医学教育の国際比較、医師養成でヒアリング―文科省検討会
文部科学省は3月23日、「医学教育カリキュラム検討会」(座長=荒川正昭新潟県健康づくり・スポーツ医科学センター長)の第5回会合を開き、「諸外国との医学教育の比較」「診療科などの医療を担う医師の養成」について、米ハワイ州出身の医師や検討会の委員らからヒアリングを行った。
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米ハワイ州出身で杏林大医学部眼科の岡田アナベルあやめ氏は、米国の医学教育制度の特徴について、「最重視されるのは試験ではなく、コミュニケーションと倫理」などと紹介した。その上で、「医学部に入学した時点で必ずしも医師になるとは限らない(入学時点では決まらない)」医学部制度改革を提案。「4年次の共通試験に加え、面接や推薦状で最後の臨床医学課程に進学する者を選抜することで、勉強や競争、医行為への意識を高める。医学部卒業生がマスコミ、バイオテクノロジー、IT、政府などに就職していくことで、医学や医療への社会的理解が深まるというメリットもある」と述べた。
東京医科歯科大医歯学教育システム研究センターの奈良信雄氏は、米国、ドイツ、オーストラリアの教育制度の特徴を紹介した。独の教育制度の特徴については、▽授業料は私立の1校を除き無料▽春期開始コースと秋期開始コースを併せ持つ医学部もある▽女子学生の比率は約50%▽教養課程は1年目の前期のみ▽学士編入制度や4年制メディカルスクールは導入されていない▽1999年の「ボローニャ宣言」に基づく教育改革が行われ、各大学が工夫したカリキュラムを実施している―などと紹介した。
また、海外の医学教育において、▽少人数チュートリアル教育▽基礎臨床統合カリキュラム▽e-ラーニング▽臨床能力の早期導入▽シミュレーション教育▽参加型臨床実習▽国際交流―などが主流となっていることも指摘した。
名大医学部附属病院総合診療部の伴信太郎氏は、「クリニカル・クラークシップ(診療参加型臨床実習)」と題して発表。患者が学生を歓迎する理由について、▽話し相手になってもらえる▽ちょっとした医療の相談ができる▽付き添いや手伝いをしてもらえる―などを挙げた。一方、患者が学生を敬遠する理由としては、▽態度の悪い学生への不快感▽病歴を聞かれることへの抵抗感▽学生の診察への抵抗感―などを挙げた。
その上で、クリニカル・クラークシップを実施する上での注意点として、▽1人の学生が1人の患者の受け持ちとなる▽若い女性患者は原則として女子学生が受け持つ▽医療面接の身体診察に時間を取り過ぎない▽既にカルテにある情報はカルテから得る▽面談の際、プライバシーに配慮する▽主治医のつもりで診察する▽訪室は患者と相談して時間を決める▽実習終了時や廊下でのあいさつを徹底▽できるだけ聞き役に徹する▽1日1回はベッドサイドにゆっくり座って話をする機会をつくる▽コンサルテーション、検査、リハビリなどには必ず付き添う▽未決定の方針については述べない―などを挙げた。
更新:2009/03/23 20:33 キャリアブレイン
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