成田国際空港に到着したフェデラル・エクスプレス(フェデックス)の貨物便(MD11型機、乗員2人)が着陸に失敗し炎上、乗員全員が死亡した事故で、国土交通省の運輸安全委員会は23日午後、フライトレコーダーとボイスレコーダーを回収した。交信記録を解析し、事故当時の気象状況との関連を調べる。成田国際空港会社(NAA)によると、閉鎖されているA滑走路は24日午前中に運用が再開される見通し。
国交省によると、貨物の中には引火性の液体約400キロが含まれていた。機体が激しく炎上したのは、この積み荷の影響も考えられるという。
成田空港は事故で、暫定平行滑走路(B滑走路)のみの運用となったため、ダイヤは終日混乱。午後11時現在、出発便56便、到着便60便の計116便が運休した。また、到着便のうち計50便が、新千歳(14便)▽羽田(12便)▽中部(11便)▽関西(10便)▽横田基地(2便)▽仙台(1便)--に目的地を変更した。
この影響で、23日夜は成田空港内に約600人が宿泊。NAAが寝袋、ミネラルウオーター、クラッカーを配布した。【駒木智一】
着陸失敗事故は、「ウインドシア」と呼ばれる気象現象が影響したとの見方がある一方で、操縦の問題を指摘する声も出ている。
ウインドシアは、風の強さや方向が急激に変化する気象現象。事故2分前の23日午前6時46分、成田空港では平均毎秒13メートル、最大同20メートルの北西の強風が観測されており、高度600メートル以下で、向かい風が秒速約7メートル増減するウインドシア情報が先着機から管制を通じ事故機などに伝えられていた。
ボーイング767の機長は、ウインドシアが起きた場合について「向かい風が急に弱まれば、揚力が落ちて降下したり、横風になれば姿勢が変わるといった悪影響を受ける」と話す。「ダウンドラフト」と呼ばれる下向きの突風も危険で「操縦不能に陥るような風の変化があったかどうかがポイント」と話す。
一方、MD11の前身で構造が似たDC10の操縦経験がある別の機長は、事故時の映像から「急激に機首が下がった印象を受ける」と指摘する。
MD11は通常、機首を約5度上げた飛行姿勢で両翼下の主脚から着陸し、ゆっくりと前脚を接地させる。事故機は着陸前から機首が下がり気味に見え、前脚の接地も激しかったように感じたという。「無理に着地すれば機体を損傷する恐れがある。やり直しを念頭に操縦することが大事」と指摘する。【窪田弘由記】
毎日新聞 2009年3月24日 東京朝刊