「救急医療など二重、三重に評価を」―DPC分科会
中央社会保険医療協議会(中医協)のDPC評価分科会(分科会長=西岡清・横浜市立みなと赤十字病院長)は3月23日、現在の調整係数に代わる「新しい機能評価係数」の現時点での候補として基本問題小委員会に報告する37項目を決めた。事務局の厚生労働省側が提示した「『新機能係数』に関する検討の経過報告2(案)」では、「医療安全の評価」など15項目については、出来高など現行制度との整合性を図る必要があるとしている。これに対し、23日の同分科会では、救急医療への取り組みに対し、二重、三重の評価を求める意見もあった。
【関連記事】
「データ分析可能」は8項目−DPC分科会
病院の機能、「二重評価してもいい」
新係数候補の選定「4月ぐらい」に
新係数の検討経過、基本小委に報告へ―DPC分科会
新機能係数「地域病院への配慮を」
同分科会は、「経過報告2」を25日の小委に報告する。厚労省の説明では、分科会はあくまで議論の材料を小委に提供するという位置付けで、実際にデータ分析する項目は小委が決める。同分科会は、小委の決定を受けてデータ分析に着手。それ以降は、分科会の分析結果を踏まえて、小委が次の診療報酬改定で新係数に採用する項目を議論する。
厚労省の「経過報告2(案)」は、これまでに議論したもののうち37項目を、データ分析が可能かどうかの観点から4分類したもので=表=、同省はこのうち実際にデータ分析できる項目から優先して導入を検討する方針だ。
具体的には、「DPCデータを用いて分析が可能」(8項目)と「一部分析が可能か、医療機関の負担が少なく速やかにデータを把握できる」(5項目)の優先順位が高いとみられるが、同省によると、小委がこれら以外の項目でデータ分析を求める可能性もある。
■「新係数、多くの病院が納得できるものに」
同分科会の意見交換は、「経過報告2(案)」で示された4分類の項目ごとに行われた。
「DPCデータを用いて分析が可能」とされた「手術症例数または手術症例割合に応じた評価」に対しては、山口俊晴委員(癌研究会有明病院消化器外科部長)が「手術症例数は、術式によって随分違う。それぞれの術式に、これ以上あればいいという根拠が必要だ。全く根拠なしに数字を持ってこられたら、大変まずい」と述べ、この項目の削除を求めた。
これに対し小山信彌委員(東邦大医療センター大森病院心臓血管外科部長)は、手術件数ではなく、入院患者数に対する手術の実施割合での評価を残すよう主張。最終的に、この項目は「手術症例割合に応じた評価」として小委に報告することになった。
酒巻哲夫委員(群馬大医療情報部教授)は、「診断群分類のカバー率による評価」が新係数の候補に入ったのを受け、「単一の疾患を高いレベルで見ている病院が当然ある」と述べ、特定の診断群分類をカバーできる病院だけでなく、より幅広く評価できる仕組みが必要だと指摘した。
齊藤壽一委員(社会保険中央総合病院院長)も、「新係数はなるべく多くの病院が納得できるものにする必要がある」と述べた。
■「術後合併症の頻度による評価は慎重に」
また、「一部分析が可能か、医療機関の負担が少なく速やかにデータを把握できる」とされた5項目では、「診療ガイドラインを考慮した診療体制確保の評価」の取り扱いが焦点になった。
吉田英樹委員(昭和大医学部名誉教授)は、「学会のガイドラインに載っている検査や薬だから保険請求できると誤解している医療機関がある」と述べ、この項目を新係数にすることで誤解がさらに広がることを懸念した。山口(俊)委員も「ガイドラインはスタンダードだが標準ではない。こういうことに使うのは非常に難しい」と述べたほか、西岡分科会長は学会のガイドラインについて、「国際的な信用度に問題ありとされるものもかなりある」と指摘した。
「術後合併症の発生頻度による評価」については、相川直樹委員(慶大医学部救急医学教授)が「高齢者や喫煙歴の長い人は合併症を起こしやすい」と指摘。合併症の発生が少ない病院を評価する仕組みにすると、こうした患者への治療を控えるケースが出かねないとして、慎重な取り扱いを求めた。
また、小山委員は「医師、看護師、薬剤師等の人員配置(チーム医療)による評価」について、「病棟薬剤師は、1人か2人を置くのがやっとだが、2交代制にして、薬のことはすべて任せられるくらい積極的に評価してもらいたい」と求めた。
■三次救急以外への評価求める声も
「既存の制度との整合性等を図る必要がある」とされたのは「医療安全の評価」など24項目。齊藤委員は、救急医療に取り組む病院が算定する「救急救命入院料」を例に、「(出来高で)既に算定していたとしても、DPCの特性に照らして重点評価すべきものは二重、三重評価することが好ましい」との認識を示した。相川委員は、救急医療では近年、三次救急よりも重症度が低い部分の需要が増えているとし、こうした部分への評価が必要と主張した。
また、「速やかなデータ把握が困難、またはDPCにおける急性期としての評価が困難」とされた9項目については、西岡分科会長が「次回の診療報酬改定には掛かってこないが、将来、必要なデータがそろい次第、対象にしていく」と説明した。酒巻委員はこのうち「新規がん登録患者数による評価」について、「積極的に取り上げていただきたい」と早期の対応を求めた。
更新:2009/03/24 19:11 キャリアブレイン
新着記事
「救急医療など二重、三重に評価を」―DPC分 ...(2009/03/24 19:11)
訪問・通所介護でQ&A−厚労省(2009/03/24 18:02)
薬学系人材養成の一次報告を提出―文科省検討会(2009/03/24 16:20)
注目の情報
PR
記事を検索
CBニュース会員登録メリット
気になるワードの記事お知らせ機能やスクラップブックなど会員限定サービスが使えます。
一緒に登録!CBネットで希望通りの転職を
プロがあなたの転職をサポートする転職支援サービスや専用ツールで病院からスカウトされる機能を使って転職を成功させませんか?
【第54回】和田耕治さん(北里大医学部・衛生学) 医師や看護師への暴言・暴力、女性看護師へのセクハラやストーカー、コンビニ受診、治療費踏み倒し―。 数年前から、医療現場ではいわゆる「モンスター・ペイシェント(患者)」問題が深刻化し、医療従事者たちを疲弊させている。その中でも、特に目立つのが一部の患者 ...
石原晋さんが島根県邑南町の公立邑智病院(一般病床98床)の院長に就任して1年半がたった。当初は5割を割り込んでいた病床利用率が7割台に回復するなど、改革の成果が表れ始めている。院長としてこれまで最も重視してきたのが、「助け合い、教え合い」の精神だ。石原さんは「特定の専門分野に固執しない、何でもでき ...
WEEKLY
現在、「潜在看護師」は全国で55万人に上ると言われており、離職防止の観点から、24時間対応の院内保育所のニーズが年々高まっています。