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[ 0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ クールアニメ・マーケティング・ヒストリー ] |
斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」 第6回 クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(3)前編 誰もがこの映画の幸福を願い、ベストをつくした「時をかける少女」。 斉藤守彦 【ミニシアターでのアニメ映画興行】 都内に複数の興行事業場を持つ東京テアトルは、直営館・テアトル新宿で、日本のインディペンデント(独立系)作品を中心とした番組編成を試みていた。これは「映画作家との対話が出来る映画館を目指す」というポリシーを通して、他のミニシアターとの上映番組の差別化を図ったものだ。その戦略は成功し、テアトル新宿は日本の独立系映画の名門とまで認知されるようになっていた。 とは言うものの、夏休み作品の上映を年明けの段階でオファーすること自体、かなりの遅れをとっている。この種の単館ロードショー館の上映番組は、早いところでは1年先まで内定していることも少なくない。細田監督とはおつき合いがあるという沢村としては、テアトル新宿に「時をかける少女」をブッキングしたいのは山々だが、現実的には困難が伴った。 アニメ映画ではありがちなケースだが、作品の完成が公開1週間前という事態は、興行サイドにとってもリスクを伴う。通常の映画の宣伝プロセスから言えば、製作宣伝から配給宣伝に移行する際、完成した作品をメディア関係者に見せるための試写会の開催が必須であり、作品を見せた上で、そこからプロモーション、タイアップなどへと発展させるのがセオリーだからだ。 第6回 クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(3)中編 [筆者の紹介] |
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斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」 第6回 クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(3)中編 誰もがこの映画の幸福を願い、ベストをつくした「時をかける少女」。 斉藤守彦 【夏の映画にこだわりましょう」という決定のバックグラウンド】 P&Aとは、プリント・アンド・アドバタイジングのことを指す。一般的には、完成した映画は自動的に映画館で上映されると思われているようだが、それは違う。まずマスター・フィルムから上映用のプリントを焼かなければならない。 外国映画ならば10億円前後の宣伝費をかけ、日本映画では製作委員会のメンバーたるテレビ局の手によって、連日電波を私物化したスポット攻勢や出演者たちの番組出演によって大規模なパブリシティが行われるのが常である。テレビ局が出資しているわけでも、旬の俳優が出演しているわけでもない(アニメだから当然だが)、「時をかける少女」の旗色は明らかに悪かった。 一方角川ヘラルド映画では、7月15日から、テアトル新宿など6スクリーンでスタートという決定に対して、当時社長だった黒井和男が異論を唱えていた。 第6回 クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(3)後編 |
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斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」 第6回 クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(3)後編 誰もがこの映画の幸福を願い、ベストをつくした「時をかける少女」。 斉藤守彦 ☆テアトル新宿でのオープニング興行成績は、入場者数3103名、興行収入465万4400円(3日間集計)。第1週目の週計成績は、5151名、744万9700円と好調なスタート。 プロデューサー、監督がこだわった「夏休みでの上映」で、「時をかける少女」は、9月1日までに、累計1億4529万1560円をあげることが出来た。このうちテアトル新宿での週計成績は、第5週の8308名、興収1238万900円が最高。最も低かったのは、なんと第1週の5151名、興収744万9700円であった。 ★ロビーにて「私がタイムリープできたら」短冊(出演者、試写観客による) 展示(7月15日〜) 【10月の時点でプリント本数17本。都内5スクリーンで上映続行】 また「時をかける少女」を高く評価したのは、観客たちだけではなかった。フジテレビの亀山千広(現・執行役員常務映画事業局長)が作品を鑑賞し、絶賛。即座に地上波TV放映権を獲得し、2007年7月21日の「土曜プレミアム」枠、08年7月19日と、2回に渡ってオンエアした。東京テアトル・沢村敏によると「テアトル新宿で単館上映された日本映画が、ゴールデン・タイムで全国放映されたのは、初めてのケース」とか。 3年前にあがった数字を見つめながら、ぽつんと荻野が言った。「こんな経験は、初めてだったよ…」。 第6回 クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(3)前編 |
