もう、本当、翔ッたら・・・
何がしたいんだろう。
この一週間、何だか翔は落ち着かない様子だった。
何か、元気ないように見えて、割と元気だったり。
何か、おかしい。
どうしちゃったんだろう、そわそわして・・・
カフェではちゃんとやってくれるのに、
あんまり喋ってくれないし・・・
何かあったんだろうか。
何だか訳分からない。
時たま悲しそうな表情を見せる翔。
「ちょっと!もうすぐダンスイベントなのに、練習はうまく行ってるの?!どうなの?頑張らなくてどうするのよ!・・・」
そう言っても、何だか覇気がない。
様子がおかしいよ。どう見ても。
何か決め込んでるの?
もう、やだ!!!
私は、ただ、悔しくて・・・・
翔はそんな私を見ても、何もしようとしない。
何が起きているのか、私には想像がつかなかった。
そして、怒涛の準備期間を経て、
いよいよクリスマスイブ。・・・
真っ白い雪がまだ、道端に残ってる。
今日は特別に、お休みをもらい、美容院に行き、髪形を縦ロールにしてもらい、
パーティー仕様にしてもらう。
そして、生まれてこの方着たこともないような
綺麗めな色のカクテルドレスを・・・
奮発して買った甲斐があったってもの。
そしてストールは、大人っぽい黒。
そりゃ、おめでたい日だもの。
今日のために、買ったんだもの。
私は今日は、久々のお客さん。
翔には、分からないように、差し入れをもっとおめかしして。
大サービス。
「瞳ちゃん、とっても綺麗よ。好きな人でもいるの?
今日のパーティー楽しんでね。
素敵な思い出ができるといいね。」
お店の人も、快く見送ってくれた。
専門学校に通い始めた当時から利用している美容室。
いつまでかな、ここにいられるのも。
私も、心に決めてたことがある。
そして、久々のシンデレラタイム。
街のネオンが、いつもよりもまぶしく光り輝いてた。
そう、ツリーがいっぱい飾ってあった。
どのお店も、おめかしして。
翔の店も、素敵。
いつもより、ドレスアップしてて、幻想的だった。
・・・・だけど、私が来るの分かっているはずなのに、翔が・・・
いない。
こないだ行ったときは、接客してくれてたのに。・・・
もう、顔も見せてくれないの?
あんなに元気だった翔。
もう、私はお客さんじゃないの?
お店の中は、笑顔で溢れているのに。
周りの皆も、ドレスアップ。
翔・・・・
私は、寂しくて、泣きそうだった。
でも、店員に声をかけることもできず、あのカクテルをオーダー。
そっか、翔は遠いところに行っちゃったんだ。
一緒にお店を手伝ってくれたのが、嘘みたい。
やっぱり、夢の中だったんだ。
私は勇気を出して、なきそうになりながら、
「翔さん来たら、これ渡してください。」
そう言ったのに、
「翔さん?・・・翔さんにだったら、ご自身でお渡しください。」
え・・・どういうこと?
もうわけが分からない。こないだからおかしいよ。
今日、イベントに出るって話してたよね?
あ、瑠美さんだ。
瑠美さんしか、いないの?
「あ、瞳ちゃん、いらっしゃい。今日は、楽しもうねっ♪」
瑠美さんは、いつものように明るい。
何か、知ってるのかな?
瑠美さんは素敵な衣装に身を包んでた。
「今日は私が接客するっ♪」
瑠美さんはるんるんだ。
「はい!ありがとうございます」
私は早速瑠美さんへのプレゼントを渡した。
瑠美さんは、早速開けてくれたよ。
もう、泣いて喜んでくれたんだ。
抱きしめてくれた。
もう、遠い存在だったはずの瑠美さんが、
いつの間にか、こんなに近くに来てくれた。
「ありがとうね。瞳ちゃん。
瞳ちゃんに逢えてよかった。
ごめんね。
本当に、翔のこと、御免ね。
翔と、仲良くね。
本当に、ありがとう。
私ね、今日、新しい彼氏連れてきたんだ。
近々結婚予定なの。」
ええええ!!!!
瑠美さんに、本当に彼氏さんいたんだ!!
逢わせてくれたんだけど、
翔にちょっと似てる。
でもダンサーじゃないんだって。
本当に、大人しそうな、・・・
普通の人だった。
でも、瑠美さんにはこういう人がよかったんだよ。
おめでとう・・・・・・・
素敵・・・・
二人に目を奪われてる間に、
ダンスイベントが始まった。
まず最初に、瑠美のダンス。
初めて見せてもらったけれど、すごくパワフルで・・・肉感的で・・・
こう、メヒョウ見たいな。
やっぱりセクシーだなぁ。
はじめて瑠美さんにお会いした時の印象も凄かったけど、今は本当に、、、素敵。
やっぱ、こうじゃなきゃ・・・
とても、輝いてるよ。
瑠美さんは、このイベントに本当に命をかけていたんだってことが、凄くよく伝わってきた。
私は、涙が止まらなくなった。
瑠美さんまで、また遠い・・・・
そして、・・・・・・・・・・・
本当に、翔とのジョイント!!
