by s-kuzumi | 2009-03-19 01:13 | 日々之雑記 | Trackback | Comments(14)

トランスメディア提供アイコン01フリーサウンドノベル関係の雑記 箸休めvol.27

道玄斎です、こんばんは。
今日は、これからちょいと気になる作品を見つけたのでプレイするつもり。
なんだけれども、書き留めておきたい事なんかもあるので、又しても久々に箸休めを。今日は私も全然馴染みの無い世界のお話……。



■海外のサウンドノベル事情を軽く眺めてみる

というわけで、今回は、海外のサウンドノベルの状況をちらりと覗いてみようかと。
とはいへ、「海外発」というよりは、我が国にて作られた作品が海外でどう受容されているのか? とか、その辺りの事情の一端を見てみましょう。

altogether というサイトがあります。
ここは、どうも、日本のサウンドノベルの中から、作品を取り上げレビューし、尚かつ翻訳し、配布しているサイトのようです。多分、米国かな? 英語だし。って英語圏って一杯あるんだけれども、雰囲気で米国っぽい。whois掛けてみたら、サーバーは米国にある事は判明しました。けれどもサーバーがあるからって、サイトの運営者がその国に在住しているかってーと、それはまた別物だもんね。

で、そこで取り上げられている作品を見ると、お馴染みの作品が丁寧にレビューされ、翻訳されています。
どうも、傾向を見るに「感動系」の作品の比率が高いですね。少なくとも2008年のものに関しては、私は全てプレイしてますし、結構レビューも書いたりしていますねぇ。例のクリックして熱量を蓄えて打撃を加える、ミニゲームも実は窃かに遊んでいたんですw ノベルゲーム探しをやっていると、たまに「ちょっとやってみようかな?」と思うようなゲームが見つかる事があって、屡々そういうので遊んだり、ね。

ざっとしか見ていないのですが、かなり本格的なレビュー、分析がなされています。
書物からの引用も多いですね。フランス語、ドイツ語文献からの引用なんかもあったり、或いは現代日本に関する書物を引いて作品のバックグラウンドを探る、なんて試みも。勿論、かなりの分量があって、私のレビューなんかより全然長いですよ。
で、かなり日本のノベルゲーム/サウンドノベルを研究しているな、と思いますね。恐らく著名な情報サイトやベクターのようなサイトにも足繁く通って、作品を探しているのではないかと。少なくとも、翻訳出来ちゃうんだから、きっと日本語が滅茶苦茶堪能な方達がやっているサイトでしょう。
またねぇ、レビューサイトなんかもチェック入れているみたいで、私の敬愛する某レビュワーの方についての言及があったり(海外でも一目置かれている……凄いとしか云いようがない)、英語圏でのノベルゲーム受容に関しては、かなりお腹いっぱいになれるサイトです。
各々の作品に対して、滅茶苦茶細かく述べているので、扱っている作品数自体は少なめなんですけれどもね。


ただ、どうしても気になる点があったんです。
それは翻訳の問題。特に「タイトル」に関してなんですな。『ごがつのそら。』がまんま『May Sky』になってたりとかね。私が作っているのではないので分からないのですけれども、『May Sky』は確かに「五月の空」でしょう。けれども、本家が敢えて『ごがつのそら。』と平仮名で、そして「。」付きで示されているという、そういう何かしらの含意がそこにはすっぽりと抜け落ちてしまっている気がします。
『月照~ツキノテラス~』が『Moonshine』になっている、というのも、やっぱり気に掛かる所。

かと思うと、その一方で、『願えばきっと…』なんかは『From the Bottom of the Heart』なんて、ちょっと気の利いたタイトルになっていたりして、こりゃ、どういうわけだ? と。
やっぱりね、日本語を逐語訳的に、英文に置換するよりは、私としては作品の内容を踏まえて英語版は英語版のオリジナルのタイトルを付けた方が、良いような気がしますねぇ。原題は、日本人なら無意識的に捉える事の出来る「雰囲気」とか「ニュアンス」とか(平仮名なのか、漢字なのか、或いはカタカナなのか、ってな部分でもそういうモノってありますよね?)、そういうものを持っている事は非常に多いと思うので、それを逐語訳しちゃうと、却って外国の人には分かりづらいものになってしまうのではないかと。

そうは云っても、海外に於いてもノベルゲーム/サウンドノベルが広まっていくのは、ファンとして素直に嬉しいと思います。これもね、日本の文化みたいなもんですよね。
原点に戻れば、お姫様相手に、女房が物語を読んで聞かせ、当のお姫様はその物語の「イラスト集」を見ていた(と推測される)平安時代からの、古式ゆかしい伝統なのですよ、ノベルゲームってのはw
そういう事を考えていくと、潜在的に日本には、「ストーリーそのもの」と「キャラ」を分けて考えるような、そういうものもやっぱりあるのかしらね。


で、話を戻して海外とノベルゲームについて語っていきましょう。
ちょっと前に、海外発のノベルゲームがあるらしい、という情報を聞きつけ調べてみると、出てきました。

『かたわ少女』

なる作品です。
これ、まだ体験版も出来ていない正に制作中の作品。
ただ、タイトルがねぇ……。これはちとマズイんじゃないかなぁ……? 少なくとも放送禁止用語みたいですし、日本人の感覚としては、良くないタイトルだと思います。
ここらへんも敢えてやっているんじゃないとしたら、言語的な摺り合わせというか、言葉のニュアンスに祖語があるというか、そういう所なのかしら……。

タイトルが示唆するように、設定こそ変わっていますが、内容やキャラクターは我々が良く目にする、所謂ハイスクール学園恋愛モノという感じ。普通にキャラクターの名前、日本名だし、イラストの雰囲気も海外のそれには無い、日本独特なものになっています。当然のように、完成品は英語で配布されるようですが、わたしゃ、リリースされたら読みますよ。英語苦手だけどさ。
個人的に、キャラクターを見て気になったのは、リリー・佐藤さん。って、なんかリリー・フランキーの方がよっぽど外国人みたいな名前だw どうもリリーさんは、設定を読んでみると生まれながらにして盲目だそうで、なんとなくね、気になるのよ。
ともかく、リリーさんを含め、六人、ヒロインがいる模様。スタイル自体はオーソドックスだけれども、開発は順調なようで、「人混み」のエフェクトを実装した、なんてブログの記事に載っていました(この記事のちょっと前の記事にバレンタインのイラストがあって「べっ、べつにアンタの為に作ったんじゃないんだからねっ!」的な文が書いてあり、ちょっと笑いましたw)。意外と、そうした人混みのエフェクト、見たことないですよねぇ。
外国人が作る、ノベルゲームから学ぶ所も多そうです。

もしかしたら、今後、海外と我が国のノベルゲームの交流が盛んになり、ノベルゲームが世界的に認知されるようになれば、マルチプラットフォームのノベルゲームエンジンなんかも出てくるかも。
一朝一夕にそこまではいかないでしょうけれども、徐々にそういう流れの下地(の更に下地くらいかも)は徐々に出来てきているのかな、と。


そんなわけで、今回はちょこっと海外のノベルゲーム受容だったり、或いは制作状況なんかを見てみました。
他にもあるぜ! なんて事があったら是非教えて下さいね。


それでは、また。

# by s-kuzumi | 2009-03-18 20:22 | サウンドノベル | Trackback | Comments(9)

トランスメディア提供アイコン01フリーサウンドノベルレビュー 『だれかのかがみ』


今日の副題 「閉ざされた少女性とその境界」

ジャンル:現代系秘所物語(サイトより)
プレイ時間:2時間くらい。
その他:選択肢なし、一本道。
システム:Live Maker

制作年:2009/3/07
容量(圧縮時):149MB



道玄斎です、こんばんは。
今日はご紹介頂いた作品をプレイしてみました。難解である、というような事を書き込んで頂きましたが、確かに難解。んで、お勧めして下さった方のプログを今さっき見てみたら、私がベタ褒めする予定になっているらしいw いや、確かに基本的に甘口なのは認めますけれども、猫も杓子もベタ褒めはしてないわ。結構ね、辛口になったりする事もあるのよ? けれども、本作をベタ褒めするって予言している時点で、かなり私の好み、詳しいですね?w
ともかく、今回は「ウミユリクラゲ」さんの『だれかのかがみ』です。確かに難解ですけれども、音楽とかね、かなり上質の素材を使っていて、雰囲気のある作品だったと思います。ノベルゲームというよりは、少しアートっぽいかも。
良かった点

