2009年03月24日 社説
[独立法人化答申]
不安解消への道筋示せ
県医療審議会・県立病院のあり方検討部会は、県立病院を独立行政法人化するよう仲井真弘多知事に答申した。経営破綻も危ぶまれる県立病院の再建には何が必要なのか、公的医療を担う県は待ったなしの対応が迫られている。
県立病院を独立行政法人に切り替えるのは、端的に言えば、県組織から独立させ、法人格で経営させるものだ。検討部会は医療従事者の人事管理や予算執行などの運営で、より柔軟、効率的に意思決定が可能になると説明する。
赤字経営について責任の所在を明確にしない限り、県立病院を立て直すのは難しい、というのがこれまでの論議の中心だ。
ところが、各県立病院では公的医療を公務員組織でない独立行政法人に担わせることに戸惑いが広がっている。
現場からは(1)小児、離島、周産期、救急診療といった不採算部門が経営効率化の中で切り捨てられる(2)県は組織分離によって財政支援を停止する―という懸念が聞かれる。
医の安心をどう保証するのか、という不安が深まっている。
独法化を所管する県福祉保健部は、これらの問題が生じる心配はないと言い切る。
必要な診療科目は政策医療として維持することと、公的医療で赤字が生じた場合に損失を埋めるのはいずれも県の法的義務、と説明する。
今回の答申でも県立各病院の地域における役割を維持することを基本方針として打ち出している。さらに離島住民が最も不安を抱える医師不足にも取り組むよう求めた。
それでも公的医療が法人へ移行することに対する懸念は根強い。産婦人科や小児科の医師不足が深刻化し、医療への安心が揺らいでいる中での独法化だからだ。
県立病院の累積赤字は200億円超。昨年度だけで医業収支34億円の欠損を計上した。「瀕死の状態」である県立病院の経営効率化が独法化の目的である以上、不採算部門の医療サービスが低下するのでは、という不安が広がるのも当然だろう。
小泉純一郎元首相による行政改革により“効率化”というフレーズに「切り捨て」という響きを国民は感じ取るようになっている。特に医療福祉分野では後期高齢者医療制度をはじめとした国民負担の増加、医療報酬のマイナス改定、研修医の都市集中を招いた新研修制度など、公的病院の経営は厳しさを増している。
住民は「行革」に不信感を抱いている。
独法化によって地域医療が切り捨てられるのでは、という懸念に対し、仲井真知事は「いま取り組まなければ(県立病院は)危ないのです」と危機感をあらわにする。
県立病院の「あり方」について県民が危機意識を共有できるほど、県の情報発信が十分かどうかに疑問が残る。
答申が示されたいま、独法化によるメリット、デメリットについて論点整理をして、県民の不安をなくす説明責任を県は負う。県議会も集中審議を行い、分かる論議にするよう努めてほしい。
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