翔は、もっとあの頃より、迫力を増していた。
・・・私は、もう、胸が苦しくて苦しくて、そばにかけよってしまった。
「翔!!!」
もう、見向きもしない。
あの時とは、別人だった。
私は又、涙が止まらなくなった。
翔は今、無我夢中で・・・
たくさんのファンの喝采を浴びて。
もう、私の中の翔はいない。
そんな気がした・・・・・・・
翔は、ソロで3曲踊ってくれた。
汗をたぎらせながら。
グループでは、もう踊ることがなかった。
でも、・・・不思議なことに、瑠美さんが、チームに入ってた。
「今日から、このチームのメンバーにならせてもらいました、瑠美です。
よろしくお願いします」
瑠美さんが正式メンバー?
そうか、今日は正式メンバーの発表会だったんだ。
・・・って、翔は?
「今まで翔は、このチームのリーダーとして引っ張ってきてくれました。
今日で翔は、このチームから引退することになりました。
翔がいなかったら、私は、ここまでこれなかった。
翔と本当は闘いたかった。
だけど、翔は言ってくれました。
俺はもっと、やりたいことがある。
だから、これからはお前が、
チームのリーダーを引き継いでいってくれ
って・・・」
瑠美さんは、涙声で。
「翔、ありがとう!!」
瑠美さんは、また、翔とひしと抱きしめあって・・・
私は、
「瑠美さんおめでとう!!
翔、今までお疲れ様!!!」
と叫ぶことができました。
「そして今、大声で叫んでくれたのが、
私の大事な親友、瞳ちゃんです。
この子は本当に、大切なものを私たちの胸に宿してくれる存在です。
この子がいなかったら、私たちは育ちませんでした。
瞳ちゃん、ありがとう、どうぞこちらへ」
って言って瑠美さんは私を初めて、翔の許可を得て、
ステージに上げてくれたの。
「聞いてますよ。瞳ちゃんは、翔にとって、
初めてのお客様って事を。
本当に素敵なお客様をゲットしましたねー翔?
おめでとう。
そして、翔はここ引退後、
瞳ちゃんが働いている素敵なカフェで、
副マスターとして働くことが決まりました。
そして、瞳ちゃんは、
フロアリーダーだったんですけど、
昇格が決まったそうです。
瞳ちゃんの口から、発表してください」
「私は、今まで翔と一緒に接客をやってきたんですけど、
翔は、副マスターとしての昇格が決まり、
私は、副店長として、働くことになりました。
いつか、自分の店を持つつもりでいる私には
とても嬉しいことです。
それと同時に、
今までダンサーだった翔が、
突然カフェの副マスターだなんて信じられませんよね?
私も信じられませんでした。
だけど、これは本当の本当のお話なんです・・・
私たち、頑張っていくので、よかったら
お店にいつでも遊びに来てください。」
もう、涙が止まらない。
こんな挨拶でよかったんだろうか。
「瞳、ありがとう。
ずっと待ってたよ。
本当に、ありがとう。
きてくれて・・・感謝してます。
今日は、俺から言いたいことがあります。
どうしても、言いたかった。
本当は、2人きりだったらよかったけど・・・・
せっかくだから・・・・
瞳、・・・・・・
これからも、一緒にいてください。
ずっとそばにいてください。
。。。」
翔がマイクを通して・・・私に・・・・・・
私は、震える声で・・・・・
「わ・・・・私も・・・・・好きです。
翔が、大好きです。
ずっとずっと、そばにいてください。
これからもずっとずっと、一緒にいてください」
告白が終わると、翔は、涙を流して抱きしめてくれた。
「おめでとう!!」
瑠美さんが、泣きながら、お祝いしてくれた。
「瞳ちゃん、ありがとう。私も幸せです。」
そしていよいよディナータイム。
翔と、私と、瑠美さんと、瑠美さんの彼氏さんと。
久々に笑った気がする。
「瞳ちゃん、とっても素敵よ。今日は主役みたい。」
瑠美さんは、本当にお世辞が上手。
変わってなくて、よかったと思った。
本当は、もっと翔にダンサーを続けてほしかった・・・
「何か特別なイベントの時は、戻ってくること約束してるから」
よかった・・・・
今日はクリスマスイブ。
特別料理が、特別おいしく感じた。
一時は、本当に危ないと感じたこと。
この2〜3ヶ月で、
周りが急激に変化した。
知らないで入ったお店が、
ショーパブで、
知らない男の子が人懐っこく
接客してくれたこと。
その男の子は
ダンスチームのリーダーで、
今では私のかけがえのないパートナー。
信じられない夢物語のよう。
きっといつかまた、
この夢物語の続きを
みんなに話せるときが来るまで
ちょっとの間、
お別れです。
皆さん、ありがとう。
きっと私、瞳は、翔と幸せになるからね。
瑠美さん、ありがとう。
そして皆さんに出会えてとても幸せです。
ずっと、見守っていてくださいね。
あ、ちゃんと翔にはプレゼントと差し入れ渡せましたよ
ご心配ありがとうございました。
瞳。
Merry X'mas to you・・・
【end】