・上質の音楽と、そのチョイス。センスを感じます。背景画像も同じ。

・全体に渉っての微妙な緊張感や、ちょっぴり隠微な雰囲気が素敵。


気になった点

・テキスト部分でいくつか気になったものが(後述)

ストーリーは、サイトの方から引用しておきましょう。
恵音えねは故あって、棗なつめという名の女性の元にあずけられ、彼女と一緒に暮らしていくこととなった。

しかし初日に恵音は、得体の知れない不気味な金切り声を、聞いてしまう。

その不穏なノイズは断続的に、時折どこからともなくじわりとひびいて途絶えない。
次のは数分のちか、それとも数日経ったそののちか。

やがて恵音は、それが家のどこかから発せられていることに気付きはじめ―――

そこは広くて古い家。
知らない町の、その外れ。

と、こんなストーリーになっています。

今回は、折角、名指しされているので、ご指名下さったブログを見つつ、彼の感じた違和感の正体なんかを、一緒に考えていきましょうかw 普段はね、レビューを書くときって他の方が書いたレビューなり感想は基本的に読まない事にしているんです。読んじゃうと、やっぱり影響されちゃったりするしね。

取り敢えずは、ストーリーを補足しつつ、全体像を見ていきましょう。
恵音という女の子が、棗さんという女性(恐らく妙齢)に引き取られ、彼女の住む家で暮らすことになる、という所から物語は始まります。

本作のすっきりしない感じ、の一端は、この恵音のバックグラウンドに関する説明が乏しい点にもあると思われます。というのは、「何かの事情」があり棗が彼女を引き取ることになった訳ですが、その事情が実はラストまでプレイしても未消化のままです。途中にちらりとその辺りの事情に踏み込みそうな描写は出る事は出るんですが、決定的には分からない。

そして、二人の生活が始まるわけですが、その棗の住居にはどうも「何か」があるらしく、うめき声のようなものが時折響いてきます。この設定はちょっとした「館系ホラー」のように、作品全体に渉って緊張感を与えていて、プラスの設定になってもいるのではないでしょうか? 問題は、このうめき声の正体が、ラストで明かされると思いきや、実ははっきりと示されない点なんですよね。そこがすっきり感をもたらさない最大の理由だと思しい。

ただ、この声の正体、何となくうっすら、分からなくもないんですよ。
「読んだ人の抱いた想像、その全てが声の正体なのです」なんて逃げを打つのもアレなんで、もうちょい突っ込みますけれども、この声の正体を読み解く鍵は、始発部、そしてラストに挟まれた言うなれば本作のストーリーに当たる部分、そしてタイトルにあるのではないかと私は思っています。ま、当然ですよね。

ストーリーの方にちょいと戻りますけれども、恵音と棗の共同生活を描く一方で、この二人の「少女性」みたいなものをあぶり出していくような、そんなストーリーが進展することに。
内気というか、ちょいと暗めで垢抜けない恵音ちゃんの為に、棗は「イメチェン」を提案し、自ら以て恵音のイメチェンを実行するのですが、恵音にとっては最初は非常に不本意な変化になってしまうんですよね。
ここで重要なのは、タイトルにある「かがみ」という言葉です。少なくとも「今」の恵音と棗は全然タイプが違う少女と女なんですけれども、この二人には鏡写しのように重なり合う部分が実は多いのでした。

明言されないものの、どうも棗は恵音に対して「昔の自分」を見ているようなフシがあります。
ひらひらの洋服について「棗さんこそ似合うんじゃ?」なんて云われたときに、動揺していたり、ロリータファッションの専門誌を何だかんだで見入っている姿も描写されます。
こうした二人の重なり、それ故に、棗の恵音に対してのイメチェンがあったりするのではないかと。私が読んだ限りで、非常に俗っぽい喩えを出すと、「息子(娘)に自分の出来なかった事をさせる」みたいな。そういう感触がありますよねぇ。

で、更に咲かせる事なく終わった「少女性」を棗が再発見するような、出来事、エピソードもちゃんと語られますし、実はそういうものに憧れていた、というような微かな示唆もあるんです。
なんだけれども、恵音は恵音で、少女性を一時的に喪失するわけですよ。リアル少女世代と思しいのだけれども、それを消失してしまう。
恵音と棗の二人は、それぞれ似通う所が実はあったのですが、ここに於いて差異が生じるんですな。

ここまで書いて、なんとなーく思った事があるので、一応書いておきましょう。
というのは、最初の方に出てくる「謎の声」と、ラストで恵音が向き合う事になる「謎の声」は本質は同一かもしれないけれども、実は違うモノなんじゃないか、という事。
何でそう思うのさ? とか色々あると思いますけれども、そこらへんは考えてみて下さい。まぁ、飽くまで「私の想像では」という但し書きが付くんですけれどもね。


さて、ここいらで本作のオイシイ所もご紹介しておきましょう。
先ず、雰囲気が凄くいいんですよ。それは「良い雰囲気ね」って文脈(?)で使われるような素敵でお洒落な雰囲気というわけでもなくて、作品の内容と音楽や背景といった要素が綺麗にハマっている所から来る「雰囲気の良さ」です。
音楽は高品質の少し物憂いピアノ曲がメインで、クオリティが高いと思いますし(意外な程容量が大きいのは、きっとこの音楽に拠るものでしょう)、使い所もバッチリだったんじゃないでしょうか? 背景画像も清潔でこれは普通におしゃれ感も感じさせるようなもので、やはり作品やその雰囲気に良くあったものだったと思います。

更に挙げると、少なくとも表面を見る限り、ちょっぴり百合っぽいような、そういう雰囲気もあったりして、それが作品を貫く、少し暗くて隠微なムードと馬鹿みたいにハマってるんですよね。
敢えて言ってしまえば、「雰囲気で出来た作品」という言い方も出来るかもしれません。こういう雰囲気を楽しむ為にプレイする、というのも多いにアリだと思いますし、そうしたプレイに十分耐えうるクオリティも持っていると思います。


さて、またちょっと小難しい話に戻りましょうか。
もう一個、本作を読み解く鍵を挙げると、サイトのaboutから見ることが出来る、作品の傾向があります。
どういう作品を作ろうとしているのか、というような事をご説明下さっているわけです。そこに見えるキーワードを本作の場面に当てはめていけば、おぼろげながら、作品の謎が見えてくるのではないでしょうか?
確かに難解で、「完!」というような、強いエンディング感というか、シメ感こそないのですが、少しフワフワとしていて、これはこれで作品として成立しているわけですから、私はそこまで「何か良くわかんねぇなぁ?」というような印象はないんですよね。じゃあ、どこまで分かってるのよ? って聞かれたら沈黙するしかないんですけれどw

合っているかどうかは分からなくても、プレイヤーに「考えさせる」タイプの作品、私は結構好き。
時にはなーんも考えずともプレイ出来る作品も無性にプレイしたくなるんだけれども、たまにはこういうちょっと難解なものもないとね。


ですので、作品の内容そのものに関しては、難解ですっきりしない感触がある、という点は否定しませんが、私はこれはこれでアリだろう、と思いますぜ。
寧ろ、私が気になった点は、文章にあったりします。

というのも、どちらかと言えば本作は「小説調」。ですので、ちょいと凝った表現が多いんですが、そこで違和感を感じる事が屡々あったんです。
具体的に云えば「斟酌」という言葉が都合三回かな? 出てくるんですが、何となく斟酌って言葉はそぐわない感じがするんですよ、それが使われている文章には。しかも、斟酌が出てくる時は否定語を伴って出てくるわけで、「斟酌せずに」とかそういう形を取ります。

「ステムを抓んだ二つの指を、斟酌しないで傾けた」

という文章がありました。これは未成年たる恵音ちゃんに棗さんがワインを呑ませる場面。
あっ、脱線させて貰うよ? 本作読んでたらワインが呑みたくなって(普段、ワインは殆ど呑まない。あまり好きじゃないんだわ)、今ちょっとワインを呑みつつこれを書いてます。イタリア産のワインで、多分値段もそんなに高いものじゃないと思うのですが、ちょっと美味しいですね。ワインを呑んで美味しいと思ったのは凄く久しぶり。いつもみたいにマグカップじゃなくて、ちゃんとワイングラスを使用。

