職場での過労やストレスなどでうつになり、自ら命を絶った50人の遺書や写真、遺族の手記を集めたパネル展「私の中で今、生きているあなた」が、枚方市で開かれている。同市の竹井京子さん(59)は、05年に亡くなった長男、大地さん(19)の生前の写真やメモを展示。竹井さんは14日、視察で会場を訪れた野田聖子・自殺対策担当相に「自殺を防ぐには、自助努力だと突き放すのではない、優しい社会をつくらないと」と訴えた。【田倉直彦】
大阪市のNPO法人「働く者のメンタルヘルス相談室」(伊福達彦理事長)の主催。同法人はうつとなり、休職している人や、自殺した人の遺族の支援に取り組んでいる。展示会は全国を巡回中で、今回で10回目。会場には宮城、島根などの遺族らも訪れた。
「自分と同じ仲間がほしい」「自立がとても恐(怖)い」。会場のパネルの一つに展示された大地さんの手書きのメモの一節だ。
大地さんは竹井さんの一人息子。「ゆっくりと話す、気のやさしい子」だった。中学1年生の秋から不登校になり、精神科の治療も始めた。定時制高校に入学したが、ほとんど登校できないまま退学。感情も不安定な状態でアルバイトも長続きしなかった。05年10月、知人宅を出た後、行方が分からなくなり、警察から連絡があったのは5日後。自宅近くの公園の池に身を投げて亡くなっていた。
竹井さんは当時「以前よりも落ち着いた様子で、精神科の医師も危険な状況とは言わなかった。変に死を意識させたくなかった」と、あえて深く聞かなかったことを今も悔やむ。14日、会場で「息子にもっと寄り添ってあげたらよかった。家族や友人が示す小さなサインを見逃さないでほしい」と訴えた。
野田担当相は、大地さんのメモを見て竹井さんに「息子さんはもがいてたんですね」と声をかけ、「親はうつなどの専門家ではない。社会とつながっていないと(自殺を)防げない」と語った。
同展は18日まで。午前10時~午後6時(最終日は午後5時)。無料。会場は枚方市岡東町のひらかたサンプラザ3号館5階市民ギャラリー。労災や休職などの相談も受け付ける。
毎日新聞 2009年3月15日 地方版