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斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」 第5回 クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(1)前編 斉藤守彦 【ホワット・イズ・クールアニメ?】 その「ヤマト」のヒットから1年余。東京ムービー新社(現・トムス・エンタテインメント)が初の本格的長編劇場用アニメ映画として「ルパン三世」(ここでは他のシリーズ作品と区別するために、「ルパンVS複製人間」と呼称する)を製作。1978年12月16日より東宝配給によって全国公開される。 【故・藤岡豊が目指した、“大人のためのアニメ「ルパン三世」】 「ストーリーも、絵の展開も、いかにスケールアップ出来るかが映画のポイントとなった。つまりテレビ・シリーズとの差別化を第一義に考えた」とは、「ルパンVS複製人間」当時、東京ムービー新社で宣伝・営業担当を、現在はトムス・エンタテインメントのスーパーバイザーを務める熊井良助の証言だ。 実際に、この“原点回帰”を目指した劇場版の監督候補には、ファースト・シリーズ初期編を演出した、大隅正秋(現・おおすみ正秋)の名があがったという。ところが「映画としての新しい魅力を構築する意味から、吉川惣司監督が劇場用として打ち出した、“クローン”に勝負を賭けた。 当時のマーケット環境も考慮した上で、「ルパンVS複製人間」という作品のビジネス・パワーを検証すると、いくつかのユニークなマーケティング戦略を発見することが出来る。 そうしたマーケット環境を考えても、親会社と子会社という関係こそあれ、違う配給会社同士が2本立てを組むという事態は、極めて珍しい。当時の配給関係者によれば、この2本立てを提案したのは、親会社である東宝とのことだ。つまり、1979年の時点では、現在とは逆にマーケットでは洋画の力が強く、東宝としては洋画系に邦画、それも未経験の“大人向けアニメ”を公開することに不安があったのだろう。女性をメインターゲットに据えた「ナイル殺人事件」とのカップリングは、「ルパンVS複製人間」にとっても有効であり、豪華2本立てというお得感を与えることも出来る。 クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(1)後編 [筆者の紹介] |
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斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」 第5回 クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(1)後編 【豪華2本立て番組は、その後のシリーズでも継承された】 配給を手がけた東宝と東宝東和が、この2本立てとその興行成果を高く評価したことは、「ルパンVS複製人間」に続いて製作された「カリオストロの城」が「Mr.Boo!/ギャンブル大将」、「バビロンの黄金伝説」が「ランボー・怒りの脱出」と、いずれも東宝東和配給の外国映画とのカップリングで公開されたことが証明している。 こうした「ロードショー公開時には話題にならなかったが、下番線で人気を集める」、いわゆる“名画座ヒット作”が、当時は存在した。ジョージ・ルーカスの「アメリカン・グラフィティ」しかり、タイムトラベルSFの名作「ある日どこかで」しかり。「カリオストロの城」の場合、その後押しをしたのは、アニメ雑誌での記事や、宮崎駿監督の特集でその面白さを、遅ればせながら知った観客たちの存在であることは間違いない。 当時の新聞広告を見ると、東宝邦画系のメイン館である千代田劇場こそ「零戦燃ゆ」を続映したものの、渋谷、上野、新宿といった都内をはじめ、川崎、小田原、横須賀、甲府、静岡、浜松あたりまでこの番組の公開が告知されていることから、全国的に上映されたと判断して間違いないだろう。 【映画のマーケティングとは、作り手の「意思」を拡大していく作業】 「ルパンVS複製人間」は、配給・興行各社のマーケティング戦略によって、商業的には成功を収めることが出来た。しかし、その成功は、果たして藤岡の「意思」を充分に反映したものであっただろうか? 原作者モンキー・パンチから、映像化にあたっては全権を委託されている、東京ムービー新社の経営者としての藤岡の「意思」は、成功を収めたが、クリエイターとしての思いはどうであったのだろうか? クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(2)前編 |
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斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」 第5回 クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(2)前編 斉藤守彦 「皆さん、心地よい疲労感をお感じになっているようで…」。 今でもはっきりと覚えている。1988年7月。公開直前に行われた「アキラ」の披露試写会。それに続いて帝国ホテルで開催された、完成記念パーティ(バブル時代は、何かにつけてこの種のパーティが行われていた)における、松岡功東宝社長(現・会長)の、これが乾杯の挨拶であった。 −原作者の大友克洋さんを監督に起用したのは、当初から決まっていたのでしょうか? −こだわりのある原作者ですもんね(笑)。 −とにかく「監督に叱られないように」という気持ちで(笑)。 −当時「アキラ」は連載中でしたが、大友監督としては、映画版はどのようなストーリーにしようと考えたのでしょうか? −そうですね。山形が金田を迎えに来る。 −上映時間が、どれだけになるのか(笑)。 −「アキラ」が従来のアニメ映画と異なる、例えば声優さんたちの声を最初に録音するプレスコ方式や、芸能山城組の起用、CGの使用など、新しい方法論のすべては、大友監督の意向と見て良いのでしょうか? −その一言を言ったが最後(笑)…。 たかがポスターと言うなかれ。