話を戻しましょう。
ここの「斟酌しないで」ってのは、多分「躊躇せずに」と置換可能なんですよね。
他にも出てくる「斟酌」の文も全部「躊躇せずに」とか「迷いなく」とかと置換出来ます。他の例としては「斟酌なく咲くティアードスカート」とかね。何となく、本作に於ける「斟酌」という語の使い方に違和感があったような気がします。
その他にも少し凝った文章にしてしまった為、何となく違和感を覚える文章があるような。ただ、ここらへんは文章の好みの問題なのかもしれませんが、もう少しすんなりと読める方が良かったかな、と。読点を付けた方がベターだろうと思われる所なんかもありましたしね。

あっ、そうそう。
本作に於いて、一つだけ、滅茶苦茶気になった所がありました。
それは背景画像とテキストの齟齬です。棗の部屋にはノートパソコンが設置されている事が示されているのですが、画像ではデスクトップが……。なんか重箱の隅をつつくみたいで恐縮ですが、背景とかかなり拘って上質のものを使っていたので、少し惜しいな、と。



大体、こんな所でしょうか?
繰り返しますが、私はこの作品、アリだと思いますよ? 素材の利用を含めた雰囲気は抜群だし、少女性みたいな私の好みのテーマもばっちり入っていると思しいわけで。
実を云うとね、本作にそこまで違和感を感じなかった理由の一つは、「こういう作品に慣れているから」なんですよ。尤も、私が慣れているものはノベルゲームではなくて、CGアニメなんですけれども。本作をプレイして実は相当ビビりました。というのは、私が慣れているCGアニメを作った人が本作の制作チームにいるんじゃないか? と思ってしまったからなんですね。符号するキーワードや作品の持つ雰囲気が、ちょっと冗談じゃないくらい似ていたり、ね。
や、勿論、そんな事はなくて、紹介文を読ませて頂いたら、明らかに違う事が分かりましたけれどw


「ちょいと雰囲気のある作品はないものか?」と悩んでいる方がいらしたら是非、プレイしてみて下さい。
上質の雰囲気が存在していますし、色々と頭を悩ませて考えるに足る作品だと思いますよ。

それでは、また。

# by s-kuzumi | 2009-03-17 23:12 | サウンドノベル | Trackback | Comments(6)

トランスメディア提供アイコン01フリーサウンドノベルレビュー 『ひとかた』


今日の副題 「元祖! ループ作品」

※大吟醸
ジャンル:現代伝奇(?)
プレイ時間:~10時間
その他:選択肢はあるが、作品の流れそのものには影響しない。
システム:NScripter

制作年:2001/10/10(最初期)、今回プレイしたものは2007/1/13に改訂されたもの。
容量(圧縮時):57.4MB




道玄斎です、こんにちは。
今日は、こんな時間にゲームで遊んでプレイしたりしています。とっても暖かくて良い日ですね。
布団を干したり、色々やっています。で、今更紹介するのも何だか気が引けるんですけれども、ノベルゲーム/サウンドノベルファンだったら、きっとプレイしているハズの作品をご紹介。文句なしの大吟醸です。
というわけで、今回は「ゲルひみつ結社」さんの『ひとかた』です。
良かった点

・実は物凄く丁寧な描写がなされている。

・グイグイと読者を引っ張り込む、巧みな構成。

・ループ型の元祖的作品。


気になった点

・背景画像の加工がやや気になるか?

ストーリーはサイトの方から引用しておきましょう。
静かな田舎町、打追。南護は、その地中に眠る牛鬼を退治すべく依頼を受けて打追町にやってきた。牛鬼は十二年に一度、力を増す。そして今年はその十二年目にあたるのだ。
 異形の怪物である牛鬼に対して、いったいどう戦えばいいというのか? 打追の街を調べ始めた護は、自分が想像もしていなかった人間関係と謎の渦へと巻きこまれていく…。

というもの。
前回プレイしたのが、相当前だったのですが、今回readmeを見てびっくりしました。何と2007年まであれこれと改訂がなされていたんですね。恐らく、最も大きな変更は、2006年の6/18日付のものなのではないでしょうか?
というのは、ベクター向けに修正、と書かれているんですよ。以前、私がプレイした時には、18禁でした。といっても、そういうのがメインではなくて、飽くまでお話の中の本当に一部に組み込まれている、というものでしたけれども。
今回プレイしたヴァージョンでは、そうした性的なシーンがカットされ、且つ、下ネタなんかもカットされたのではないかと思います。昔は主人公護は、もっとはっちゃけたヤツというか、結構下ネタとか、しょーもねーギャグ全開で、所謂エロゲの主人公を地でいくようなタイプだったんですけれども、今回はそうした部分が非常に少なくなっているように感じました。実際の所、どうなんでしょ? 本当に下ネタ的な部分、カットされたのかなぁ?

今、Wikipediaの項目を見てみると、やっぱり「寒いおやじギャグを連発するが、改変版ではある程度修正されている」なんて書いてあります。やっぱりカットされたみたいですね。
多分、当時プレイした人が、改めて現行のヴァージョンをプレイすると、そのプレイのしやすさ、或いはテンポの良さにちょっと吃驚するんじゃないでしょうか? や、元々(ループの連続を抜かせば)テンポは良い作品だったのですが、例の「寒いおやじギャグ」や下ネタで、局所的にテンポが悪くなってた部分があったハズ。


さて、多くのノベルゲーム/サウンドノベルファンがプレイして、そして多くのレビュワーが本作のレビューをお書きになっています。一体、そこで私が何を書くんだ? って話なんですけれども……。
そうねぇ、正直、「未プレイの人が居たら、兎に角プレイしてくれ!」としか言えないのだけれども、折角、2回、それもヴァージョン違いのものをプレイしているので、今回新たに気がついた、本作の良いところ、なんかに焦点を当てつつ、いつものように語っていく事にしましょう。

今回、改めてプレイしてみて、気がついた点は、「実は描写がかなり丁寧」だという事。
一例を挙げると、さりげなく食事に「虫除けの網」が掛かっている事が語られたり、或いは、「蝶番みたいに、ぺったんぺったんと頭を下げた」とか、ちょっと気の利いた表現が多いんですよ。
ラスト付近だって、白装束にカナブンがぶつかる、なんてシーンがちらりと出てきますけれども、そんな描写は無くても全然問題ないんですよね。けれども、何気ないリアリティを丁寧に描く事で、「伝奇」という言わば大きな嘘(現実では無いという意味で、ね)を根本的な部分で補強しているというか、支えているというか。

登場人物の描き方も、いいですよね。
やはり、名作と呼ばれる作品は、「脇役」が魅力的なんですよ。主人公とヒロインだけキャラが立っていて、あとはお決まりの「悪友役」みたいのが出てくるのとは一味違う。
作品世界は、主人公とヒロインだけで成り立っているのではなく、「その世界」に生きている人々、全てが支え合って存在している気がします。ですから、脇役を丁寧に描くこと、脇役にも魅力を感じさせるようにすること、それが大切になってくるのではないでしょうか? 勿論、ジャンルによっては、「僕と君」しかいないなんてものもあるでしょうし、そうした作品の中に名作がある事、否定しません。
しかし、王道は「脇役を含め、魅力的な世界を構築していくこと」、それが大事な事だと思うのです。それは、言い換えると「丁寧な描写」という事でもあるわけです。

本作では、ヒロインとヒロイン的とでもいいましょうか、そういう女性キャラが何人か出てくるのですが、立ち絵や一枚絵がなくとも、ばっちりそれぞれのキャラの特徴や性格が分かります。当然、どの娘もみんな魅力的です。個人的には、智恵さんが好きですね。正ヒロイン(?)の美咲も悪くないですけれども、どうしても智恵さん的な造型に惹かれてしまいます。
依絵さんに関しても(彼女をヒロインやヒロイン的な女性にカウントするのは些か抵抗があるのだけれども)、最後までプレイすると、憎めないというか、思わずある種の愛しさを抱いてしまうような……。それも、やはり依絵という人物が「作品世界の中で生きて」いる事に起因するのでしょう。彼女は彼女なりの『ひとかた』という物語を紡いでいるわけです。
そう、脇役達は脇役達で、それぞれがそれぞれの『ひとかた』という物語を、精一杯生きている。そのリアリティこそが、作品を支えていると言っても過言ではないだろう、と。


