世界最大級のアニメ展示会「東京国際アニメフェア2009」が18~21日、東京ビッグサイトで開かれ、入場者数は過去最高の約13万人を集めた。展示会からかいま見えた今後を探った。【河村成浩】
一般公開日の20、21日には、最新映像の披露や声優のイベント目当てに来場者が殺到、「来場者の滞留時間も増えており、前回よりも確実に盛り上がっている」(実行委員会事務局)と言う通り、過去最高の入場者数を更新した。イベント自体は盛り上がったが、大手9社が「メーカー横断新作アニメガイド」を配布し、メーカーの“壁”を越えたようにアニメ会社は危機感を持っている。
その理由は、DVD販売の伸び悩みにある。テレビアニメのビジネスモデルは、テレビ放送によって幅広い人に視聴してもらい、DVDやグッズで収益を上げている。だが近年はDVDとブルーレイディスクの1巻あたりで10万本売れる大ヒット作が出る一方で、ファンの目に止まらなかったDVDは1巻あたり数千本で終わる「格差社会」構造になっている。
近年は趣味が多様化したことから、全体的に視聴率が下がる傾向にあるが、アニメも同様だ。フジテレビの深夜枠「ノイタミナ」のように「女性でも楽しめるアニメ」というコンセプトを打ち出して成功している事例もあるが、平日のゴールデン枠からアニメ番組はなくなりつつある。
「各社が競ってアニメ作品を出しすぎて埋没したのかも」(大手アニメ会社社員)という反省から、多くの会社は昨年から、制作する作品数をしぼる方向で調整している。08年の春には1週間あたり約100本の作品が放送されていたが、09年は3割減になる見通しだ。
そんな中、アニメに対する地方の期待は高い。今回は、宮城県と経済産業省東北経済産業局が共同出展し、中国経済産業局もブースを構えるなど、地方からの参加がさらに進んだ。その成功モデルとして注目されているのが、一昨年からアニメ「らき☆すた」を使った町おこしで話題となっている埼玉県鷲宮町だ。宮城県などが手掛けた「東北」ブースでは、「戦国武将」にふんしたコスプレーヤーがブースをアピール。ゲーム「戦国BASARA」のキャラクターをデザインした地ビールの缶ビールを置くなどしていた。
宮城県白石市では、ゲームで片倉景綱を知った若い女性観光客が急増しており、同県七ケ浜町では、アニメ「かんなぎ」のモデルの神社となった鼻節神社にアニメファンが訪れているという。「アニメのコンテンツ発信力は高い。いずれは地元にアニメ会社が出来て、そこからコンテンツが制作できれば、地域活性化にもなり理想的」(宮城県企画部)と話している。近年は携帯電話やインターネットなどテレビ以外の配信も可能なのも追い風だ。
ただ、町おこしの象徴である「らき☆すた」は、原作がマンガで、地方が自主的にコンテンツを制作したわけでない。地方自治体が狙う「地元でもアニメ制作・コンテンツ配信」のためには、地元のアニメ制作会社の存在が不可欠だが、現在は東京にほぼ一極集中している。長編のアニメ制作は、費用も手間もかかる。地方で制作するためには、資金も技術も人も支援が必要で、まだ課題は多そうだ。
2009年3月23日