子育てしながら働く女性のための制度は充実してきているようですが、それらを利用して働き続けられる人はまだまだ少数派だと感じます。多くの女性は子供と引き換えに生涯賃金の多くを失います。幸いにして働き続けられる職場だったとしても、「家族に迷惑をかけない」ように家事の手抜きは許されないとの圧力と格闘しなくてはなりません。そして、子供の成長に伴うあらゆる場面でのトラブルに対して、「親の顔が見たい」とのプレッシャーにさらされます。
とはいえ、何を犠牲にしても子供のためと思えば、親は無理を厭いません。限られた可処分所得の中から教育費をねん出し、子供がちゃんと職業を得て経済的に困らない人生を送ってくれることを願います。
ところが、現実は厳しく、若年者の正規雇用への道は極端に狭まっています。全年齢で見ると1997年に3812万人いた正規雇用者は、2008年には3371万人と441万人減少しています。しかも15歳から24歳の非在学者に限定すると、481万人から264万人と217万人の減少で、ピークだった1994年の583万人からは319万人も減っています(総務省統計局労働力調査より)。では、正規雇用の狭き門をくぐればハッピーかと言えば、低処遇の正規雇用者の急増という今日的問題もあります。
教育の公費負担は国益につながるはず
国は少子化対策に頭を悩ませているようですが、子供の教育を親の責任に押しつけている限り、子供が増えるはずはありません。まして、せっかく育てた子供が社会から大切にされないと思えばなおさらです。
海外で教育費や職業訓練などを公費で負担しているのは、親切だからではなく、それが国益になると判断しているからでしょう。親の経済力にかかわらず、平等に教育を受ける機会が与えられ、能力に応じてさらなる高等教育へのアクセスが確保されることは、国全体の基礎力を底上げすることにつながるはずです。
社会全体で子供を育てる政策を実現し、「子供の教育費は親の責任」からの転換を望みます。