本作を語る上で、避けて通れない問題は、「ループ」です。
やはり、伝奇調の作品では多い気がしますが(『時流』とかね)、私の勝手なイメージでは、本作『ひとかた』こそが、そのループの先駆けというか、元祖的な存在なのです。勿論、ノベルゲームだけでなく、他のジャンル(小説とか)まで目配りをすれば、きっとループという装置は本作以前にも色々見つかると思います。
それでも、本作の「ループ」が後続のノベルゲームに与えた影響はやはり無視できないものがあるのではないか、とも思うのです。

このループのせいで、本作のプレイ時間は平均10時間くらいになっているそうです。
ただ、実はNScripterですから、ループ部分で既読スキップを使うと、かなり時間を短縮出来ちゃいます。あっ、初めてプレイするって方は、ループ部分もしっかり見て下さいw

ループについてあれこれと考えてみると、近年のループものって主人公が最初の方は「ループしている事に気がつかない」というようなものが割と増えてきている気がするのですが、本作は、ばっちり主人公がループであることを認知します。「夢」という捉え方をしているものの、ちゃんとそこに「ループ性」を感じ取っているんですよね。
で、今述べたように主人公がループを認知しているか/していないかってのは、結構な問題であるようにも思えます。ループするって事は基本的に主人公が「マズイ選択」をして、死亡した際に発動します。主人公はループに気がつかない。けれども、読者であるプレイヤーは「何がまずかったのか?」を画面越しで見ている。
となると、次、「同じ場面」が出たときにプレイヤーは「正しい選択」をする事が可能です。当たり前ですけれども。
しかし、ループの存在を主人公が認知していると、ループした際に自分を危険に陥れる人物が登場した際、ちゃんと地の文で「あのやろう……」みたいな、感情が表現され、プレイヤーも同じような感情を持つ。で、主人公とプレイヤーが「協力」するようなイメージで、「正しい選択」をしていく。
つまり「認知型」のループは、主人公とプレイヤーを一体化させ、より深くプレイヤーを作品にのめり込ませる、そういう装置になっているのではないかと愚案致します。
勿論、本作は「認知型」のループです。

そうそう、ループと選択肢に関連して、なんですけれども、今回一度、「明らかに駄目な選択肢」をループ時に選択してみました。そう、ループ前の世界ではそれで死亡してしまう、という選択肢です。
だけれども、再度ループが行われるだけで、それでバッドエンドにはなりませんでした。つまり、正しい選択をしないと延々にループから抜け出せないというw

あと敢えて述べておくとすれば、音楽が良い、という辺りかな?
かなり雰囲気の良い曲が流れます。作品時間に相応しい「夏らしさ」を感じさせてくれる楽曲が多いかも。
夏っていっても、太陽真っ盛り、飛び出せ青春! って感じでもなくて、どことなく穏やかで気怠くて、やはり舞台である「海の町」を感じさせてくれる、夕凪のような曲があって、個人的にかなりヒットしました。「依絵のテーマ」なんですけれども。
ちなみに、舞台はどうも、真鶴のようですよ? 本作でのボスというか悪の親玉たる存在が牛鬼なんて名前ですから、私は最初てっきり四国だと思っていました。私の記憶が確かならば「牛鬼祭り」ってのが四国のどこかにあったはずです。牛鬼ってのは、濡れ女なる妖怪とタッグを組んで人間を殺す悪いヤツ、なんですが、作品の中では、或る意味でイカニモな悪役です。

ですので、本作の目的は、「牛鬼とその協力者を捜し出し、牛鬼を討伐する事」なんですね。
で、ループする事で、多色刷りのシルクスクリーンのように、少しづつ手がかりや、真実、事件の背後にあるものが見えてくるという構造。そうして、少しづつ主人公とプレイヤーが一体になり、事件の真相に近づいていくわけで、長時間プレイでも苦にならない面白さがあります。
最後のループは流石に「ここでまたループかよ!」と、少しだけイラっとしましたがw
ともあれ、ラストは意外な程あっさりしていて、それでいて思わず涙が出てしまうような、印象的なラスト。単純な「感動」とかとも違う手触りがあります。


気になった点は、敢えて挙げるならば、背景画像の加工かなぁ?
少し前のゲームでは多いタイプなんですが、大体、キャンバス地のように加工するタイプ。写真をそのまま使っちゃうと「あそこだ!」って分かってしまったり、フィクションであるはずの作品が妙に悪い意味で現実感を帯びてしまったりする為、そういう加工にしているのかしら? ただ、私は、なんですけれども、何となく全部が全部キャンバス地加工だと目が疲れてしまいます。
最大の「気になる点」だった、下ネタやアレな風味のギャグが結構カットされていたので、こんな所でしょうw


NaGISA net」さんの『カレイドスコープ』同様に、立ち絵、一枚絵がなくても、丁寧に描写された良質のシナリオ、そして脇役を含めたキャラクターの魅力が発揮されていれば、自ずとレベルの高い作品が出来上がる、というお手本のような作品です(勿論、高い構成力ってのも必要ですが)。フリーのノベルゲーム/サウンドノベルの最高峰の一つでしょう。

プレイ時間がかなり長目ですが、もし、まだ未プレイという方がいらしたら、是非プレイしてみて下さい。
そして、昔プレイした事がある、という方も改めて是非。現行のヴァージョンでは更に磨きが掛かって(例の下ネタも抜けて)、プレイのしやすさ、感情移入度の高さが向上していることが分かるはずです。

それでは、また。

# by s-kuzumi | 2009-03-16 16:35 | サウンドノベル | Trackback | Comments(0)

トランスメディア提供アイコン01フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『dizzy』


道玄斎です、こんにちは。
今日はお休みなので、第二弾を。先ほどまで、ちょっと長文の作品をプレイしていたので、今回は短めの番外編を。こういう、ちょっと癒し系の作品もいいですよね。
というわけで今回は、「elecトリック」さんの『dizzy』です。

ちなみにたまに云っておかないと忘れちゃうから、云っておきますけれども、番外編は普段取り上げるような小一時間以上の作品とは違って、あっさり10分とか15分とかそのくらいで終わってしまう作品をご紹介する、というもの。んでもって、短い作品ですから「良かった点」「気になった点」を挙げるのも野暮ってなもんで、そういうのも付けていません。OKでしょうか?


で、久々の一日二作品プレイ。
ちょっと長目のものをプレイした後は、さっぱりと短い作品を、そして短い作品を読んだ後は長い作品を読みたくなりませんか? 私が天の邪鬼なだけかもしれませんけれども。
先ほどまでプレイしていた伝奇モノは、人死にが出たり、割と重たいテーマも内包していたので、今回は割とライトで楽しい作品を持ってきました。

イラストも少し淡い塗り方で、可愛らしさが出ていましたね。
タイトルのdizzyってのは、まぶしいって意味だったかな? 試しに今、検索で「dizzy sunlight」とか打ってみたら、ちゃんと出てきたから恐らく合っているハズ。ちょいと意味が怪しい英単語があった場合、想定出来る文章とかを適当に作って検索してみると、意味がはっきりしたりします。一々辞書を引く手間が省けて便利な時もありますよ。
それは兎も角、タイトルと作品の中身がどう繋がるのか? っていえば、何となく分かりづらかったような……。多分、グッドエンドで見ることの出来る景色と関係があるのかな? とは思いました。

というのも、本作は、一人の女の子が幽霊が出ると評判の屋敷に、単独で乗り込んでみた所、普通に可愛らしい二人の幽霊が居た、というわけで、幽霊と「まぶしさ」みたいなものって一見すると相反する要素があるんですけれども、本作に出てくる幽霊は、ちょっと可愛らしくてファニーな感じ。
純粋というか純真みたいのを突き詰めていったら、少しアレな雰囲気を持ってしまったようなパルティーちゃん。そして、中途半端な狼男ことロダさんの二人が、幽霊の正体です。

遊び方(?)としては、選択肢に答えつつ(結構、多め)、彼らと友情を育んでいく、というタイプで、幽霊が出てきますけれどもホラー的な要素は一切無し。
大体、10分あれば一つのルートを最後まで見ることが出来るさっぱり設計。このくらいならYuuki! Novelでもそこまで苦にならないですね。どうやらルートは、バッドエンド、ノーマルエンド二つにグッドエンド二つ、そしてオマケエンドの計六つある模様。

何度かプレイすると分かりますが、大凡パルティールートとロダルートに大別出来ます。
それぞれにノーマルエンドとグッドエンドが一つづつあるってイメージですね。で、バッドエンド以外のルートをどれでも一つクリアーするとオマケモードが現れる仕組み。
勿論、Yuuki! Novelですから、クリアしたデータからロードして始めないとオマケモードは出てきません。その点だけ注意が必要ですね。

本当に10分の作品ですから、大事件が起こった! とか、はたまたラブラブ展開が! とかそこまで大仰なストーリーではなくて、もうちょっとあっさりとして、それでいてどこか楽しく、そして優しげなストーリーとなっています。
こういうのもアリですよねぇ。たまに無性にこの手の、「短いけれども、ちょっと優しい」タイプの作品、プレイしたくなります。短い作品ですから、ちょっとした息抜きに如何でしょうか?


