- ハイエンド向けのインテル「Core i7」が満を持して登場
- 「Phenom II」で巻き返しを図るAMD
- 売れ筋は、高コストパフォーマンスなクアッドコアCPU
自作パソコン市場のトレンドのほか、CPUやマザーボード、ビデオカードといった主要なPCパーツの最新情報をくわしくご紹介します。Q&A形式によるワンポイント解説付き!
自作パソコンのメリットが、「安く済む」「自分の思い通りのパソコンを作れる」の2点であることは、従来とまったく変わらない。ただ、今の自作パソコンが面白いのは、「自分の思い通りのパソコンを作れる」パターンが、ひと世代前と比べて拡大していることにある。その理由は、CPUやマザーボード、ビデオカードなどの品質が向上し、種類・製品数が増えたうえに、メモリー・HDDの価格低下も重なって、選べるパーツの選択肢が大きく増えているからだ。
具体的には、インテルの最新CPU「Core i7」シリーズを搭載したハイエンドマシンや、「Core 2 Quad」「Core 2 Duo」、AMDの「Phenom II」シリーズなど、定評のあるCPUを使用した高コストパフォーマンスマシン、省電力CPU「Atom」を使った超小型マシン、Blu-ray Discドライブを搭載したエンターテインメントマシンなど、幅広いパターンからユーザーのニーズと予算に合わせたパソコンを作ることができる。とにかく、今の自作パソコンは、非常に“面白い”。ここでは、各パーツの最新トレンドと売れ筋製品を紹介するので、あらためて自作パソコンの面白さ・奥深さを知ってもらいたい。なお、本ページは、前回の自作パソコン特集(2008年8月公開)のトレンド紹介ページをベースにして、新しい情報を掲載している。前回の特集ページも確認いただければ、2008年からの傾向の変化をつかむことができるはずだ。あわせて、チェックしていただきたい。
ご存知のように、CPU市場は、インテルとAMDの2大ライバルメーカーがしのぎを削っているが、2008年は、性能とコストパフォーマンスのバランスのよさがウリのクアッドコアCPU「Core 2 Quad」シリーズが市場を牽引し、インテルの一人勝ちの状況であった。
そのインテルの最新トピックは、さらなるシェア拡大を目指し、2008年11月に、ハイエンド向けのクアッドコアCPU「Core i7」シリーズを発表したことである。Core i7シリーズは、人気のCore 2 Quadシリーズから内部設計を一新し、4つのコアを1つのダイに載せる「ネイティブクアッドコア」を実現したのが大きな特徴だ。従来のデュアルコアを2基搭載するものと比べて、ワンランク上の性能を実現しており、現段階では、コンシューマー向けCPUではもっとも高性能なシリーズとなる。
また、新型のCPUソケット「LGA1366」を採用したのもCore i7シリーズの見逃せないポイント。機能面では、1コアで2スレッドを可能にする「Hyper-Threading(ハイパースレッディング)」を搭載し、OS上では見かけ上8コアのCPUとして認識することが可能となっている。同じDDR3メモリーを3枚1組で利用することで高いパフォーマンスを発揮する「トリプルチャネルメモリー」に対応するほか、自動オーバークロック機能「Turbo Boost」なども備えており、ゲームユーザーを中心に、ハイエンドユーザーから注目を集めるCPUとなっている。
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製品名 | 価格.com 最安価格 |
製造 プロセス |
クロック 周波数 |
3次 キャッシュ |
TDP |
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Core i7 965 Extreme Edition |
1000円 | 45nm | 3.2GHz | 8MB | 130W |
Core i7 940 | 円 | 45nm | 2.93GHz | 8MB | 130W |
Core i7 920 | 円 | 45nm | 2.66GHz | 8MB | 130W |
一方のAMDは、クアッドコア/トリプルコアCPUの新シリーズ「Phenom II」を2009年1月に発表し、巻き返しを図っている。Phenom IIの特徴は、AMDのデスクトップ用CPUとして初めて45nmプロセス製造ルールを採用したこと。これにより、クロック周波数の向上や消費電力の低減を達成し、クアッドコアCPU「Phenom II X4」シリーズは、性能・消費電力の両面でCore 2 Quadと肩を並べる製品に仕上がった。
スペック面では、Phenom II は、従来のPhenomの3倍となる6MBの3次キャッシュを搭載(モデルによっては4MB)。また、新ソケット「Socket AM3」を採用したのもトピックで、Phenom II は、Socket AM3用モデルと従来のSocket AM2+モデルの2ラインが用意されている。Socket AM3モデルであれば、DDR3メモリーに対応するのも大きな特徴だ。さらに、従来のCPUソケットとの互換性を備え、Socket AM2+用のマザーボードにSocket AM3用のPhenom IIを搭載することができる点も自作ユーザーから高い評価を受けている(ただし、Socket AM3用マザーボードにSocket AM2+のCPUは搭載できない)。
