不良債務などの解消のため、昭和伊南総合病院の経営改革プランは伊南四市町村に対し、今年度から6年間で計12億円の追加繰り出しを求めている。各市町村の財政事情を考えるとき、決して軽くない負担額だ。ほかの施策や事業に影響が出ることも懸念される中で、地域住民は昭和伊南の実情をどう把握し、昭和伊南にどうあってほしいと望んでいるのだろうか。
昭和伊南が昨年10月から11月にかけて実施した住民アンケートによると、「現在の昭和病院のイメージは」との問い(複数回答)に対し、725人が回答した。「経営が大変そう」が79%、「地域になくてはならない病院」と回答した人は77%にも上った。地域の基幹病院として関心が高く、病院の維持を願う住民の切実な思いが伝わってくる。
地域住民の声を拾う中でも、昭和伊南が必要との認識では一致している。駒ケ根市内の60代女性は「何かあった時には頼りにしている」。新たな負担についても「お金を出し合ってでも守ってほしい」と訴える。
「何でも伊那中央病院に集約されるのはつらい。病院があまり広域化するのは良くない」。こう疑問を投げ掛けるのは、中川村の70代男性。追加繰り出しにも「理解できる。しっかりした病院であってほしいという気持ちは強い」と話す。
子育て中の飯島町の20代女性。「1人で運転して子どもを遠くの病院に連れて行くのは大変」とした上で、「病院が近くにないと困る。だから仕方ないかな」と負担増にも一定の理解を示す。
「地域の核になる病院はなくてはならない」と話す宮田村の50代男性は、「総合病院の機能を維持さえすれば、民間経営でも構わないのではないか」と指摘し、「新たな負担も多額で、ほかの施策に支障が出てしまうのではないか」と心配する。
追加繰り出しによる影響について、駒ケ根市の財務担当者は「ほかの施策の取りやめや制度の切り詰めは考えていない。活用出来るあらゆる財源を取り込み、行財政改革などをセットに財源を生み出したい」と強調する。
「ほかの事業を犠牲にすることはあってはならない。創意工夫で対応出来ると考えている」とするのは飯島町。中川村も「負担はあっても仕方ないと考える。支障はいま、想定されるものはない」と説明する。宮田村は「来年度は個々の施策に大きく影響しないよう調整した。ただ、この状態が何年も続けば実施不可能となる施策が出てくることも予想される」としている。
こうした事情を踏まえたうえで、伊南行政組合の杉本幸治組合長は、改革プランを了承した2月下旬の同組合議会全員協議会で「病院建築時の起債償還が2012年度で終了するため、ここ3―4年をいかに乗り切るか」と述べ、理解を求めた。(おわり)