それでは、また。

# by s-kuzumi | 2009-03-14 16:17 | サウンドノベル | Trackback(1) | Comments(0)

トランスメディア提供アイコン01フリーサウンドノベルレビュー 『FIFTH BUGLE』


今日の副題 「久々の伝奇作品」

ジャンル:伝奇モノ
プレイ時間:五時間~六時間
その他:選択肢アリ、一本道マルチエンドノベル、らしい。
システム:NScripter

制作年:2008/9/10(?)
容量(圧縮時):89.2 MB




道玄斎です、こんにちは。
今日はお休みなので、朝もはよから、ノベルゲームをプレイ。
多分、ここを見て下さっている方の多くは、私が実はあまり伝奇をプレイしないのはご存じかもしれません。
いや、別に伝奇モノが嫌い、というわけでもなく、何となくSFチックな作品、或いは人間ドラマ的な作品、はたまた恋愛モノなんかに傾いてしまっているだけで、そこまで深い意味はないんですけれども、伝奇モノってある種の飽和状態があるような気がして、ここんところ、積極的にプレイしてこなかったのは事実。
で、喰わず嫌いはよくねぇなぁ、と思い、今日は久々に伝奇モノをプレイしてみました。
というわけで、今回は「STAND UP」さんの『FIFTH BUGLE』です。
良かった点

・中々戦闘の時のエフェクトや、電子メールの演出などに拘りが。

・敵キャラに中々魅力的なヤツが。


気になった点

・どうやら、本作一本で完結していないっぽい……。

・途中途中で、物語の流れを止めてしまう演出が。

ストーリーは、サイトへのリンクを張っておく事にしましょう。こちらからどうぞ。



というわけで、久々に伝奇をプレイしてみました。
ストーリーの骨子も(取り敢えず、大筋で見れば)割りとオーソドックスな感じ。
なにやら、追われている魔法使い、というか魔女をかくまった事から、非日常の世界に巻き込まれる事になった主人公の桐矢とその妹桐葉。当然の如く、桐矢には異能の才能があって、修行をして、悪の組織へと戦いを挑んでいく……。

という、或る意味で王道的な伝奇です。
ただ、上の説明では端折ってしまっていますが、桐葉にも又、ちょっと特殊な能力があって、それ故敵組織に拉致されたり、まぁ色々とドラマがあるわけです。事件そのものの背景にも秘密の宗教文献の失踪とか、そういう要素が絡んでいますしね。

明確な悪の親玉的な存在がいない、というのはそれはそれで珍しいかも。
勿論、ストーリーの展開上、一時的な「悪の組織」的なものは出てくるのですが、悪の組織を壊滅させて、ハッピーエンドというタイプでもなくて、又別の問題が持ち上がって、というタイプ。
そういう意味で、中盤~後半に掛けては、中々熱い物語が展開されて、意外な程楽しめてしまうのも事実。「一体、これからどうなるんだ?」と興味を惹きます。

ただ、そこで気がつくべきだったんですな……。サイトを見てみると、本作のキャッチコピーが「この物語には、『感動』なんてない。」というモノだった事にw あからさまに「超感動します!」って喧伝されると萎えてしまうのですが、「感動がない」なんて云われてもちょっと困惑してしまいますw
実際の所、本作はどうも、完結していないっぽいんですよ。恐らく「感動がない」という文言は、本作単独を指して使っているものと推測されます。第二弾(か或いは第三弾)で展開されるであろうストーリーは、本作に於いて展開されるストーリーの言わば「完結編」だと思われますので、そこで「感動」が出てくるのではないでしょうか。

だから、最後まで見ても、スッキリするとか、そういうものは無くて、「えっ? ここで終わるの??」というw
基本、完結しているものばかり取り上げているのですけれども、結構プレイに時間も掛かったし、折角だからご紹介している、という次第。
ただ、登場するキャラが割と多いんですけれども、混乱するような事もないですし、敵役の一人たるタナトスは、中々魅力的なキャラだったのでは? 最初、プレイしながら「こいつがラスボスだな……」なんて思っていたのですが、実はさにあらず。しかし、このタナトスを巡るドラマ(味方のクラウス先生絡み)はちょっと好奇心を刺激してくれますし、タナトスというキャラそのものの魅力も悪役ながら大したものだったのでは、と。

や、悪役って云っても当然色々あるわけでさ、所謂「世界征服するぜ!」って感じの、怪しげな分かりやすさと、「敵も味方も関係無く、絶対の強さを手に入れる」ってタイプの分かりやすさじゃ全然違うわけですよ。
寧ろ、タナトスというキャラの分かりやすさって、主人公サイドの人間が持っているような、そういうある種突き抜けた清々しさがあって、私は結構好きですねぇ。なんていうか、一種の求道者みたいな。


最初にプレイして、ちょっと吃驚するのは、戦闘シーンのエフェクトです。
タナトスと、こっち側の(と言い切るのも語弊があるような……)マリーのバトルシーン。凝縮したオーラみたいなのに、エフェクトが掛かっているんですけれども、意外とこういう部分のエフェクトって珍しいですよね。大抵、美味しいバトルシーンは一枚絵で処理してしまうと思しいのですが、そういうのとは又違って、オーラが脈動していて、中々効果的な演出だったと思います。

加えて云えば、所々に「電子メール」を読むシーンが挿入されているのですが、その処理もちょっと珍しくて良い感じでした。ほら、スクロールバーってあるじゃない? こちらがクリックして先に進めようとすると、カーソルが移動して、スクロールバーを掴んで、次の文章を表示してくれる、という演出でした。


作品の概要や、美味しいポイントはこんな所かな?
で、一方の気になった点ですが、その最大のものは、「完結していないっぽい」という所でしょうw
6時間近く掛けて、シコシコとプレイして「ラストはどうなる?」って所で、「To be continued」の文字が。流石に少し脱力してしまいましたw
ただ、見方によっては、あれで完結という捉え方も出来なくも無いかも。ちょっとシュールな感じになっちゃいますが……。

他にも、一応、何とか上手くプレイ出来たみたいで、「To be continued」の文字を見ることが出来たのですが、本作、意外と選択肢が多めです。だけれども、既読スキップがないんですよね。
今、試しに駄目っぽい選択肢を敢えて選んでみたのですが、問題なくストーリーは進んでいくような……。もしかしたら、選択肢のチョイスはクリティカルなものではないのかも……?

それは兎も角、読んでいて気になった点は、場面が転換する時です。
普通に場面が切り替わっても全く問題がないのですが、「主観変更」という文字が画面に表示されて数秒瞬いてしまうので。
いや、結構テンポが良い作品だと思いますし、後半の緊迫した場面なんかだと、寧ろテンポの良さというかスピード感が欲しい所。だけれども、この「主観変更」が出てしまうと、その勢いが削がれてしまうので、もったいないなぁ、と思いました。

あと、文章のクセっていうのかな、そういうのが場面によって違うんですよね。
具体的に気になったのは「?」とか「!」の使い方。ある場面では「?」「!」の後はスペースを空けず、続け書きにしているのに、別の場面では「?」「!」の後にしっかりとスペースを空けている。これは場面によって書いた人が違うのかしら? あんまり大した所じゃないけれども、一応。


何だか、ちょっと辛口になってしまいましたが、5、6時間掛かるような作品を(続編があるっぽくても)纏められたので、そこは凄いと思いますね。先のもちらりと書きましたが、テンポも良いし、王道的な伝奇でありつつも、意外とハマってしまう面白さも持っている作品だと思います。
伝奇好きの方は是非チェックしてみて下さい。


それでは、また。

# by s-kuzumi | 2009-03-14 15:07 | サウンドノベル | Trackback | Comments(0)

トランスメディア提供アイコン01なんてことない日々之雑記vol.189

道玄斎です、こんばんは。

ここんとこ、何だか妙に眠くって、ついさっきまでウトウト寝てしまっていました。
んー、今日は何かもう活動をする気力がないので、明日、またゲームをしたり、色々やることにしませう。



