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社説:地価下落 金融収縮防止へ十分な対策を

 公示地価が発表された。経済の急速な低下を映す形で地価も総崩れ状態となっている。全国にある2万8000余の調査地点のうち、地価が上昇したのはわずか20地点余り。比率にして0・1%にも満たないという状況だ。

 今年1月1日時点の地価を1年前と比べたもので、前回まで商業地で3年連続、住宅地で2年連続上昇していた東京、大阪、名古屋の3大都市圏の地価も、今回は下落に転じた。

 地方圏の地価は下落が続いていたとはいえ、前回まで4年間にわたって下落幅は縮小していた。しかし、今回は再び下落幅が拡大することになった。

 中でも3大都市圏の地価下落が急で、地方圏の下落率を上回っていることが特徴だ。

 地価が上昇した地点が0・1%に満たないのはバブル崩壊後の90年代にもなかったことで、不動産市場の深刻さを示している。

 日本は80年代後半のバブルが崩壊し、その後遺症からようやく抜け出すのに長期を要した。そして都心の一等地を舞台にしたミニバブルと呼ばれた不動産ブームも起こった。過熱が心配され、金融庁は不動産融資への監視を強めた。

 そうした効果もあって地価は07年の夏をピークに下降に転じた。そこに米国発の金融危機が重なり、昨年9月のリーマン・ショックの後、さらに地価下落に拍車がかかった。新興不動産開発業者を中心に不動産、建設関連の企業の倒産が続いている。

 日本は輸出に依存する形で経済の再生を進めてきた。しかし、米国の住宅バブル崩壊に端を発した今回の世界的な経済危機が、外需への依存度を高めていた日本経済を直撃した。

 日本経済の落ち込みは、金融危機の震源地の欧米より激しく、それが地価にも表れた。地価の下落は、担保価値の下落という形で金融の収縮につながる。住宅やマンションの価格低下は、逆資産効果という形で消費にも悪影響を与える。

 政府と日銀は、資金繰り問題に取り組んでいるが、あらゆる対策を講じて対処してほしい。また、政府も経済対策の中で、住宅ローン減税の拡充や不動産譲渡益課税の軽減を打ち出すなど、不動産取引を促す措置をとっている。

 しかし、今回の不動産市況の急速な冷え込みは、日本だけの対応で克服するには荷が重い。

 今回の不況の原因は、米国の住宅ブームの崩壊をきっかけに、世界的に膨らんだ金融バブルがはじけたためだ。日本の不動産市場が活力を取り戻すのは簡単ではない。

 震源地の米国が金融システムを立て直すため大胆な措置をとるのが第一だ。そして、日本も含め各国政府が金融、財政面で適切な措置をとり、危機克服に全力を尽くしてもらいたい。

毎日新聞 2009年3月24日 東京朝刊

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