「機能が不十分―」。昭和伊南総合病院の救命救急センターについて、県救急医療機能評価委員会が昨年9月、こう断を下し、県に報告した。1979年に県内初の指定を受けた同センター。2006年に30床から10床に規模を縮小したばかりという思いもあり、地元はこれに敏感に反応。伊南四市町村の首長、議会議長らはセンターを存続させるため、医師確保などの支援を県に要望した。
経営改革プランでは、救急患者を24時間受け入れる救急医療体制について「今後も堅持」と明記している。センターについては産婦人科医、整形外科医の不在などで「高度な3次救急医療を担うには困難な状況」としながらも、存続は「住民の願い」と強調。今後の在り方を検討する組織の設置を県に求めている。
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センターの維持は、経営面では診療報酬の上乗せなどの利点がある。指定返上になれば職員の士気低下につながるとの懸念がある。半面、現在の病院にとってセンターを抱えることは「精神的な負担が大きい」ことも事実だ。
地域住民の安心と昭和伊南を守るため、センターの今後はどうあるべきか。
伊南4市町村長は16日、改革プランに沿ってセンターの在り方を含む上伊那公立3病院の機能分担を協議する場を設けることを県に要望し、板倉敏和副知事から前向きな姿勢を引き出した。
これに対し、伊那市の小坂樫男市長は「県が調整役になる場の設置はいいこと。3病院の院長と首長が直接入って議論を進めた方がいい」と歓迎。辰野町の矢ヶ崎克彦町長は「辰野病院は移転新築という独自の課題を抱えている。医局と相談しながら対応を考えたい」との意向だ。
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改革プランは現在の常勤医師数を確保できることが前提であり、このため医師確保が実効性のカギを握る。医師の増減次第で改革は前進し、後退もする。こうした事態を踏まえ、医師の負担を減らす環境づくりの取り組みが始まった。地元医師会は昨年8月から昭和伊南の夜間1次救急診療に協力。「安心して安全な出産ができる環境を考える会」は、掛かり付け医を持つことを提唱するカードをつくり、住民に配布している。
職員の意識変革も欠かせない。改革プランの策定に向けて、職員が各部署から数人ずつ参加したワーキングチームでは経費削減策などを出し合い、すでに実行に移しているアイデアもあるという。
助産師、看護師が対応する「産褥入院」「赤ちゃん相談」は、お産の取り扱いを休止している現状であるにもかかわらず、自分たちで出来る子育て支援としてスタートさせた。昨年10月には職員有志が企画し、病院祭「ほほえみ祭」を初めて開いた。病院を開放し地域の人たちと交流したい―との願いが背景にあった。
昭和伊南を知ってもらう取り組みは始まったばかりだ。