■架空サウンドトラック

大凡、某原稿の方が仕上がって、ここ数日、その微調整をやっていたりしたのですが、それももう終わりそうです。例によって長文になってしまったのですが、中身としては今までここで語ってきた事とは少しだけ目線を変えてみたりしています。
ですので、私が良くやる「古典文学とサウンドノベル」的なお話は載っていません。本当はそういうのも絡めて書ければベストだったのですが、何分元々長文で且つ文字数の制約もなきにしもあらず、という状況なので、思い切って書かない方向にしました。

私の文章はともかく、編集さんが物凄く丁寧且つ迅速に対応して下さっているので、版下を見る限りかなりグーな感じになっていますよ。そうそう、いっつも読点がやったらめったら多い私ですけれども、今回は読点を意図的に少なめにしています。こうやって、(ブログのように)気軽に掛けるものとは又ちょっと違うので、そういう所も多少は意識しつつ。

ともあれ、(私以外の)執筆陣が超豪華なので、それだけできっとお腹いっぱいになるのではないでせうか。
全部の企画に目を通している訳ではないのですけれども、凄い力の入った記事なんかもありますし、見ているだけで楽しいようなものも。
これで、また一つ作業が終了だと思うと、充実感と共にある種の寂しさというか、物足りなさを覚えるのも事実です。
……とか何とか云ってますが、本が出るまで作業ですね。
家に帰るまでが修学旅行、ってのと同じノリで。



あっ、のっけから脱線しまくってたわ……。
つまり、関わっていた企画が一段落ついて、次どうするか? って事でした。
まぁ、例によってのんべんだらりと、マイペース活動を続けていく事疑いの余地は無いのですが、やってみたい事があったりします。それが「架空サウンドトラック」。

サウンドトラックって、基本、その中に収録されている音が使用されている映画なり、ゲームなりの作品が必要になります。つまり、作品の存在を前提にしてでしか、サウンドトラックってのは存在しないんですよね。
だけれども、作品は無くともサウンドトラックを作ってしまおう、という無謀な事を考えるのが私の悪い所。

簡単に言うと、架空の作品をでっち上げて、その架空の作品の中に使われていると思しい音楽を集めたアルバム。そんなものを作ってみたいのでした。そういう事を考えるだけで妙に楽しくてワクワクしてしまうのですが、考えただけで終わりにせず、地道に作業したりしたい所。
ただ、いくつか気をつけないと行けない所もあって、それは「意味性の弱さ」なんですよね。
サウンドトラックに収録されている音楽は、それを使用している作品の影響から完全に独立して存在は出来ませんし、逆も又然り。つまり音と作品が強固に結びついて、意味の強度を増しているわけです。

ところが、実体の無い架空の作品だと、意味も何も無いというw
そこで、例の怪しげなショートストーリーで作品の「断片」みたいなものを出して、少しは意味性を強めようかな、とかね、色々考えています。まぁ、実際いつになったら出来るのか、皆目検討が付かないのですけれども、そんな事もつらつらとマイペースにやっていきたいな、なんて考えて、今日も今日とて終わります。


それでは、また。

# by s-kuzumi | 2009-03-14 01:14 | 日々之雑記 | Trackback | Comments(0)

トランスメディア提供アイコン01なんてことない日々之雑記vol.188

道玄斎です、こんばんは。

今日は少し忙しくて、疲れてしまいました。夕飯を食べた後、久々に数時間眠ってしまって。
それに今日は少し暖かくて、昼間っからちょっと眠たかったんですよね。薬なんかを使わずに「嗚呼、眠い……」という時に自然に眠りに落ちるのは、至福の時ですね。



■珍しい寝酒

大体、変な時間に微妙に眠ってしまうと夜、「寝るべき時間」に眠れなくなってしまう為、そういう時はお酒を呑んで寝ます。とはいへ、一時に比べれば大分酒量も少なくなりました。三日とかで焼酎一瓶空けちゃうような事も無くなって、お財布にも優しいです。

で、今日の見出しは「寝酒をするのが珍しい」というわけでもなくて、珍しいお酒を呑んでいる、という意味です。
大体、焼酎、日本酒がメインで、希にビール、或いはチューハイとかが定番の寝酒なんですけれども、今日はジン。昔CMで森高千里が「ジュースとジンで仏蘭西人~♪」なんて歌ってましたけれども、そのジンです。ボンベイサファイアという銘柄。今日、街を歩いていたら、定食屋(?)さんの前かなんかに酒瓶を陳列してあったんですね。その中にひときわ目立つ、サファイア色のボトルがボンベイサファイアでした。

で、「確か家にあったなぁ」なんて思って、帰宅時にコンビニで三ツ矢サイダーを購入してきました。
サイダーはやっぱり三ツ矢サイダーが一番好きです。
で、酒瓶を入れておく戸棚の奥を漁ってみたら、案の定あったので、三ツ矢サイダーで割って呑んでいます。

ジンって辛いっていうか、ちょっと独特なドライな味がするので、そのまんま呑むのは日本酒、焼酎ばかり呑んでいる私にはちょっっとキツい。だからこその三ツ矢サイダーなのでした。アルコール度が47度もあるので、心持ちサイダー多めに割るのがポイント。んでもって国産のレモンを絞って完成。国産品は安心。

まぁ、何だっていいんだ、口当たり良く呑めれば。
結構、色々なハーブ類を溶かし込んでいるせいか、複雑な味がしますね。そのまま呑むのはちょっとアレだけれどもサイダーで割ると風味豊かで美味しい感じ。薬酒に近い感じもしないでもない。

たまには洋酒も悪くないですね。
ただ、明日の朝、二日酔いを起こしていないか、それだけが心配……w


というわけで、今日は短いですけれども、このへんで。
それでは、また。

# by s-kuzumi | 2009-03-13 01:56 | 日々之雑記 | Trackback(1) | Comments(2)

トランスメディア提供アイコン01なんてことない日々之雑記vol.187

道玄斎です、こんばんは。
この時期は、三寒四温というか、寒かったり暖かかったりで調子が出ません。
だけれども、整理整頓をやっていこう、というのが当面の目標だったりするので、のんびりとあれこれ作業したりしています。



■パソコンのお掃除

少し、ここらでマシンの整備をしてやった方が良いのではないだろうか? と思い、ちょっと昨日お掃除しました。ハード的にも、そしてソフト的にもです。ハードに関しては、普通に蓋を開けて、埃を取ったり、拭いてやったり、或いはキーボードのキートップを取って中を掃除したり、そういう事ですね。
キーボードの中に煙草の灰が大量に落ちていて流石に、「これは汚すぎる……」と愕然としました。

大体、こうやってキーを打ち込んだりしている時って、平行して煙草に火が点っている事が多いわけで、煙草を咥えつつキーを叩いて、ついつい灰を灰皿に落とすのを忘れると、ボトッと灰がキーボードに落ちてきます。キーボードにカバーをつけりゃいいんですけれども、何となく億劫でねぇ。

以上がハード的な面でのお掃除。
次にやったのはソフト的な面でのお掃除です。不要なファイルを始末したり、レジストリ、メモリの最適化してやったり、或いはデフラグを掛けたり。
デフラグが一番めんどくさい作業でした。というのもHDDが500GBあるとかなり時間が掛かるんですよね。昔なんて40GBのディスクを使ってましたから、単純に考えても12倍以上の容量があるわけで、それは途方もなく時間が掛かるのでした。確か40GBのディスクだって、購入した時にゃぁ10000円くらいしたんだけれども、もうその値段を出せば1TBのものが買えてしまいますよね。

昔からSeagateのHDDが好きなんですが、あんまり評判良くないですよねぇ。
ただねぇ、Seagateのディスクって静音指向というか、そういう部分が気に入って愛用していたりします。って、今は出来合のパソコンを使っているからあんまり関係ないんですけれども。
近々、外付けのHDDでも買ってきて、バックアップとかもね、取ろうかと思っています。確か外付けHDD用のガワだけ売っていて好きなディスクを入れる事が出来るヤツがあったハズなので、やっぱりSeagateのものでも入れようかしら、と。

