「通天閣歌謡劇場よ、どこへ行く?」−。大阪の名物、上方演芸資料館(ワッハ上方)の移転、食堂「大阪名物くいだおれ」の閉店などの話題が相次ぐ中、今度は大阪市浪速区の新世界通天閣歌謡劇場が七月五日から演芸の「通天閣地下劇場」に衣替えする。「追い出される」形になった“通天閣の歌姫”こと叶れい子さん(45)は「話が一方的で、二十年来のファンの方に申し訳ない。抗議の嘆願書を松竹芸能に出す」と怒りを隠さない。
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「考え直してほしい」と訴える叶れい子さん |
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演芸場に衣替えするという新世界の通天閣歌謡劇場 |
通天閣歌謡劇場は来年で二十周年を迎えるところだった。通天閣の地下にあった囲碁将棋センターを改装してスタートしたのが一九八九年。NHKの朝の連続ドラマ「ふたりっ子」(九六年)に同劇場で歌うオーロラ輝子が登場し、そのモデルの叶さんが一躍全国区人気になった。
松竹芸能が道頓堀にある演芸の「B1角座」を五月末で閉館し、七月五日から代替として通天閣歌謡劇場を使用すると発表したのは四月十九日。「これまで週末の土、日曜日に行っていた歌謡ショーを月曜日に回し、演芸中心の新たな拠点にしたい」というのだ。
「寝耳に水で驚くと同時に、怒りでいっぱい。劇場はこの二十年、わたしたちが街の人たちやファンの人たちで作り上げてきたところ。いす一つから持ち寄っていただいてできた。昔の新花月劇場のように演芸と一緒の公演でもいいですが、肝心の土、日曜日を取り上げられてはやっていけない」
叶さんは松竹芸能の発表に対し「もし譲り合いができるなら、隔週交代で演芸と歌謡ショーをやったらどうか」という折衷案を出したが「答えがない」という。そのため同劇場開設時からの仲間である“通天閣の貴公子”こと林健二さんや曽野恵子さん、奈美京子さん、大沢しのぶさんと連名で嘆願書を二日に松竹芸能本社に届けることになった。
「ファンや新世界の人たちが“座り込みを”という応援の声もありますが、何と言っても、長年この劇場の歌謡ショーを楽しみにしてくださっているお年寄りのファンの方たちから、土、日曜日の楽しみ、生きがいを奪わないでという声を聞いて涙が出てきます」
嘆願書提出の日は舞台衣装を着て、難波の新歌舞伎座付近から署名運動を兼ねパレードをして松竹芸能本社まで行く。劇場の経営者である通天閣観光は「松竹芸能とは正式な契約はしていないので、両者でいいように落ち着いてほしい」(高井隆光副社長)と話している。
長年、歌謡劇場に通っているという年配の男性は「後期高齢者医療制度と同じように年寄り対象のいじめのように思う。千五百円の入場料でこれだけ楽しめて心を癒やしてくれる場所はここしかないのだから」とつぶやく声が聞こえた。
なお、三日から六日まで「通天閣演歌まつり」が行われ、叶さんら劇場なじみの歌手が総出演する。
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