映画のマーケティング戦略上、ポスターは非常に重要な役割を果たすアイテムなのである。映画を製作する人々、配給に携わる人々、実際に映画館で観客に接する興行の人々。この三者が、どのような映画を作り、どのような映画でビジネスを行うのか。ポスターはそのシンボルであり、フラグシップなのである。 それでも宣伝プロデューサー一年生の芝には、ある種の確信があったという。 その芝が、「アキラ」の観客対象としてターゲティングしたのは、中高生から大人という層だった。さて実際にはどのような客層だったのか?芝が当時、上司に報告するために作成した「アキラ・レポート」には、客層や興行概況が詳細に記されており、このレポートの冒頭には、次のようなことが書かれている。 「心地よい疲労感」とやらを感じつつ、今ひとつ懐疑的な東宝のお偉方を尻目に、「アキラ」は絶好調のスタートを切ったのだ。芝の目論見は当たった。いや、実際は彼女が想定した以上に、大人の観客が多かった。都内上映館である渋谷パレス座(現・渋谷シネパレス)では、一般券の売り上げ枚数が全体の51%を占め、高校・大学は29%、中学は7%という比率であった。 クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(2)後編 |
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[ 0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ クールアニメ・マーケティング・ヒストリー ] |
斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」 第5回 クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(2)後編 斉藤守彦 【“アニメに強い”名古屋だけの逆転現象】 ■ 第1週(7/16〜22)=一般72%、学生23%、中学生4% この傾向は、他の大都市においても、名古屋を除いて同様の現象を見せている。 名古屋だけが大学・高校生の比率が60%を占めたのは、特にアニメが強い地域であり、「アニメ・ファンの高校生をよく集客したということか」と、レポートには記されている。観客の男女比は7対3で男性有利と、これまた芝が事前に予想した通りとなった。 また翌89年3月、“国際映画祭参加バージョン”と銘打った「アキラ・完全版」がテアトル新宿で公開されており、これが配収1億円をあげたと、当時業界紙記者であった筆者は記憶しているが、あいにくそれを証明する資料が見あたらない。 −結局「アキラ」の製作費は、いくらかかったんですか? −アメリカで、「アキラ」のリメイクが計画されているという情報が、何度か入ってきたのですが、現在の進行状況は? 最後にした質問から得られた回答は、実に意義の深いものだった。 −なぜ講談社は、大友克洋という作家を、そこまで守ったのですか?アニメ制作中にも、色々とトラブルや行き違いがあったと思います。しかし御社は、大友克洋の意向のみならず、全人格さえ尊重したように見えます。 作家の意向を尊重し、守る姿勢。「出版社とは、そういうものだ。それは映画を作る時でも変わらない」というこの意見を、筆者は以前も耳にしたことがある。それは、宮崎駿監督のアニメ映画を作り続けた、徳間書店の総帥である故・徳間康快にインタヴューした時だ。 いかにテクノロジーが発達した世の中になろうと、映画をオートメーションで作ることは出来ない。そこには血が通った人間の主義主張、思想感情が宿ってこそ、初めて人の心を打つことが出来るのだ。コンテンツ・メーカーたる作家を守る姿勢を、映画製作においても曲げなかった出版社に対して、プロデューサーが圧倒的な権限を持つテレビ局は、映画製作の面でも監督よりも出資企業、製作者の意向を最優先しているのは対照的だ。 (取材・資料提供にご協力いただいた皆様に、心から感謝を捧げます) 次回「特殊映像ラボラトリー」クールアニメ・マーケティング・ヒストリー その3に続く!! クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(1)前編 |
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[ 0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 第4回平成仮面ライダー・シリーズとの9年間 ] |
斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」 斉藤守彦 「仮面ライダークウガ」から始まった、平成仮面ライダー・シリーズも10周年。1月25日からスタートする「仮面ライダーディケイド」は、その10周年を記念したもので、クウガからキバまでの、歴代ヒーローが登場するという。 【DATA】 【9years after impression】 ☆「誰も、人の未来を奪うことは出来ない!!」 【DATA】 【8years after impression】 ☆「なんでだよ…!!」 【DATA】 【7years after impression】 私論:平成仮面ライダー・シリーズとの9年間(2) 「555(ファイズ)」~「ヒビキ」 [筆者の紹介] |
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[ 0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 第4回平成仮面ライダー・シリーズとの9年間 ] |
斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」 斉藤守彦 ☆哀しみを繰り返し、僕らはどこへ行くのだろう… 【DATA】 【6years after impression】 ☆心に剣、輝く勇気。 【DATA】 【5years after impression】 ☆少年よ 旅立つのなら、晴れた日に胸を張って 【DATA】 【4years after impression】 私論:平成仮面ライダー・シリーズとの9年間(1) 「クウガ」~「龍騎」 |
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[ 0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 第4回平成仮面ライダー・シリーズとの9年間 ] |
斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」 斉藤守彦 ☆天の道を行き、総べてを司る男。 【DATA】 【3years after impression】 ☆いーじゃん、いーじゃん! すげーじゃん!! 【DATA】 【2years after impression】 ☆「その命、神に返しなさい!」 【DATA】 【1years after impression】 さて、「仮面ライダーディケイド」は、いかなるライダーを見せてくれるだろうか? 私論:平成仮面ライダー・シリーズとの9年間(1) 「クウガ」~「龍騎」 |
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[ 0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 第3回2008年特殊映像総決算! ] |
「特殊映像ラボラトリー」 第3回 2008年特殊映像総決算!(1) 斉藤守彦 年末を迎え、各種メディアでは2008年の総括やら総決算が花盛り。そこで、アニメ、特撮映画といった、いわゆる特殊映像を扱う当ラボラトリーでも、2008年の成果を検証しようという試みである。 この年は「ハウルの動く城」以来の宮崎駿監督作品が公開されるとあって、周囲の期待は、すこぶる大きかった。その“宮崎アニメ”最新作「崖の上のポニョ」は、現時点で興行収入154億円。正月も引き続き上映されることから、さらにこの数値は伸びるだろうが、160億円を上回ることはないだろう。(「ポニョ」についての興行推移や詳細については、本連載1=「『崖の上のポニョ』早すぎる検証」を参照されたし) 正月に公開された「劇場版BLEACH ザ・ダイヤモンドダスト・リベリオン/もう一つの氷輪丸」(東宝配給)は、興行収入7.3億円をあげ、前作「劇場版BLEACH MEMORIES OF NOBODY」の6.6億円を上回った。 〈過去3作品の興行成績〉 「ドラえもん」シリーズが、藤子プロ=小学館中心の製作体制であることに対し、「ワンピース」の場合は東映と東映アニメーションが、製作のイニシアティヴを握っている。そのため、プロモーション面でのパワーアップより、知名度のある原作をより魅力的にするための、いわば内容面でのテコ入れが、ここ数年試みられている。2008年の「ワンピース」は、原作者・尾田英一郎が企画協力として参加。題材もTVシリーズで最高視聴率を記録した「冬島・ドラム王国篇」を、一部のキャラクターなどの設定を改めて映画化した。上映時間1時間50分、ゲスト声優にみのもんた、主題歌にドリームズ・カム・トゥルーを招いたが、それらが興行的に大きなプラスになったとは、残念ながら言い難い。 この作品が観客の心をしっかり捉えたことは、データにも現れている。東映がオープニング時に行った観客調査での「作品満足度」は、なんと99.9%!!女性比率52.3%、20歳以上の観客は全体の58.9%を占めたという。 [岐路に立つ「クレヨンしんちゃん」と「名探偵コナン」] ●「超劇場版ケロロ軍曹3/ケロロ対ケロロ・天空大決戦」(2008年3月公開)=5.8億円 興収5億円を下回った前作を挽回。「超劇場版ケロロ軍曹3」の、オープニング成績は163スクリーン計10万2567名と初めて10万名を突破。興収1億697万7300円は、シリーズ新記録にあたる。「ドラえもん」「ワンピース」ほどの大規模なマーケット展開は行っていない同シリーズだが、映画館にとっては1スクリーンあたりの興収が高いことに加え、ショップで扱うキャラクター商品の売り上げなどで、オイシイ番組なのである。 ●「ドラえもん・のび太と緑の巨人伝」(2008年3月公開)=33.7億円 2005年の大規模リニューアルを経た「ドラえもん」シリーズは、完全に復調したと言えるだろう。また作品内容も、子供向けではなく、むしろ同伴者である父親、母親たちを感動させることで、視聴習慣ならぬ“鑑賞習慣”をつけさせようとの狙いが、「のび太の恐竜2006」以降の作品から感じられる。「のび太と緑の巨人伝」では、そこに環境保護というメッセージ性が加わった。 ●「クレヨンしんちゃん・ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者」(2008年4月公開)=12.3億円 「クレヨンしんちゃん」シリーズは、1999年4月公開の「爆発!温泉わくわく大決戦」が興行収入10億円を下回ったことで、関係各社によるリニューアルが検討され、その結果、「しんちゃんのキャラクターを以前より強く押し出す」(「ゲスト・キャラの描写に比重がかかりがち」との指摘を反映して)ことや、興行的な観点から、それまでの5~6週間興行を、G.W.の休日3週間に絞ったデイトに改めるという対策が、2000年からとられるようになった。2001年に公開された原恵一監督の「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」のクォリティの高さが評判となり、翌2002年の同監督作品「嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」は、文化庁メディア芸術祭アニメ部門大賞などを受賞したことにより、いちやく注目を集めることになる(山崎貴監督が「BALLAD -名もなき恋のうた-」として実写リメイクするというおまけまでついた)。 ●「名探偵コナン・戦慄の系譜〈フルスコア〉」(2008年4月公開)=24.2億円 2002年の「ベイカー街の亡霊」の興収34億円、03年の「迷宮の十字路」の32億円をピークに、同シリーズの成績は徐々に下降線を辿りはじめるが、シリーズ開始第10作を記念し、人気キャラが勢揃いした2006年の「探偵たちの鎮魂歌」が30.3億円を計上した。しかしこれ以降、興収は再び緩やかな右肩下がりの曲線をき始める。 【2008年の邦画特撮映画】 へ [筆者の紹介] |