あー、微妙に脱線してしまいました。
で、Windowsにデフォルトで付属しているデフラグは何か遅くてね。前回、デフラグを行った際には、デフラグ終了まで8時間くらい掛かったんじゃなかったかしら? あんまり遅いと興ざめなので、今回はフリーソフトの中から「高速でデフラグが出来るソフト」を探してきてそいつを使用。
「AusLogics Disk Defrag」ってヤツなんですが、滅茶苦茶早いです。GB単位でファイルを消したり入れたりを繰り返していたにも関わらず1時間くらいでデフラグ終了。マシンの動作も心なしキビキビしたような……。

やっぱり、長くマシンを使う為にも、定期的にお手入れをしてやらないと駄目って事ですね。



■8Bitへの憧憬

どーでもいい話から始めますけれども、「憧憬」って何て読みます?
私はずぅっと「しょうけい」だと思ってきたのですが、どうも「どうけい」と読んでもいいみたい。

いや、まぁ、そんな事はどうでもよくって、問題は8Bitです。
8Bitの音っていうと、所謂古式ゆかしい「ファミコン」の音です。ほら、最近『ドラクエⅡ』とかやっていたらさ、何かそういう昔のサウンドとか思い出してた所、以前二回ほど作品を取り上げさせて頂いた「まのちゃアニメーション」さんが8Bit音楽をフィーチャーしたRPG風味の作品『ALSANE』をリリースしていたので、さっくりプレイしてみました。

所謂ドット絵で、昔懐かしのゲームの手触りをこの21世紀に再現していて、雰囲気が良かったですね。ドラクエというよりはマザー。って分かります?
ゲーム自体は、例によってなんてことない短いちょっぴりシュールで、微癒し系みたいな。別に戦闘が起きたり、悪の帝王や悪い大神官を倒すようなものでもなく、かといって、自宅に怪奇現象を起こした「何か」を探して旅をしていく、というものでもない。
ただ、これも例によって、主人公の女の子がちょっとイイ感じなんですよ。やむごとなき生まれのおひい様。んでもって、尊大な幼女タイプ。私はこの手の造型は意外と好きだったりしますw

作品自体はすっごく短くて、10分もきっと掛からないと思います。
けれども、往年のゲームファンなんかとワイのワイのやりながらプレイすると、意外に盛り上がるかも。今になって思うと、「ダッシュシューズ」が存在しない世界もまた、味わいがありますねぇ。
ちなみについ、マウスで操作したくなっちゃうけれども、十字キーとEnterキーで操作します。

で、肝心のサウンドも正にファミコン的でグーな感じ。
こういう音が懐かしく思えるのは、単なる懐古趣味なのか、それとも先祖返りじゃないけれども、人間ってもんは或る程度の発達をすると原点に返りたくなってくるものなのか……。

もしかすると8Bitの音を知らないかもしれない方に、一応サンプルで紹介しておきましょう。
今、鍵盤を叩いてきます。

……で、出来たのがこれ

ヘタクソでごめんね! けれども、分かる人は分かる。アノ曲……。残念ながらファミコンソフトの曲じゃないんですけれども、雰囲気は分かるでせう。
なんかほら、横断歩道の「とおりゃんせ」みたいな音よね。

今は、フリーのプラグインで、この8Bitの音が出せるようになっています。
今回は「Magical 8 bit Plug」ってヤツを使ったんですけれども、それっぽい音がちゃんと鳴ってくれます。もっとパラメータを弄ったりすればより「らしく」なるんじゃないかしら?
どうも、今実際にやってみた感じだと、リミッターに表示されている波形では、所謂「矩形波」になっている模様。8Bitっぽくなるプラグインを使わずとも、波形を矩形波に変える事の出来るシンセなんかを持っていれば、それっぽい音が鳴りそうな気も……。

兎に角、この独特なチープ感がいいですよねぇ……。
初代スーパーマリオとかやりたくなってきました。
そういえば、初代スーパーマリオって無限1UPって技があって、段差のある所で延々と亀を踏んで(蹴って?)いく技なんですが、何故かやり込みまくったのにも関わらず、私はこの技が出来ませんでした。そんなに高度な技術が必要な技じゃないのにね。

例によって脱線しまくって、オマケにヘンテコなファイルまで上げてしまったわけですが、何となく8Bitの音が気になる今日この頃なのでした。
それでは、また。

# by s-kuzumi | 2009-03-11 19:53 | 日々之雑記 | Trackback | Comments(4)

トランスメディア提供アイコン01なんてことない日々之雑記vol.186

道玄斎です、こんばんは。
最近、とみに暖かくなってきて、春眠暁を覚えずではないですけれども、朝、ベッドから起きるのが辛くなってきました。



■というわけで回線変更

そんなこんなで、ADSLから光回線に移行しました。
つい先ほど、設定を終えた所。取り敢えず、問題なく使えているようです。

本当にそんなに大量のデータを落としたり、上げたりする必要の無い私はADSLで十分なんですけれども、これも時代の流れというヤツでして、結局、電話とかテレビとか、みんな光になってしまいました。
普通の電話線の方が安心感があるのだけれども、こればっかりはしょうがない。

で、工事の人は「ディスクを入れて設定してくれ」とか云ったのだけれども、何かディスク入れたりすると、マシンの中に変なプログラムが入り込みそうじゃない? だから頑なに手動でやると言い張って、例のネットワーク設定みたいな所でシコシコと作業、そしてブラウザからルーターにアクセスして、ちゃかちゃかっと設定を。

何か、一端ルータにアクセスして、設定をマシン側からしてやらないと駄目なのね。
それをやれば、あとはケーブル繋ぐだけで、ちゃんと自動でネットに接続出来る。取り敢えず、常時動いているマシンが複数台あるので一回で作業が済むのは助かる。
昔……ダイヤルアップだった頃って、ルーターモドキみたいので、分岐させても、片方のマシンでネットに繋いでいる時はもう片方のマシンはネット接続が出来ないなんてケースがあったような……。昔の事なので忘れちゃいましたけれども、とにかく随分技術は進歩しましたねぇ。

速度的には、下りで70MBくらいは出る感じです。
体感速度は確かに上がったけれども、ADSLでも十分早かったからそこまで感動はしない。きっと重たいゲームとかを落とす時に、実感出来るんだろうと思われる。

一つ、問題点としては、今まで使っていたプロバイダが寄越したメールアドレスが、使えないタイミングがある、という事。なんか説明書を読んでみると、今月一杯は従来通りのアドレス。
来月は、同じプロバイダが配布したデフォルトのアドレスに変わるようだけれども、即座に現行と同じアドレスに変更する予定。今月末くらいに、結構重要なメールとか来て、恐らく色々とやりとりをしなきゃいけないんだけれどもなぁ……。



■ちょこっと直し。

ちょこっと2007年の七月、八月、九月分のレビューを直しました。
いや、本当にちょこっとだけ。直したのはスクリーンショットの部分。何か昔はヘンテコな取り方をしていて、宜しくない感じだったので、現行のものに準拠するように撮り直しました。
又「何でこの画像を使ったんだ?」というようなものに関しては、別の場面で撮り直したりしたのですが、基本的に、今までと同じ場面を撮っています。

何故か消失してしまっているゲームなどもあって、そういう時はしょうがないからダウンロードしなおしたり。
で、目に付いた所だけで恐縮ですけれども、昔やっていた五段階評価を現行の三段階評価(大吟醸・吟醸・無印)に改めました。

あと、尺が短いものは「番外編」の表記を付けたり、ね。
手が空いたら、そろそろ過去に書いたものとかも整理したり、リストを作ったり(ネットでリスト化してくれている所もあるので、そういうのを使おう……)、少し整理整頓をしていこうかな、と思います。
今年は、整理整頓を一つの目標にして、来年、或いは再来年に繋げていけたらな、と。


というわけで、今日はこのへんで。
それでは、また。

# by s-kuzumi | 2009-03-09 21:17 | 日々之雑記 | Trackback | Comments(2)

トランスメディア提供アイコン01フリーサウンドノベルレビュー 『星の王子さま』


今日の副題 「幼かりし日の僕と君へ」

※大吟醸
ジャンル:翻訳ノベル
プレイ時間:1時間程度。
その他:選択肢なし、一本道。
システム:NScripter

制作年:2008/8/16(本レビューはフリー版にてプレイ)
容量(圧縮時):59.0MB



道玄斎です、こんにちは。
今日は、たまにご紹介する「著作権切れ」のノベルゲーム化の作品です。とってもとっても良い作品だと思ったので、オリジナル作品ではないものの、大吟醸を。
というわけで、サン=テグジュペリ原作、「P.o.l.c」さんの『星の王子さま』です。
良かった点

