小沢の強弁で臨終!民主党執行部
「衆院の総選挙が取りざたされている時期において、このような今までやられたことのなかったような異例の捜査が行われたことに関して、私は非常に政治的にも法律的にも不公正な国家権力、検察権力の行使だというふうな感じを持っております」
これは、自身の公設第一秘書逮捕を受けての小沢一郎民主党代表の記者会見における検察に対する批判、反論の一部です。で、民主党執行部もこれに同調、小沢氏を全面的に擁護しました。
私の感想は、「小沢氏の強弁、これで終わったな、小沢も現民主党執行部も」というものです。東京都の石原慎太郎知事が5日、報道陣の取材に応じて「(小沢代表が)検察の国策捜査、検察ファッショみたいな言い方をしているが、検察だってプライドがある。公判維持できないものをやるわけがない」と述べましたが、そのとおりでしょう。
日本の検察は、時の政権の意向を受けて動いたりしません(戦前やGHQが支配していた時代を除いて)。これは、戦後の検察の動きを見ていれば誰にでも分かることです。検察は司法の一部であり、立法・司法・行政の三権が分立した民主主義国家においてはそんなことはあってはならないし、またありえないことです。
日本の検察は、1954年に摘発された造船疑獄では、当時の与党・自由党幹事長であった佐藤榮作氏(後の自民党総裁・第61~63代内閣総理大臣)を収賄容疑により逮捕する方針を決定しました。この時、吉田内閣は法務大臣による指揮権発動により、この最悪の事態を逃れましたが、結果は吉田内閣の総辞職につながりました。
この事件以来、時の政権は、検察に対する介入を疑われるような言動を忌避するようになり、検察も政治家がらみの立件には慎重の上にも慎重を期するようになったと言われています。つまり、政治(行政)が検察(司法)に干渉することはタブーになったのです。
確かに、当時の田中角栄前首相逮捕にまで至ったロッキード事件には、うかがい知れない国際政治の闇のようなものを背後に感じます。が、検察が立件し、起訴した事実は疑いなくあったし、当時の検察には、そんな検察の意図や思惑を超えた闇など眼中になかったと思います。
ただ、警察には時の政権(権力)の意図が反映されます。これは、警察は司法ではなく行政の一部だからです。皆さんは「警察と検察は一体」と思われているかもしれませんが、本質的には違うんですよね、両者の利害は。
ただ、現体制(民主主義)を守るという根底では両者は同じです。それは、1986年に発覚した神奈川県警の共産党幹部宅(違法)盗聴事件に如実に示されています。検察は、神奈川県警本部長の辞任と引き換えにこの事件をもみ消しました。この事件をきっかけにして「検察も警察には勝てない」という批判が起こりましたが、この件は、また別の機会に言及したいと思います。
私は、今回の小沢氏の強弁を聞いて、鈴木宗男氏を思い出しますね。鈴木氏も「私ほど政治資金に透明性を確保している政治家はいない。すべて政治資金収支報告書に記載している」と事あるごとに強調していました。で、あるジャーナリスト(名前は忘れました)が、「政治資金収支報告書に記載していることと、その内容に違法性があることは別問題。献金に違法性があれば犯罪になる」と指摘していました。
結局、鈴木氏は斡旋収賄罪で起訴され有罪判決を受けました。私は納得しましたね、この時の検察の動き。当時の経世会(旧田中派・竹下派)の核であった野中(広務)-鈴木ラインは、いずれ摘発されるであろうと私は確信していましたから。
この鈴木氏逮捕にも「国策捜査」という批判がありましたが、起訴状や判決文の内容を読めば、それは当たりません。確かに、当時、政官業の癒着を糾弾し、「自民党をぶっこわす!」と公言していた小泉政権の存在は検察にとって心強かったでしょう。が、検察が小泉政権の意向を受けて動いたわけではありません(なお、佐藤優氏はトバッチリを受けたと思っています)。
この時の検察の動きは、食肉利権、と言うより「最大の同和利権=同和の闇」とも言うべきハンナンの摘発や日本歯科医師連盟による裏献金の摘発にまで発展し、抵抗勢力の親玉・野中広務氏の政界引退につながります。これも、小泉政権の存在が大きかったと思いますが、しかし、小泉政権が野中氏を追い落とすために画策したわけではありません。