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[ 0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 第3回2008年特殊映像総決算! ] |
「特殊映像ラボラトリー」 第3回 2008年特殊映像総決算!(2) 斉藤守彦 [前年のペースを持続した「ポケットモンスター」と「NARUTO疾風伝」] その「劇場版ポケットモンスター」シリーズだが、劇場版スタート10周年を記念した「ダイヤモンド・パール」シリーズの第1作「ディアルガVSパルキアVSダークライ」公開時、映画館だけで入手出来るキャラクターの配信で話題をまいたが、2008年夏公開の「ギラティナと氷空の花束」でもこのプレゼントを継続した。 ●「劇場版ポケットモンスター・ダイヤモンド・パール/ギラティナと氷空の花束〈シェイミ〉」(2008年7月公開)=48億円 通常ならば、「ディアルガVSパルキアVSダークライ」のような、イベント的要素の濃い興行の後は、シリーズ作品とはいえ興収はダウンすることが常だった。ところがポケモン・シリーズは、そのダウンを2.2億円に収め、最終的に興収48億円をものにした。これは、このシリーズの強さを改めて思い知らされる成績であり、内容面でのテコ入れに注力した「ワンピース」とは対照的に、製作委員会各社と東宝(東宝は、ピカチュウ・プロジェクトに参加していない)の力を結集し、イベント性のパワーアップを行った点が興味深い。 これまた東宝配給の夏休み番組として定着した「劇場版NARUTO」シリーズの第5作「疾風伝 絆」は、興収11.8億円をあげた。 ●「劇場版 NARUTO -ナルト- 疾風伝 絆」(2008年8月公開)=11.8億円 「NARUTO -ナルト-」から「NARUTO -ナルト-疾風伝」への移行は、原作の第一部から第二部への移行を踏襲したもので、同名のTVアニメ・シリーズも2007年2月よりタイトルと内容を改めている。「疾風伝」移行後の劇場版は、コンスタントに興収10億円以上をあげており、2007年と08年の興収の差がほとんどないあたり、この場合もリニューアルは成功したと見るべきであろう。 ●「映画yes!プリキュア5GoGo!/お菓子の国のハッピーバースディ」(2008年11月公開)=8.1億円 「ふたりはプリキュア」シリーズは、その時々の人気によって、シリーズごとに興収の差が出るが(2006年正月公開の「ふたりはプリキュアMaxHeart2」は興収5.7億円であった)、2本の「yes!プリキュア5」シリーズは、2005年4月公開の「ふたりはプリキュアMaxHeart」の8.5億円に次ぐ成績を上げている。いずれも東映αチェーンでの中規模マーケット(110~150スクリーン)となっているが、それだけのスクリーン数でこの興収は、非常に効率の良いビジネスとなっていることがうかがえる。 [小規模マーケットでヒットした、 他のシリーズ作品では、アニプレックス製作・配給によるシリーズ「劇場版 空の境界」が、正月の第一章「俯瞰風景」、第二章「殺人考察(前)」に続いて、第三章「痛覚残留」が2008年2月に、同第四章「伽羅の洞」が5月、第五章「矛盾螺旋」が8月に公開された。原作小説を最大限に尊重した、質の高いビジュアルと音響を誇る同シリーズは、都内ではテアトル新宿1スクリーンでの上映ながら(途中からテアトルダイヤが参加)、熱狂的なファンが毎回駆けつけ、テアトル系映画館の単館アニメ作品としては、歴代興収記録を樹立している。 ●「劇場版 空の境界/第五章 矛盾螺旋」(2008年8月公開)=4500万円 なお全国8都市における、全5作品の現時点での総興行成績は18万3000名、興収は2億円を達成しており、12月20日から公開された「第六章 忘却録音」も好調な出足を切ったとのことから、2009年初春公開を予定している「第七章 殺人考察(後)」まで、かなりの興行収入が期待されるだろう。 また押井守監督の新作「スカイ・クロラ」が、米メジャー系配給会社であるワーナーのローカル・プロダクション作品として公開され、興収7億円をものにした。この成果については評価が分かれるところだが、筆者としては押井監督作品の最高記録であった「イノセンス」(興収10億円)を上回って欲しかった。米メジャー系配給会社が邦画各社と大きく差別化出来るのは、そのマーケティング力にある。ハリウッド映画で培った大規模な拡大公開が可能となることは、製作サイドにとって大きな魅力だが、果たして「スカイ・クロラ」を全国213スクリーンという規模で上映することが、作品の力に応じたマーケティングであったかといえば、これまた評価は分かれるところだ。 【2008年の邦画特撮映画】 に続く |
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[ 0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 第3回2008年特殊映像総決算! ] |
