きょうの社説 2009年3月23日

◎コンベンション誘致 「学」の積極協力も欠かせない
 県がコンベンション誘致推進計画に盛り込む方針を固めた「二〇一四年度に参加者数十 一万五千人」という数値目標を達成するためには、「産」「官」に加えて「学」との連携も欠かせない。特に大学など高等教育機関に期待したいのは、言うまでもなく学会誘致活動への協力である。大学などの集積は石川の強みであり、コンベンション誘致でもそれを大いに生かしたいところだ。

 県によると、〇七年度のコンベンション参加者数は約十万二千人で、このうち学会が約 四万八千人を占めている。学会の開催件数を増やすことは目標達成に向けてのポイントの一つと言える。学会情報が集まる大学などが「われ関せず」では、順調な上積みは望めまい。大学なども、頼まれて協力するのではなく、地域貢献の一環として主体的に誘致活動にかかわってもらいたい。

 県や、誘致活動の実働部隊の役割を担っている金沢コンベンションビューローにも、大 学などとより緊密な関係を築く努力をあらためて求めておきたい。誘致推進計画の検討に当たったコンベンション誘致懇話会には大学関係者も参加しており、県は計画策定後も定期的に会合を開催するという。これはこれで一歩前進と言えるものの、懇話会メンバーの大学関係者を単なるアドバイザーと考えているのなら、いささか物足りないと言わざるを得ない。

 競争相手である全国各地のコンベンション誘致推進組織では、地元の大学関係者が役員 として運営に参画しているケースが少なくない。鳥取に至っては、大学の副学長がコンベンションビューローの理事長を務めている。石川も、誘致推進計画の策定を機にそうした体制を見習ってもよいのではないか。

 一度に多くの人が集まり、大きな経済波及効果が期待できるコンベンションの誘致強化 は、北陸新幹線金沢開業を見据えた「二〇一四年」対策の柱の一つであり、その意味では、誘致推進計画の目標はあくまでも通過点に過ぎないのである。産学官がしっかりスクラムを組んで可能な限り早く目標をクリアし、新幹線開業後の飛躍の足がかりにしたい。

◎G7の新しい役割 知的な楽しみへの誘導を
 アメリカを震源地とする金融危機がもたらした世界同時不況は、市場経済先進国の日米 欧の七カ国(G7)だけで解決できないことから、中国やロシアなど新興市場国と欧州連合(EU)も加わった二十カ国・地域(G20)の財務省・中央銀行総裁会議がイギリスで開かれ、取り組みに温度差はあるものの、危機克服へ地球規模での政策協調で合意したことは新しい出来事だった。

 これに伴い、もうG7の時代は終わったなどという極論が出たり、BRICS(ブラジ ル、ロシア、インド、中国)があるさ、と新興国を経済の成長エンジンにする期待論が盛り上がったりしたが、結局、G7に代わり得ないことが分かった。

 逆説めいて聞こえるかもしれないが、今度の世界同時不況で新しい役割が浮かび上がっ てきたように思われる。もちろん経済は大事だが、衣食住の基本的な欲求が満たされれば、人々の関心はモノから音楽、芸術、旅行、スポーツなど広い意味での文化活動に向かう。こうした知的な楽しみは、誘導してやる必要があり、それができるのはG7だけでないのか。

 一九七〇年代、先進国はニクソン・ショック(ドル切り下げ)や第一次石油危機などの 問題に直面した。当時のジスカールデスタン仏大統領の提案で、そうした諸問題に対する政策協調を図る首脳レベルの議論の場として七五年から始まったのがG7だった。日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアの六カ国で始まり、翌年からカナダが参加してG7になった。その後、ロシアの参加でG8となったが、そもそもは民主主義の価値観を共有する日米欧の七カ国の結束だったのだ。

 G7は資本主義の成熟を「武器」に人々の関心を文化へ向かわせるべきだったが、より 金を求めた揚げ句、金融マネジメントをいびつに発達させ、今日の事態を招いた。今は世界不況の克服に総力を挙げねばならないが、G7は自らのとがを償うためにも、広い意味での文化への関心を高めることへ踏み出したい。G7の役割は終わったのでない。