まあ、現場の検事はともかく、検察幹部や法務官僚が、時の政権の「空気」を読むことはあるでしょう(と言うより「ある」)。が、いくら動きたくても事件性がなければ検察も動けません。これが法治国家・日本です。
「政治は数、数はカネ、数とカネが権力の源泉」と公言して憚ることがなかった闇将軍・田中角栄氏を親と慕い、巨額の脱税と「北朝鮮の金の延棒」で失脚した政界のドン・金丸信氏を師と仰いだ小沢氏。
小沢氏が自民党を割り、新生党を結成して政治改革に全力を傾けたのは金丸氏の事件が大きかったと言われています。佐川急便からの巨額の違法献金、指定暴力団・稲川会との癒着、北朝鮮からの金の延棒、まさに政官業のトライアングルでは説明しきれないスケールの金丸事件、これを目の当たりにして小沢氏が改革を目指したのはよく理解できます。
が、結局、細川政権で挫折し冷飯暮らしが続いた小沢氏は「政治は数、数はカネ、数とカネが権力の源泉」という田中角栄、あるいは金丸信譲りの政治哲学に先祖返りしてしまった。そういう点では、野中氏と小沢氏、よく似ていますよ。
理念を語りながら、やってることは権力闘争一辺倒、国政より政局優先。目的のためには手段を選ばない。
こんな政治家が摘発されるのは当たり前。そして、このもっとも自民党的な、しかも旧世紀の自民党を体現している政治家をリーダーに据えなければまとまらない民主党。
民主党の癌は、古い自民党と旧社会党の残滓が同居しているところです。私は、この古い自民党と旧社会党の残滓を一掃できるかどうかに民主党の将来がかかっていると思います。
もちろん、自民党も同じ。西松建設から献金を受けていた政治家は自民党にも多数存在します。この際、自民党も自浄能力を発揮し、変身しないと明日はありません。
やはり、「民主党も自民党もぶっ壊す(ぶっ壊れる)」しかないと思いますね、わが日本国のためには。
なお、「臨終!」を「民主党執行部」にしたのは、これで民主党が沈没し、自民党に追い風が吹くとは思えないからです。小沢氏と現執行部が退陣し、新しい体制に民主党が変身すれば、今の民主党優位は変わらないでしょう。
要は、自民党が変身できるか?ここにかかっていますね、今度の総選挙は!!!
【追記】
東京地検特捜部は、胆沢(いさわ)ダムの関連施設工事に絡んで、小沢氏本人からの参考人聴取を決めたようです。
もう、ほとんどアウト!ですね、小沢さん。
【追記2】
元極左にしては検察に対する評価が甘いと思われるかもしれませんが、警察のデタラメさに比べたら検察は公正、と言うか客観的、あくまでも起訴するに値するか否かです。
おかげで(笑)私は不起訴でした。だって、証拠の写真はすべてでっち上げ、と誰が見ても分かるもの。まあ、当時は一人でも多く活動家を検挙するのが警察の役目でしたから、それも仕方がないかと今は思いますけど。
確かに冤罪も時にはありますが、日本の検察は世界的に見ても公正、中立だと思いますね、あくまでも相対的評価ですが。
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コメント
辞任した後は誰が党首になるのかなー
・・・党首によっては、自民党も変化しないと総選挙では対抗できない、ということですかねー
前原さん再登板、なんてことはないでしょうか
投稿: hide | 2009/03/05 20:00
>不公正な国家権力、検察権力の行使
それは言ったらだめですよね。政府与党だけでなく、国自体を否定するような言葉だと思います。民主党内部からも批判がでていますね。疑問を持っているとしても、もっと言いようがあるんだと思うのですが、生来の口下手というか、政治家に向いてないのかもしれないと、今更ながら思います。
投稿: ゆみこ | 2009/03/05 22:16
偽メールのとき民主党議員には陰謀論を振り回してるのがいました。
旧自民・社会という以前に電波系な人が結構いるんじゃないかというのが心配です。
誰かに(具体的には自民とアメリカでしょうが)攻撃
されているから政権に就けない・法案が通らないと感じているような。
投稿: h | 2009/03/06 02:48
今回のテーマとは違うのですが、麻生叩き、麻生おろし、をマスコミが一斉にやっているというのが、実に不可解なのです。こちらの坂氏もやめろコールをやっておられましたが、麻生氏にどんな政策上の失敗があったのでしょうか?