「特殊映像ラボラトリー」 第3回 2008年特殊映像総決算!(3) 斉藤守彦 特撮映画…とはいうものの、昨今ではCGやVFX技術の進歩によって、一般映画にも特撮技術やその応用が使われることも多く、果たして「特撮映画」とはどのような作品を指すのか、判然としづらい。故にここでは「特撮技術をセールスポイントにした作品」と定義したい。 なんといっても2008年の特撮映画は、東映の「仮面ライダー」シリーズの好稼働ぶりがエポックだ。2007年夏に公開された「劇場版仮面ライダー電王/俺、誕生!」が、興行収入13億円と、平成ライダー・シリーズの劇場版としては、2003年の「仮面ライダー555/パラダイス・ロスト」の15億円、2002年の「仮面ライダー龍騎/EPISODE FINAL」の14.3億円に次ぐ歴代3位の成績であったことから、「電王」の人気の高さは証明されていた。TVシリーズは2008年1月で終了したものの、さらなるビジネス・チャンスを狙った東映ビデオは、OVとして「仮面ライダー電王&キバ/クライマックス刑事」を、金田治監督で製作。当初この作品が、東映系の4月番組として公開されるはずだったが、東映の子会社T・ジョイが配給権を持つ「モンゴル」が、浅野忠信のオスカー・ノミネートという話題性から採用されてしまい、「仮面ライダー電王&キバ」は、中規模マーケットである東映αチェーンでの上映となった。 ●「さらば仮面ライダー電王」(2008年10月公開)=7.2億円(見込み) [明暗を分けた 「大決戦!超ウルトラ8兄弟」と「ギララの逆襲」] 「仮面ライダー」シリーズの宿命的ライバルといえば、「ウルトラマン」シリーズだが、予想を上回るヒットとなった2006年の「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」に続いて、昭和と平成のウルトラマン及び出演者たちが共演する「大決戦!超ウルトラ8兄弟」が、松竹の配給により9月13日から公開された。 ●「大決戦!超ウルトラ8兄弟」(2008年9月公開)=8.4億円 結果的にウルトラマン映画の興行収入新記録を樹立した「大決戦!超ウルトラ8兄弟」だが、これは前述した観客の保守性が大きく作用していると言っていい。ウルトラマンたちの共演はもとより、今回はV6長野博の出演が大きな話題となり、ファミリー層、ウルトラマンティガ・ファンの動員に拍車をかけた。なおウルトラマンダイナに変身するアスカ・シンを演じたつるの剛士は映画公開時、歌唱ユニット・羞恥心でブレイクし集客に貢献したが、撮影時にはまだ羞恥心は始動しておらず、思わぬサプライズとなった形だ。 単館及び小規模公開作品では、小中和哉監督が“和製「ある日どこかで」”を目指した、秀逸なファンタジー「東京少女」、アメリカ資本による「片腕マシンガール」「東京残酷警察」などが登場。また「小さき勇者たち」で特技監督を務めた金子功が監督した「THE MASKED GIRL/女子高生は改造人間」は、「『仮面ライダー』の第1話を、女子高生主演で、まんまリメイクした」(監督談)という、特撮オマージュにあふれた作品だ。 【2008年の邦画アニメ映画】(1) に戻る |
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[ 0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 第3回2008年特殊映像総決算! ] |
「特殊映像ラボラトリー」 第3回 2008年特殊映像総決算!(4) 斉藤守彦 [目標を大きく下回った「カンフー・パンダ」] まずアニメ映画では、ディズニー・アニメの新作「ルイスと未来泥棒」が正月に公開され、興収9.33億円をあげた。ドリームワークス・アニメーションの新作2本は、「ビー・ムービー」が興収2.4億円、全米のみならず海外マーケットで大ヒットした「カンフー・パンダ」は20億円と、公開前の「70億円目標!!」とのかけ声には届かなかった。また「スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ」も興収2.9億円と、あの大ヒット・シリーズとは思えない成績。実写映像とCGアニメのギャップは、特にキャラクター面において埋めがたいミゾが存在している。 4月に公開された、J.J.エイブラハムズの「クローバーフィールド/HAKAISHA」。エイブラハムズ自身が「日本の怪獣映画からヒントを得た」というだけあって、そのテイストといい、ジャパニーズ特撮映画を彷彿とさせる。興行収入12億円は立派。 ブーム現象が期待されるというか、カッツェンバーグたちが、意地でもブームにしようと企んでいる3D映画。「とりあえず」といった感じで10月に公開されたのが、H・G・ウェルズの「地底探検」を映画化した「センター・オブ・ジ・アース」。内容云々よりも、3Dメガネの重みで顔面が硬直してくるのと、試写会ではやけに映像が暗いプリントが上映されたことで、売り物である立体効果が今ひとつ実感出来なかった作品だ。それでも興収8億円をあげたのは、特別料金(当日大人2000円)のおかげか。 …さて2009年の特殊映像たちの成果はいかに。 【2008年の邦画アニメ映画】(1) に戻る |
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[ 0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 第2回河崎実監督ロング・インタヴュー ] |
「特殊映像ラボラトリー」 第2回 河崎実監督ロング・インタヴュー(1) 斉藤守彦 −河崎さん、「ギララの逆襲」やってる時、「オレは命賭けてるからね」って言ってたじゃないですか。 こともなげに言い放つ、この軽さ。筆者と河崎実監督とは、彼の「河崎実大全」でインタヴューをさせてもらった他、メールなどでやりとりをしたり、時に仲間うちの飲酒にお誘いする、そんな関係である。 ■最初は「東京タワー/時々たけしと、しょこたんと、ギララ」を目論んでいた(笑)!
