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「大麻汚染」報道と公的大麻情報(下)

白坂和彦2008/12/12
 大麻が凶暴性を引き起こすという話は、麻薬取締当局など一部がそう思っているだけに過ぎない。そのことが、元厚労省官僚で現麻薬防止センター専務理事、冨澤正夫氏の説明で明らかになった。筆者の電話取材に対し、冨沢氏は「凶暴性を引き起こす」説の根拠を示すことができなかった。
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 日本の公的大麻情報である『「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ』には、大麻の使用によって、「理由のない自殺企画や、衝動的に他人に乱暴をはたらくなど粗暴な行動が現れる」と書かれている。11月8日に放送されたTBSニュースキャスターで、元麻薬取締官で現麻薬防止センター指導員の浦上厚氏がコメントした、大麻の使用が凶暴性を引き起こすという話は、このホームページの記述に沿ったものだ。

 大麻の使用が凶暴性を引き起こすという見解は、前述したように海外の権威ある研究機関で否定されている。浦上氏がテレビ番組でコメントした内容は、どのような医学的根拠に基づいているのかを確認するため、麻薬防止センターに電話取材を行った。

 電話に対応したのは、一昨年度から専務理事に就任した冨澤正夫氏だった。麻薬防止センターの役員名簿によると、冨澤氏は元厚生労働省大臣官房付で、(財)長寿社会開発センターの前専務理事だという。いわゆる天下りの「渡り」である。麻薬防止センター前専務理事である糸井氏は、冨澤氏と入れ替わりで長寿社会開発センターの専務理事に就任している。

 以下、冨澤氏とのやりとりを録音から書き起こして抜粋する。

 Q 「お忙しいところすみません。私、大麻取締法変革センターの白坂と言いますけれども、先日の土曜日に、そちらで指導員をされている浦上さんという方がテレビにお出になっていまして、大麻が凶暴性を引き起こすとおっしゃっていたんですけれども、その根拠を教えていただきたいと思いまして電話をしたんですけれども」
 冨澤「それは私の方ではお答えできません」

 Q 「それではその指導員の方のご連絡先を教えて頂きたい」
 冨澤「そんなことは、そんな個人情報は無理です」

 Q 「どこかに所属されているわけではないんですか?」
 冨澤「はい」

 Q 「浦上さんとご連絡を取りたいんですけれども」
 冨澤「私どもでは紹介できません」

 Q 「そしたら、そちらの指導員として出ているわけですから、浦上さんがおっしゃっていた大麻が凶暴性を引き起こす危険があるということの根拠を教えて頂きたいんですけれども」
 冨澤「それは私がお答えすることではないと思います」

 Q 「じゃあ、どなたにお答えいただけるんですか?」
 冨澤「お答えする人はいないかもしれませんが、私ではありません」

 Q 「あなたはそちらの責任者でしょう?」
 冨澤「だから?」

 Q 「あなたはそちらの責任者の方ではないんですか?」
 冨澤「そうですよ」

 Q 「そしたら責任者として対応して頂きたいんですけれども」
 冨澤「いや、それはできません」

 Q 「どうしてですか?」
 冨澤「なんで必要があるんですか? あなたは大麻に害がないと主張されてるのかもしれないけれども」

 Q 「私がどう主張してるかということではなくて、事実を確認したいんです」
 冨澤「ですから、あなたが主張しているからでしょ?」

 Q 「私が主張してるかどうかは関係ないでしょう。おっしゃっていることが事実かどうかということです」
 冨澤「それをなぜあなたが当該本人に確認せないかんのですか?」

 Q 「嘘の情報を垂れ流されては困るからです」
 冨澤「嘘だと言うのはあなたのご主張でしょ。あなたの主張がなければ嘘もホントもないわけですよ」

 Q 「私の主張とかかわらず・」
 冨澤「いや、あの方は、あの方の学んできて思ったことをしゃべられたわけでしょ」

 Q 「思ったことを喋っているその根拠を・」
 冨澤「学んでこられたことを喋ってるわけでしょ。それをあなたが主張してるから嘘だとあなたはおっしゃるわけでしょ」

 Q 「いや、嘘だって言ってません。根拠を教えてくださいって言ってるんです」
 冨澤「でも私は紹介できませんから。そういうことを申し上げてるんで」

 Q 「そちらの指導員の方ですよ」
 冨澤「指導員としてはお願いしてますよ。キャラバンカーに乗って子供たちに説明することをお願いしてますよ」

 Q 「そちらで運営されているキャラバンカーに乗って、大麻には凶暴性を引き起こす可能性があるとかっていう教育をしてるわけですよね?」
 冨澤「何かおかしいですか?」

