小学五、六年生の英語学習が二〇〇九年度から一部の学校でスタートする。現場が抱える不安は小さくない。教える側が「ヘルプ ミー」とならないよう、各教委は支援体制を整えておきたい。
小学校高学年での英語学習は新しい学習指導要領に盛り込まれた。授業時間は週一時限(標準四十五分)。全面実施は一一年度からだが、一部の学校では前倒しして来月から始める。
文部科学省によると、〇七年度の時点で97%の小学校が何らかの英語活動に取り組んでいた。下地があるから前倒しで行っても支障は少ないと判断したようだ。
しかし、旺文社が昨年夏に全国の小学校を対象に行った英語活動アンケートでは「導入がスムーズに進むと思うか」の質問に53%が「不安が残る」と答えている。
英語を総合学習で扱うのと、必修として教えるのでは指導内容や方法は大きく異なってくる。小学校で教壇に立っている先生の多くは英語を教える訓練を受けていない。不安を抱くのは当然だ。
新要領は「あいさつ」「家庭での生活」などのコミュニケーションを体験させると例示するにとどまる。これでは現場の不安は解消されない。そこで文科省は教材「英語ノート」を作った。
六年生用ノートには「Please help me.」「I want to be a teacher.」などの文が並ぶ。出てくる単語は小五で百三十、小六で百五十程度だ。
学ぶ事柄を会話に主眼を置いているからイラストが多い。教師向け指導資料も作られた。授業では付属CDを併用し、外国語指導助手も用いるという。
教具をそろえ、助手がいても、授業を計画、進行するのは教師の仕事だ。現実には現場が手探り状態で進めることになりそうだ。
不安を少しでも払拭(ふっしょく)するために、各教育委員会は何らかの手だてを講じているのだろうか。
中学校の英語教師に協力してもらうのは対応策の一つではないか。会話を中心に教える小学校英語を直接触れる機会になり、中学での指導経験も生かしてもらえるだろう。
子供が中学に入って英語が嫌いになったり、ついていけなくなる「中一ギャップ」に解決の糸口が見つかるかもしれない。英語教育は小中連携を進めるべきだ。
教える側が自信のなさを隠しながら授業をしても、子供は先生の不安を感じ取るにちがいない。
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