しかも、コストパフォーマンスにすぐれており、3.0GHz駆動の最上位モデル「Phenom II X4 940 Black Edition」でも3万円を切る価格で購入可能だ。コストパフォーマンスの面でも、Core 2 Quadと互角以上の勝負ができるCPUに仕上がっている。
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製品名 | 価格.com 最安価格 |
製造 プロセス |
クロック 周波数 |
3次 キャッシュ |
TDP |
---|---|---|---|---|---|
Phenom II X4 940 Black Edition(AM2+) |
円 | 45nm | 3.0GHz | 6MB | 125W |
Phenom II X4 920(AM2+) | 円 | 45nm | 2.8GHz | 6MB | 125W |
Phenom II X4 810(AM3) | 円 | 45nm | 2.6GHz | 4MB | 95W |
Core i7ってちょっと高い…従来のCPUでも十分では? | |
確かに、ハイエンドユーザー向けのCPUであるCore i7は、高性能で高価な製品となっています。そのため、現在の市場の売れ筋は、クアッドコアCPU「Core 2 Quad」シリーズと「Phenom II」シリーズで、デュアルコアCPU「Core 2 Duo」シリーズもまだまだ現役です。いずれのCPUも、かなり高い性能を備えていますので、コストパフォーマンスを求めるなら、Core 2 Quad/DuoとPhenom IIをターゲットに、その他の下位シリーズの製品などもチェックするとよいでしょう。 |
- Core i7用新チップセット「Intel X58」の登場
- インテル用は「Intel P45」搭載マザーが人気
- AMD用ではグラフィック統合型「AMD 790GX」搭載マザーが人気
ハイエンド向けCPU「Core i7」シリーズの登場にあわせて、インテルから新型チップセット「Intel X58」がリリースされた。マルチグラフィック技術であるATI「CrossFireX」とNVIDIA「SLI」に両対応するなど、Core i7用として非常にハイエンドなチップセットに仕上がっている。
Intel X58は、2009年3月現在、新CPUソケット「LGA1366」を採用する唯一のチップセットとなっており、Core i7シリーズを選択する際は、Intel X58搭載マザーボードを選ぶ必要がある。「Core i7ならIntel X58マザー」と覚えておいてほしい。
売れ筋のCore 2 Quad/Duoシリーズ用として定評があるのが「Intel P45」チップセット搭載マザーボードだ。1万円を切る安価なものから、オーバークロックに対応したハイエンド向けのものまで多様な製品がそろっており、人気を集めている。Core i7を必要とせず、インテル用CPUを選択したいのであれば、ファーストチョイスにしていい。
また、インテルCPU用では、グラフィック統合型チップセットとして「Intel G45」や「NVIDIA GeForce 9400」などが用意されている点も見逃せない。3Dゲームをバリバリ楽しみたい場合は別だが、これらの統合型チップセットでも、ハイビジョン動画を十分に再生可能なグラフィック能力を持っている。より安いコストで自作したいのであれば、グラフィック統合型チップセット搭載のマザーボードを選択し、ビデオカードを省いてコストを抑えるのもアリだ。
AMD用では、グラフィック統合型「AMD 790GX」の人気が高い。統合型としてはかなりグラフィック性能が高く、1万円前後から購入できるコストパフォーマンスの高さもあって、自作ユーザーから人気を集めている。このほか、AMD用としては、ハイエンドな「AMD 790FX」なども用意されている。
今、自作ユーザーに人気が高いのは、キューブ型などの小型PCケースを使った超小型マシンだ。こういった超小型マシンで必須となるのが、Micro ATXもしくはminiITXプラットフォームのコンパクトなマザーボードだ。いずれもATXプラットフォームよりもワンサイズ小さく、インテル用もAMD用も用意されているので、CPUに合わせて製品を選ぶことが可能となっている。
なかでも、話題の省電力CPU「Atom」プロセッサーをオンボードで搭載するMicro ATX/Mini ITXマザーボードに注目だ。Atom搭載マザーは、基本的に、チップセットはグラフィック統合型の「Intel 945GC」となる。映像出力やスロット数などは見劣りするものの、コンパクトで低消費電力かつ静音なマシンを組みたいのであれば、要注目だ。
同じチップセットを採用していてもモデルによって価格差があるけど、どこが違うの? | |
基本的な性能に大きな差はありませんが、機能性や安定性に違いがあります。機能性では、複数のビデオカードを利用して描写性能を向上させるマルチグラフィック技術に対応しなかったり、PCIスロットやメモリースロットの数が少なかったり、HDMI出力がなかったりします。また、安定性の面でも、やはり高価な製品のほうに分があります。とはいえ、さほど細かい性能を追求しないのであれば、極端に高価なものを選択する必要はありません。 |
- ミドルレンジクラスがお買い得
- ハイエンドなデュアルGPUも人気
ビデオカード市場は、AMD「RADEON」シリーズと、NVIDIA「GeForce」シリーズの一騎打ちとなっている。2008年以前は、GeForceシリーズが大きなシェアを獲得していたが、ここにきて、RADEONシリーズが巻き返してきており、シェア争いは、ほぼ五分五分の展開となっている。