・あれこれ語ってもしょうがないので、是非プレイして欲しい。


気になった点

・エピローグの前の第27章で痛恨の誤字が(後述)

今回は、ストーリー紹介もやめておきましょう。些か変則的ですけれどもね。


実は、私、『星の王子さま』を読むのは初めてです。
いつもでしたら、こういう作品を扱う際には、例によって私の知ったかが炸裂するわけですが、今回は、本当に予備知識も殆どないまま、生まれて初めて『星の王子さま』を読みました。

素直に、「ああ、こんな素晴らしい作品だったんだな……」と思いました。
『星の王子さま』は、世界的に著名な作品ですし、きっとこれをお読みになっている方の多くが、既にして翻訳などで読まれている事と思います。
この作品をもじった映画なんかもありますよね。エディ・マーフィか何かが主演の『星の王子さまニューヨークへ行く』とかね。半分、あれはギャグ映画なので(マクドナルドのニセモノ、マクダゥエルという店が出てくる。マクドナルドのハンバーガーにはゴマが載っているけれども、マクダゥエルにはゴマが載っていないという差異があるそうな)、比較の対象にはならないですし、日本では、カレーの銘柄になったりしています。
そういえば、手塚治虫の『火の鳥』のなに編かは忘れてしまったのですが、ラストで、宇宙飛行士の牧村さん(だったかな?)が『星の王子様』を途中まで読んで、それを手向けにして去っていってしまう、というシーンがあって、あれは凄く印象に残っていますね。

正直、なんか、作品に対して、どういう言葉で語ったらいいのか、私には良く分かりません。
ただ、いつもみたいに「ゲーム大好き!」ってなノリは違うんだろうな、と思いますね。

今回、翻訳を含め制作を指揮なさったのは、感動的な作品を多く生み出している「P.o.l.c」さんでした。
翻訳までやってしまったという事で、非常に驚いています。が、その訳に素人っぽさというか、「翻訳です」的な所もなく、こなれた良い日本語になっていたのではないでしょうか?
正直な所、『星の王子さま』そのものを、原文、訳文を含めて読んだ事がないので、それが「良い訳」であるとか、「正確な訳」であるとかの判断は出来ません。

しかし、同梱されている説明書によれば、フランス語を勉強した事もないそうで、本当に良く、ここまで訳せたなぁ、と感心してしまいます。
今回の私のプレイに関してのスタンスは「じっくり」でした。割とクリックをがちゃがちゃして、ちゃっちゃか読み進める傾向のある私が、じっくりと、読んでは戻り、戻っては読みを繰り返したわけです。それで大体1時間くらいです。恐らく、いつものペースで読んでいったとしたならば、40分くらいで読了していたのではないかと思います。

何が言いたいのか、というと、『星の王子さま』は、実は結構ボリュームのあるお話なんですよね。
所謂、童話や絵本のようなものは、文字数も少ないのが常ですが、『星の王子さま』に関しては、文章のボリュームも相当にあるのです。
それを、全て翻訳した、というのはきっと、想像以上に大変だったのではないのでしょうか? 英語すら且つ困難を究む、いはんや仏蘭西語をや、という感じです。
それにしても、翻訳に対する姿勢も、同梱された文章に書いてあり、納得のいくものでしたし、学術論文を含め、多くの資料に当たられていて、実は、相当にレベルの高い訳になっているのでは? と感じます。

きっと、大学の第二外国語でフランス語を履修していたにも関わらず、私は、『星の王子さま』を一行も読めないでしょう。何しろ、etreの活用すら覚束ないという体たらくなのですから。一応、フランス語辞書の定番となっている『プチロワイヤル』の編者の先生に教わったのですが……。

本作は、ちゃんとイラストもついています。
『星の王子さま』と聞くと、大体イメージするイラストがあると思うのですが、原作の方でもイラストが付いているのでしょうか? 本作のそれは、一般にイメージするものを壊さず、それでいて、優しいタッチでとても魅力的なものになっていたように感じます。このまま、訳文とイラストで、新しい訳として、一冊の本になっていても全然違和感のないレベルです。
勿論、本作がサウンドノベル/ノベルゲームの体裁を取っている以上、音楽も付いています。これも又、文章やイラストを邪魔する事なく、見事に作品に調和したものになっていました。


敢えて、本作で苦言を述べるとしたら、第27章目に痛恨の誤字があった点でしょう。
「満天の星」とあるべき場所が「満点の星」になっていました。とはいへ、それは本文ではなく、画面上部の良くタイトルが表示されるあの領域の所で、です。

周辺的な事情だけ語って、お終いにしちゃうのも少し心残りではあるので、若干、補足を。
我々が、今、この作品を見ると(読むと)、そこにあるメタファーというか、寓意というか、きっとそういうものの一端を見つける事が出来るはずです。
そして、『星の王子さま』に関連する、書籍や論文などを読めば、そうしたものの正体を述べているものも、きっと数多くあると思います。だけれども、敢えて云いますけれども、きっとそんなものを探らずに、難しい事を考えず、素直になって作品に向き合った方が、良いのではないか、そんな事を考えました。
大人特有の賢しい心で読むよりも、純粋だった子供の頃に返って読んだ方が、より多くのものを得る事が出来る、そんなお話が『星の王子さま』なのではないでしょうか?

それでは、また。


/* 以下、蛇足

というわけで、恒例の脱線コーナーw
一応、コメントアウトしてあるから、本文とは切り離して読んで下さいw

最初に、子供の頃、象を飲み込んだヘビの絵を描いたけれども、大人は分かってくれなかった、というような下りが出てきますよね。私も似たような経験があります。
あれは、忘れもしない小学一年生の時、最初の図画工作の時間でした。各自、手鏡を持って登校し、自分の顔を見ながら、それを書いてみる、という課題。

そりゃ、私も子供らしい無邪気さと、真剣さでもってその課題に向かいました。
で、よーく自分の顔を眺めると、そこは単純な肌色一色ではない事に気がついたのです。皮膚の下には血管が通っていて、それによって、赤みを増している部分、或いは青みを帯びている部分があるわけですよね。そんな写実性に拘って、課題に取り組んだのですが、何分、6歳とかの子供ですから、技術的な面はメタメタで、顔の所々に青いクレヨンで上塗りしてしまったような、そんな絵になったわけです。
けれども、自分では「これは良い絵になった」と悦に浸っていたのも事実。

しかし、当時の担任がねぇ、「人間の顔に青は存在しない」と私の絵を糾弾したんですよねぇ。
今はどうか分かりませんが、昔は何でもかんでも「金賞」とか「銀賞」とか、賞を付けてランキング化するのが学校教育の常でしたから、私の書いた絵は勿論最下位です。きっと金賞を貰った子の絵は、顔を肌色一色で塗っていたんでしょう。
挙げ句、懇談会だか家庭訪問だかの際に、その担任は、母に「おたくの息子さんは、人間の肌に青を塗ったりしています。どっかおかしいんじゃないですか?」とか宣ったそうなw 或る意味慧眼w


そういえば、『星の王子さま』絡みでもう一個エピソードがありました。
それは、十年くらい前かな? 法事があってお寺に行ったんですね。そのお寺の入り口には、ガラス戸付きの立て看板みたいのが置いてあって「今月の住職の一言」みたいなメッセージが書かれていました。
曰く、「大切なものは目に見えない。愛とか空気とか」とw
この「大切なものは目にみえない」という著名な言葉が『星の王子さま』由来である事は、何故か知っていたのですが、本作をプレイして初めて「キツネ」が最初に語るセリフだという事が判明しました。

それにしても、「愛とか空気とか」って……w
きっと、それはその通りなんでしょうけれども、あっ、いや「愛」は分かります。けれどもそこに「空気」を出すのは何となくバランスが悪いかなぁ? と今でも思いますねw

兎に角、色々(結局)書いちゃいましたが、とっても良い作品でした。なんか「良い」って書くと浅薄な印象が出てしまうのだけれども。先にも書きましたように、本当に一冊の本としてリリースされてもおかしくない出来映えだと思います。出版関係の方がいらしたら、音楽CDと共に出版する事を会議に掛けてみてはどうでしょう?w

是非、プレイして貰いたい作品です。そして、取り敢えず私は訳本でも買ってみて、いづれはフランス語版で『星の王子さま』を読んでみたいな、と思ったのでした。

以上、蛇足 */

# by s-kuzumi | 2009-03-08 16:17 | サウンドノベル | Trackback | Comments(2)

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