−あ、シノブのアイデアだったんですか? −で、それはダメが出たんですか? −ずーっとギララやりたかったんですか? −それが去年の年末の段階ですか? −こういう話にしようってのは、最初から固まってたわけですか? −松竹サイドからの要望って、どんなことがあったんですか? −一切? −Y監督、ずっと映画を撮ってきたけど、唯一やってないジャンルが怪獣映画だと。それでプロデューサーに「シナリオ見せろ」って言ってきたらしいですね。 −なんだかなあ…。 −「命賭けてる」ってのは、名言だと思いましたよ。目がマジなんだもの(笑)。 これがプロデューサー・デヴューとなる、松竹の鈴木忍君とも、筆者は長いおつき合いがある。大御所Y監督の介入も、彼が巧みに交わしてくれたおかげで、制作は順調に進んだようだ。しかし、いざ興行ということになると、それはまた別問題があり…。 ■ベネチア映画祭は、 実相寺監督だって行けなかったんだから!! −最終的に興行収入はどうでした? −リバートップも出資されてますよね。 −それはエライと思いますよ。 −出資する立場としては…。 −色んなこと言われたって、やっちゃったモン勝ちなんですよ。 −ベネチア映画祭にも招待されたし。 −北野武、宮崎駿、そして河崎実(笑)。 −彼は怪獣映画とか好きなんですか? −なぜギララをコンペ部門に出さなかったんですかね?ポニョと戦ったら快挙ですよ。 −いかじゃないっ!! −シッチェス。あそこはファンタスティック映画祭の名門でしょ。 −これから河崎作品は、ベネチア出品がちらついてくる。 マルコ・ミューラーとは、ベネチア映画祭のプログラミング・ディレクターのこと。大変な日本映画好きとして知られる男である。筆者は10月に都内で行われた、彼の講演を聞きに行ったのだが、クロサワ、オヅなどの名作だけではなく、60年代のプログラム・ピクチャーなどにも愛情が深いことに驚いた。 [筆者の紹介] |
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[ 0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 第2回河崎実監督ロング・インタヴュー ] |
「特殊映像ラボラトリー」 第2回 河崎実監督ロング・インタヴュー(2) 斉藤守彦 ■怪獣映画は、もうダメだね! 河崎 −「怪獣映画だから」ダメなんですかね? −「小さき勇者たち」みたいに、ファンタジーにしてもダメ? − 怪獣そのものに嫌悪感があるのかな? −でも最初、新宿ピカデリーで9月にレイト上映の予定だったのに、夏休み公開に早まり、しかも拡大上映になっちゃった(笑)。 ■三島由起夫の「美しい星」を、 おバカ映画として撮りたいね!! 「ギララの逆襲」は、興行的には不成功だったが、ベネチア映画祭に招待された。その功績を河崎監督は「こんなヤツ、他にいないでしょ?」と強調するが、果たして彼は、そのことを本当に納得しているのだろうか? −今、私の周辺でも特撮映画やりたいってプロデューサーや監督って多いんですよ。 −そのあたりは、プロデューサー的感覚。 −狭いのはダメですね。 −結局リバートップは事務所的に潤ったんですか? −「猫ラーメン大将」に続く次回作は? −よくやりますね。映画作りながら(笑)。 −河崎監督だって、撮ってるじゃないですか、たくさん。 −でも自由に撮ってるじゃないですか。それはみんな、うらやましいと思ってますよ。 −何が楽しいんですか、委員会にがんじがらめにされて。企画から何から決められて、そんな中で撮って。 −そういう話が来たらどうしますか?いわゆる製作委員会で、10億円の予算があって、「委員会の言う通りにやってください」って話が来たら。 −もし来たら? −怪獣映画だったらやりますか? −先日の読売新聞のインタヴューで、「三島由紀夫の『美しい星』を映画化したい」と言ってたでしょ? −それは、おバカ映画として(笑)? −三島原作なら、河崎監督で「潮騒」やって欲しい。かぶり物満載(笑)。 現実的に「美しい星」が河崎監督の手で映画化する可能性は、現在のところ決して高くはないだろう。しかし行動力抜群の彼のことだ。あれよあれよという間に、関係者を説得して、実現させてしまうかもしれない。そのバイタリティこそが、この男の真骨頂だ。 |
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[ 0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 第1回「崖の上のポニョ」は結局成功したのか? ] |