マスコミは支持率の低さから大衆に迎合しているのでしょうか?テレビのコメンテーターも、麻生叩きに快感を感じているようで気分が悪いです。どうも、マスコミの朝鮮化みたいなものを感じます。ひいては国民の朝鮮化です。
マスコミのインタビュアーの意識というものが、朝鮮化していると感じています。つまり溺れている犬を叩いてよろこぶという感覚です。溺れていなければ、溺れさせて叩くという感覚ですかね。マスコミは最低です。
投稿: 寅吉 | 2009/03/06 09:06
元々政治とは汚いものであり、清廉を求めすぎれば白川公のようになってしまう。この程度のことは「普通」である。また大衆感情と深層の流れは乖離して当然である。
ところでマスコミは洗脳機関であるから、麻生叩き・小沢叩きも高度な政治判断に左右されていると考えるべきである。3月2日までの麻生叩きが3月3日以降の小沢叩きに変化したのは、対外的な事情によるものだ。遠因は北朝鮮に対する日米中包囲網ができたこと(ミサイル迎撃に関するコンセンサスがクリントン歴訪と日中外相会談でできあがったこと)、及び小沢の第七艦隊発言であろう。前原誠司がアメリカ政府からいろいろ注文をつけられていることを考えると(民主党の今の外交政策を反米と見なすというアメリカ政府の発言)、これは反米派の締め出しと政界再編を睨んだ政治ショーである。大衆は「ああ、これなら政界再編でも仕方がない」と納得する簡単なキャッチコピーを求めているからだ(これは日米とも同じ)。
投稿: | 2009/03/07 07:42
麻生叩きから小沢叩きにシフトしたのは結構ですが、そもそもなぜ麻生叩きだったのか不可解です。
高度な政治判断・・・どこがその高度?な政治判断を下したのでしょう?内閣ではないですね?まぁどうでもいいや。
投稿: 寅吉 | 2009/03/07 09:59
ネット検索でひっかかてやってまいりました。
どの記事に引っかかったかというと
2005/08/13付け「米国のための郵政民営化?」です。
貴ブログでは所謂「かんぽの宿」問題にあまり言及されていないようですが、どういったお考えをお持ちでしょうか。
因みに私は、昨今のマスコミによる一方的な麻生バッシング&民主支持には嫌気が指しており、また、常々小沢のスタンスにも甚だ疑念を感じ、小沢の周辺に不透明な金の流れがあり、それが法に反するものであれば当然断罪すべきと考えています。
が、「かんぽの宿」問題の追求が沈静化してしまうのであれば、それこそなんらかの力が働いたのではないかという「陰謀論」ぶりたくもなります。
小沢追求の一方で、郵政民営化の功罪も徹底的に洗い出すべきと考えていますが、貴見はいかがでしょうか。
投稿: 失礼します | 2009/03/07 12:44
検察、特に東京地検の特捜部は、記者に捜査情報をしばしばリークしますよね。ちまたでは、あれは共産党シンパの検事によるものと言われてます。特捜部を正義の味方のように評価するのは疑問ですね。少なくとも、法務大臣の指揮権をまったく形骸化させると、検察権は独立王国化しますよ。夢、夢、油断は出来ないと思います。
投稿: 水瓶 | 2009/03/07 16:48
>要は、自民党が変身できるか?ここにかかっていますね、今度の総選挙は!!!
そのとおりだと共感いたします。
もっとも私には、麻生首相は、特に経済問題に対して、実に良く手腕を発揮しているように思えますが、管理人さんはおそらく私が入手できないような情報を知っているのだろうと推察いたします。
投稿: 縄文人 | 2009/03/07 18:45
民主党から古い自民党と社会党の体質を除去したら,何が残るんでしょうか?私には良く理解できないのですが.多分,空になるんでは・・・
民主党幹部一同が小沢代表と運命を共にすると公言しているので,今回の[小沢収賄事件]で民主党はほぼ終わりでしょう.マスコミも相当の打撃を受けるのではないか.だたし,そう簡単には降参せず,餃子事件の中国政府みたいに,詭弁と騙しと嘘を繰り返すのではないか.
投稿: | 2009/03/07 20:18
マスコミの報道姿勢にある種のイデオロギーがあるのは承知しているが、あたかも全ての報道が政治判断によるものとの考えには同意できない。
どこかの共産主義国家じゃあるまいし、情報統制がそこまでできるなら、近隣諸国にここまでつけ入る隙など与えてはいまい。
陰謀論も結構だが、もう少し物事を単純に見たほうがより真実に近いと思う。
陰謀を計画して、その通りに物事が動くと考える方が、思考停止という意味では単純かもしれないが。
投稿: 彰 | 2009/03/07 21:40
自民・民主 空中分解
自民・民主 崩壊
小沢逮捕!!!!!!
