石油の次は「水」、新たなビジネスとなる可能性
[ワシントン 22日 ロイター] 「水」が20世紀における石油と同様に希少価値の高い商品と化しつつあり、気候変動が世界規模の問題となる現代、飲料水の確保が石油資源の管理と同様に政治的な力となるのだろうか。安全な水が希少であるこの時代に、水は果たして金を生むビジネスとなり得るのか。
今月22日までトルコのイスタンブールで開催された「第5回世界水フォーラム」を見守った環境活動家に言わせると、その答えは「イエス」だ。
世界水フォーラムでは、安全な飲料水を「人間の絶対的必需品」だと形容。事実、人間が食べ物無しに生存できるのは最長で30日間程度だが、水無しで生存可能なのは最長7日間ほどだ。
地球上では現在10億人以上が安全な飲料水へのアクセスを持たず、約25億人が公衆衛生に必要な水を手に入れらない。全疾病の80%は不衛生な水が媒介する。
皮肉なことに、宇宙から見た地球は青い。これは地球の表面の大部分が水に覆われているからだが、あいにく海水は飲料水には適さない。地球上の水のほとんどが塩水だったり不衛生だったりする中、人間に必要なのは「きれいな淡水」なのだ。
今年の世界水フォーラムでは、衛生的な淡水の供給が地球温暖化の影響によって減少していることが示された。
オバマ米政権移行作業チームのアドバイザーも務めたカリフォルニア大学ロサンゼルス校のジョナサン・グリーンブラット教授は「急速な気候変動で水循環が変化し、水資源へのアクセスが損なわれつつある。水にかかわる、人間への直接的影響が出ている」と語る。科学者たちの予想通りに海面が上昇すると、沿岸部にある「帯水層」と呼ばれる地下水がある地層が塩水化し、その地域での淡水アクセスに影響を与える可能性があるという。
<「水」を政治課題に>
グリーンブラット教授は、首都北京のすぐ郊外で砂漠化が進行する中国など、かつて肥沃だった一部の地域で砂漠化が進んでいると指摘。その上で、気候変動が議員や政策立案者の政治課題となったのと同様に、水の問題も議題に上げるべきだ、としている。
世界保健機関(WHO)によると、「安全な水」に関するプロジェクトの投資収益率は、意外にも高い。水とその衛生に費やすコスト1ドルにつき、平均7─12ドルの経済効果を生み出せるという。
また、米環境団体「自然資源防衛協議会(NRDC)」のブログ(http://switchboard.nrdc.org/worldwaterday.php)は、年間113億ドルの水関連の投資は生産性と健康の増進に寄与し、その経済効果は年間830億ドルに相当するとしている。
しかし世界自然保護基金(WWF)インターナショナルによると、今年の水フォーラムは水関連の投資を主要議題とするには至っていない。
WWFインターナショナルのジェームズ・リープ事務局長は「今回世界水フォーラムが採択した閣僚声明は、行動計画というよりありきたりのことの寄せ集め」と手厳しい。「気候変動による影響への対処として最適なのは、人工的によく管理された河川システム。明らかに水管理の話だ」と声明を発表した。
(ロイターニュース 原文:Deborah Zabarenko、翻訳:植竹 知子)
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