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社説2 世界的な危機映す地価下落(3/24)

 国土交通省が発表した公示地価(1月1日時点)によると、住宅地、商業地ともに3年ぶりに下落した。世界的な不況の影響で日本の地価は「全面安」の様相になっている。

 東京、大阪、名古屋の3大都市圏で地価が上がった地点はゼロだった。都道府県別に平均値をみても、すべての地域で下落した。大都市圏では昨年半ば以降、下落が加速しており、底はまだ見えない状況だ。

 世界的な金融危機による信用収縮で、不動産投資信託(REIT)やファンドを通じた不動産市場への資金流入が減っている。金融機関も不動産向け融資を抑えている。

 不動産業者の倒産が増えているのも資金調達が厳しいためだ。物件を短期でファンドに転売して利益をあげてきた業者だけでなく、消費者向けに住宅を供給する業者も在庫を抱えたままで資金繰りが悪化し、破綻する事例が増えている。

 企業業績の悪化も響いている。人員整理や事業の見直しで企業はオフィスの縮小に動いており、全国の主要都市で空室率が上がっている。昨年初めまではほぼ満室だった東京都心部でも空きが目立ち始め、賃料は下がっている。新築ビルの空室率が高い点も最近の特徴だろう。

 全国の商業地で下落幅が大きい10地点のうち、9つは名古屋だった。トヨタ自動車の不振が地域経済を直撃し、市況が一気に悪化した。

 マンション市場も冷え込んでいる。発売戸数が減っているうえ、首都圏でも物件の契約率が好不調の分かれ目といわれる70%を下回っている。在庫を減らすために業者の値引き販売も広がっている。

 土地の収益力が低下しているのだから、地価は当面下落しやすいだろう。急激な下落は企業の資金調達や金融機関の経営にも悪影響を及ぼしかねないだけに要注意だ。特に、土地を担保にした借り入れへの依存度が高い中小企業の資金繰りについて、政府は目配りする必要がある。

 過去最大規模の住宅ローン減税の実施を見込んで、分譲住宅やマンションの内覧会に来る人が最近増えてきた。政府はこうした政策面での需要喚起策に加えて、土地取引や物件情報の開示を進めて、適正な価格が形成されるように促してほしい。

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