第1回 「崖の上のポニョ」は、結局成功したのか?(1) 斉藤守彦 ■ 「崖の上のポニョ」は、ヒットしたのか? 我ながらせっかちだとは思う。宮崎駿監督作品「崖の上のポニョ」は、7月19日の公開から約3か月を経過。スカラ座他でのファーストランが12月4日まで。翌日からはみゆき座他で続映されることが決定しているので、まだまだ上映は続くのだが、メインである夏休み興行も終わったことだし、とりあえずこのあたりで、ちょっと早い総括と検証をしてみようという試みである。 全国481スクリーンで7月19日からスタートした「崖の上のポニョ」は、上映第13週週末(10月11~13日)までの87日間累計で、総入場人員1239万2477名、興行収入149億1573万8215円。この記事がアップされる頃には、興収150億円の大台を突破していることだろう。 それでも日本映画としては、2004年11月公開の「ハウルの動く城」以来の興収100億円突破作品であることから、「歴史に残る大ヒット作」と形容しても良いだろう。 筆者は7月19日の初日、新宿ピカデリーで「ポニョ」を鑑賞したが、その時の観客層は、圧倒的に親子連れ、いわゆるファミリー客だった。アンケートに現れた「20~30代女性」とは、即ちヤング・ミセス層を指し、アンケートに現れない幼年層とは、つまり彼女たちが連れてきた子供たちのことだと考えて間違いないだろう。しかしながら、座席数607席の新宿ピカデリー・スクリーン1を占めた観客のほとんどが、こうした層だったのには驚いた。「ファミリー客がたくさん来ている」と言うよりは「ファミリー客しか来ていない」という印象さえ残った。 ところが、9月の半ば以降、目に見えてそのペースが落ちてくる。9月第3週(9/20、9/21)週末成績は、前週対比59.62%(興収)にダウンし、続く第4週では、ついに週末興収が1億円を割り込み(9880万3850円)、 興収150億円を目前に、一種の足踏み状態に陥ってしまった。 2. 「崖の上のポニョ」は、どう評価されたのか?に続く [筆者の紹介] |
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[ 0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 第1回「崖の上のポニョ」は結局成功したのか? ] |
第1回 「崖の上のポニョ」は、結局成功したのか?(2) ■ 「崖の上のポニョ」は、どう評価されたのか? これはもう、賛否両論に別れた。 賛否両論の“賛”=肯定派の人たちは、上記の否定派による指摘すべてを「だって、これはファンタジーの世界なんだから」の一言でかたづけてしまう。1本の映画として、起承転結がはっきりしたエンタテインメントを求めるほうがおかしい、という意見が肯定派の言い分だ。 個人的な感想を述べれば、否定派が指摘するすべての要素は、僕も感じたことである。それが作品評価のすべてではないが、「ポニョ」という映画をすんなり受け入れることが出来ない、一種の障害になっていることは事実だ。肯定派のように「これはファンタジーだから」という理由で鑑賞者たる自分を納得させることが出来ないのだ。無論すべての映画にリアリティを求めるわけではないが、ファンタジー世界の物語であるならば、それを少しでも知らしめるアクションや台詞が欲しかった。ちょっとしたディテイルにでもそれが感じられれば、この作品の楽しさは倍増するだろう。些細な部分で観客を現実世界に戻してしまい、また作品そのものがフォーマットから逸脱したストーリーで、なおかつ精神的なカタルシスも感じられないとあっては、どうしても鑑賞後の感想は「映画を見たという手応えが感じられない」としかなり得ない。 3. 「崖の上のポニョ」と「となりのトトロ」の、ただならぬ関係?に続く 1. 「崖の上のポニョ」は、ヒットしたのか?に戻る 続きを読む "第1回 「崖の上のポニョ」は、結局成功したのか?(2)" » |
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[ 0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 第1回「崖の上のポニョ」は結局成功したのか? ] |
第1回 「崖の上のポニョ」は、結局成功したのか?(3) ■ 「崖の上のポニョ」と「となりのトトロ」の、ただならぬ関係? 日本映画歴代第5位の大ヒットに「ポニョ」を押し上げた、その最大の功労者は、おやじふたりと9歳の少女だ。藤岡藤巻と大橋のぞみが歌う「崖の上のポニョ」は、現在までにCD42万枚(9月現在)を売る大ヒットとなった。この主題歌は去年のクリスマスにリリースされたものの、当初はまったく売れなかったが、映画公開が近づくに連れ、ヒットチャートを席巻したことは、各種の報道で知られている通り。 今回の「ポニョ」に関しても、「トトロ」が受け入れられたプロセスを踏襲したとまでは言わずとも、意識したと思える箇所はいくつか見られる。とりわけ作品の情報を発信する際、常に強調されたのが、「ポニョ」という映画が子供たちのために作られた作品であること、CGなどを極力使わず、手描きのもつ素朴さ、温かさを大切にした作品であること、そしてポニョというキャラクターの可愛らしさだ。 ■ 宮崎駿監督の次回作についての提言 「崖の上のポニョ」について、筆者が知り得たこと、また考えたことや感じたこと、分析したことをずらずらと並べてみたが、ビジネスとしての「ポニョ」は、冒頭で述べたように大成功を収めたと言える。 もし監督自身が作品作りのスタイルを変えるというのであれば、次回作では、ぜひ脚本家を起用することをお薦めしたい。保守化が著しい昨今の映画観客の期待に応えるためには、まずはストーリー面での整合性が重要だと思うからだ。 1. 「崖の上のポニョ」は、ヒットしたのか?に戻る |
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