着陸に失敗し炎上する貨物機の生々しい映像は航空会社や海外旅行の出発待ちの人たちに大きな衝撃を与えた。成田空港初の死亡事故は、航空関係者にあらためて「空の安全」徹底を求めている。
成田空港A滑走路に着地した米貨物大手のフェデラルエクスプレス(フェデックス)80便は二度ほどバウンドした後、横転し、炎上しながら疾走。乗員二人が死亡した。旅客機なら大惨事になっただろう。
事故原因は今後、国土交通省運輸安全委員会が解明していくが、当日朝の空港周辺は風が強かったことが指摘されている。
航空機は正面からの風には強いが、横風や追い風、突然の上昇・下降気流には弱い。先月二十日、米ノースウエスト航空の旅客機が千葉県・銚子沖上空で乱気流に巻き込まれて四十三人が負傷したケースなどは記憶に新しい。
今回は着陸時での事故だ。パイロットは通常、飛行場とその周辺の風向や風速、視程、気圧など最新の気象情報を管制官などから提供される。事故機も無事に着陸した他社航空機の情報を得ていたはずだ。機体や操縦士の健康などのほか「想像もつかない風」が吹いたのか解明が待たれる。
ただ、急変する天候が相手でも万全の安全対策が不可欠だ。航空会社には悪天候なら離着陸を断念する勇気を持ってもらいたい。
今回の着陸失敗事故は、一九七八年五月に開港した成田空港にとって初めての死亡事故という。
成田は年間利用者数が約三千五百万人に達する世界有数の空港である。来年三月には暫定滑走路を二千五百メートルに延伸する工事が完成。B滑走路として供用が始まれば、同空港の発着枠は現在の年間約二十万回から二万回増える。
羽田空港も来年十月には四本目の滑走路が完成し年間約四十一万回と約十一万回も拡大される。国交省は両空港を「首都圏空港」と位置付け一体運用を行って国内外からの要望に対処する考えだ。
そうした方向はいいが、拡大する航空需要に対応した空域・空港管制に穴はないか。管制官の誤指示や操縦士との交信ミスなどが依然として後を絶たない。習熟を重ねて空の安全をしっかり守ってほしい。
また航空会社によると中部空港などは立地上、横風に見舞われるケースが多いという。国交省は設計段階から横風には工夫していると説明する。この機会にあらためて風対策を徹底させるべきだ。
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