今、人気を集めているのは、ミドルレンジの製品で、なかでも、2009年に登場した「RADEON HD 4670」と「RADEON HD 4650」を搭載したビデオカードに注目したい。特に、RADEON HD 4670は、コアクロック/シェーダークロック750MHz、メモリークロック2GHzを実現し、マルチグラフィック技術「CrossFirex X」に対応するなど、ミドルレンジの製品の中では、ワンランク上の仕様となっている。一方のGeForceシリーズでは、「GeForce 9600 GT」がライバル製品となっており、コストパフォーマンスの高さで対抗している。
一方で、高価なビデオカード製品も人気を集めている。具体的には、GPUを2基搭載するデュアルGPU製品で、RADEONシリーズは、「RADEON HD 4870 X2」「RADEON HD 4850 X2」、GeForceシリーズは「GeForce GTX295」というシリーズ最上位クラスの製品がこれにあたる。当然、マルチグラフィック技術に対応し、搭載メモリーの容量などのスペックも群を抜く存在だ。価格は5〜6万円程度となっており、一般的なパソコンユーザーには、ちょっと手の届かない製品であるが、3Dゲームなどを楽しむハイエンドユーザーから注目を集めている。
ハイビジョン動画をキレイに見たいのですが安いビデオカードでも大丈夫? | |
CPUやメモリーなどパソコンの基本性能も重要になりますが、ビデオカードの性能だけでいえば、ローエンドやミドルレンジの製品でも十分にハイビジョン動画を楽しむことができます。価格でいえば、1〜2万円程度のもので問題ないはず。旧型モデルを安く購入するのもいいでしょう。なお、最近のビデオカードはひと世代前と比べて、飛躍的に性能が向上しているので、最新のミドルレンジ製品であれば3Dゲームなども十分に楽しめます。 |
- 全体的に価格が下落傾向
- 新CPUの登場でDDR3が本格普及
メモリー製品の最新トピックは、ずばり価格。今が底値とも言える低価格で、非常に安価に購入することができるのだ。特に、DDR2メモリーの価格下落が著しく、デスクトップ用DDR2メモリー(PC2-6400)の2GB2枚組でも、4,000円を切る価格となっている(価格.com最安価格、2009年3月16日現在)。2008年9月頃は、2GB2枚組で9,000円程度だったことを考えると、約半年で半額以上の価格になったことになる。これは驚きだ。
もうひとつのトピックは、Core i7とPhenom IIという新型CPUの登場により、DDR2の上位規格であるDDR3メモリーの本格的な普及が進んでいること。DDR2メモリーと同様、価格も下がってきており、DDR3メモリー(PC3-10600)の2GB1枚が3,500円を切る価格で購入できる(価格.com最安価格、2009年3月16日現在)。特に、3枚1組でのトリプルチャネルメモリーに対応するCore i7を選択するなら、そのパフォーマンスを最大限に発揮するためにも、積極的にDDR3メモリーを選んでおきたいところだ。最近では、Core i7用に3枚組のDDR3メモリーのパッケージも販売されているので、注目してほしい。
長く使用することを考えるとDDR2ではなくDDR3メモリーを選ぶべき? | |
DDR3メモリーを選ぶ場合は、DDR3の使用に対応したマザーボードを選択する必要があります。2009年3月現在、DDR3対応マザーは1万円を超える製品ばかりですので、「予算が許すならDDR3を選択する」という考えでよいと思います。現状では、DDR2メモリーのほうがお買い得ですので、Core i7以外のCPUを選ぶ場合は、DDR2メモリーで十分だと考えます。 |
- HDD、SSDともに価格が下落傾向
- いよいよSSDが普及開始
メモリーと同様に、HDDも価格が大きく下がっている。特に、通常のデスクトップPCで使用する3.5インチタイプの容量1TBモデルがお買い得で、回転数5400rpmのものであれば7,500〜10,000円程度で購入できる(価格.com最安価格、2009年3月16日現在)。今が底値と見られ、コストパフォーマンス的にも、3.5インチタイプなら容量1TBの製品を選んでおきたい。
また、記憶媒体としては、SSD(Solid State Disc)の本格普及が進んでいるのも見逃せないポイントだ。SSDは、容量的にはまだまだHDDに及ばないが、フラッシュメモリーを採用しているため、アクセス速度が速く、今後、HDDに代わる記録媒体になると目されている。2008年に急速に価格が下落し、売れ筋の32GBモデルが8,000円、64GBモデルが15,000円程度で購入可能(価格.com最安価格、2009年3月16日現在)となり、一般ユーザーにも手が届くところまできた。なお、SSDのフラッシュメモリーには、SLC(Single Level Cell)とMLC(Multi Level Cell)の2種類があり、MLCのほうが若干安く購入できる。
話題のSSDを導入したいけど、まだまだ高くない? | |
確かに、容量で比較すると、HDDに比べてまだまだSSDは高価なパーツです。2009年3月現在では、256GBモデルが6万円以上しますので、写真データや動画データを保存しておく記憶媒体としては、コストパフォーマンスは悪いといえます。今のところSSDは、32GB〜64GBモデルを起動ドライブとして利用し、HDDと併用するのがベターです。 |