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投稿: あかまる | 2009/03/07 21:53
田中逮捕のときは、ときの三木首相が、『事前に報告を受けていた、逮捕するもしないも、どちらでも決断できた』、のは常識ではないでしょうか。今回も、麻生首相には、事前の報告があっただろうとおもいます。
小沢氏的なものに、ほとんど憎しみを感じて
いらっしゃるブログ主の考えは、長くこのブログを
読ませていただいていると、理解できなくはないのですが、
できれば、感情を叩き付ける文章ではなく、今おこっている
権力闘争の姿について、あっ、とおもうような分析を
読みたいとおもいます。できれば、かんぽの宿関係の権力
闘争まで含めて。
また、検察が、その時点での権力にはおもねらないが、
日本の体制維持には気を使っている、という分析は、
「この件は、また別の機会に言及したいと思います」
ではなく、ぜひ、今回書いて、それと、今の小沢への攻撃との結びつきがあるのかないのか、といったあたりまで
分析を読ませていただければなあ、とおもいます。
最後になりましたが、いつも、鋭い分析を読ませていただき
感謝しています。お仕事に差し支えない範囲で、ブログ
を更新していただくことを、心待ちにしています。
投稿: おひるねずき | 2009/03/07 23:03
どうも小沢さんは、今の検察をおおかた戦前の特攻警察のようなイメージで捉えているみたいですねぇ。
しかし国家権力というもは、国民を統治・操作する時の政権(政党・軍・世襲的支配者)であり、検察・警察というものはあくまで国家権力の企図を達成するための実行機関にしかすぎないということ。
このことが分かっておられない。
つまり本当に批判すべきは『時の政権』自民党だろう!?。なんでここに文句いわへんねん?。国家権力うんぬんかんぬん言うなら、悪いのは自民党やんけ。
ここに対して声高くして文句を言えない所に、全ての真実があるように思えてならないのですが・・。
投稿: ペダ | 2009/03/08 01:46
小沢氏の悪あがきは見苦しいの一言に尽きますね。
そもそも昨年の夏、西松建設の元幹部等が一斉に逮捕・立件された時点で、今日の小沢氏の運命は決まっていたようなものです。背任や横領の問題は別にして、贈収賄・政治資金規制法絡みの犯罪は、一般に必要的共犯と言われ、贈賄側が立件されたのに収賄側が無傷ということはあり得ません。その場合、金丸利権を引き継いだ小沢氏がその筆頭であるのは自明のことでしょう。
だから、小沢氏は保身のため必死になって政権に擦り寄ろうとしたり(大連立)、マスコミとグルになって麻生政権を叩き、早期解散・総選挙を煽っていたのかもしれませんねw 金丸・小沢・北朝鮮・パチンコ業界・テレビ業界(その他マスゴミ)などとお遊びで繋いでみると、別の陰謀論が見えてくるようですwww
麻生政権及び自民党は当然このことを予見していたでしょう。昨年の10月の段階で、総選挙に絡めてすでに民主党の汚職の問題に言及していましたから。
そして、少し時間をおいて、(今回の小泉氏の影響力低下を受けて)次は“小泉・竹中斬り”かも知れません。「かんぽの宿」の問題が鳩山総務相から提起されたことは、軽くは無いでしょう。
まぁ、与える印象は、陰と陽でまるで真逆ですが、小沢氏も小泉氏も政策が無く政局のみの政治家である点は良く似ていますw
投稿: frb | 2009/03/08 15:11
小沢というひとは、思った以上に頭が悪い人でしたね
2、3日前、記者会見で、陳謝のあと、「民主主義を確立するために政権交代を追求している」という趣旨を強調して、TVで報じられましたね。
「金を集めたのは政権交代のため」という言い訳に聞こえました
こんな考えの政治家が、政権をとったら、権力維持のために
同様のゴロツキまがいの手練手管で金をあつめ、一層の買収や強制脅迫を重ねることは明らか
どこかの独裁権力と同じように
国民はそのように受け取る、ということを思うだけの能力がないのだと思いました
投稿: SS | 2009/03/16 14:52