 Q 「それは国民の税金から補助金がそちらに行ってやってる活動ですよね?」
 冨澤「だから、何がおかしいんでしょうか?」

 Q 「おっしゃっていることが事実かどうか確認をしたいと言ってるんです。根拠を教えてくださいと話してるんです」
 冨澤「なぜあなたが聞くと根拠が分かるんですか? それが事実かどうかということをなぜあなたが聞かなければならないんですか? 私はそれには協力できません」

 Q 「どのような根拠でおっしゃっているのか聞いてるんです」
 冨澤「それはあなたが勉強されればいい話でしょ」

 Q 「私が調べた範囲ではないんです・」
 冨澤「それはあなたの主張でしょ」

 Q 「私が・」
 冨澤「いずれにしても私はお答えしませんし、ご紹介はいたしません」

 Q 「じゃあ、言いっぱなしってことですか? 根拠も示さずに。そちらのダメゼッタイホームページだって根拠がないっておっしゃってるんですよ。前任の糸井さんも含めて」
 冨澤「そんなこと言ってませんよ」

 Q 「言ってますよ。録音もありますよ」
 冨澤「それは糸井が申し上げたとすれば糸井の解釈はあるかもしれません」

 Q 「じゃあ、あなたは関係ないってことです?」
 冨澤「はい」

 Q 「後任の方でしょ?」
 冨澤「はい」

 Q 「で、後任のあなたとしては今の情報が正しいと思ってらっしゃるんですか?」
 冨澤「現時点では正しいと思ってますよ」

 Q 「今出ている情報がですか?」
 冨澤「はい」

 Q 「え? 年内には更新するとおっしゃってましたよね?」
 冨澤「更新しますよ。情報についてはすべて見直しましたから。ただそれはあなたのおっしゃる通りに見直したわけではないんで。私はあなたのおっしゃることに従って見直しなんてしませんからね」

 Q 「見せて頂いてからでないと分かりませんけどね。ただ少なくとも今出ているものについては、全然根拠もないと糸井さんもお認めになってるんですよ」
 冨澤「そんなこと知りません」

 Q 「無責任じゃありませんか?あなた元官僚でしょ? 引き継ぎしてないんですか?」
 冨澤「あれが正しくないなんて引き継ぎはしてませんよ」

 Q 「根拠がない・」
 冨澤「そんな引き継ぎはありませんよ。直してないんですから鮮度は古いですよ。ただ根拠があるかないかってことは別問題ですよ」

 Q 「根拠がないっておっしゃっていたんですよ」
 冨澤「それは糸井の個人的見解でしょ」

 Q 「じゃあ、あなたは根拠があるとおっしゃるんですか? いま出してらっしゃる情報に根拠があるんですか?」
 冨澤「当時作ったものですから、作った根拠があったと思いますよ」

 Q 「あったと思うじゃ困るんですよ。じゃあその根拠を示してください」
 冨澤「あなたに示す必要はないし、示すつもりはありません」

 Q 「国民に税金で周知している情報が、なんで説明する必要がないんですか?」
 冨澤「なんでですか?」

 Q 「おかしいでしょう、言ってることが。国民の税金でやってる事業ですよ。あなた、天下りで元官僚でしょ。責任者でしょ、そちらの。根拠を示してください、根拠を」
 冨澤「税金で動いているわけではないですよ」

 Q 「ダメゼッタイホームページっていうのは公的な情報でしょう」
 冨澤「税金で作ったわけじゃ、動いてるわけじゃないです」

 Q 「一昨年度までは税金でやってたんです、あれは。厚生労働省の指導を受けて。ホームページにも書いてあったんです、そうやって」
 冨澤「18年度までね」

 Q 「そのまま変わってないんですよ。厚生労働省の担当者だって直す必要がある、根拠はないって言っているんです」
 冨澤「それは私聞いてませんから」

 Q 「じゃあ、あなた根拠があるってんだったら根拠を示してくださいよ」
 冨澤「書いてあるから根拠があるんだろうと思うだけですから」

 Q 「思うだけじゃ困るんですよ。責任者でしょ? 責任者として根拠を示してください」
 冨澤「いやです」

 Q 「いやです?」
 冨澤「うん。必要があると思いませんから」

 Q 「根拠を示す必要がないんですか? 国民に周知している情報について、薬物情報について根拠を示す必要がないんですか? じゃあ嘘でもいいってことですか?」
 冨澤「そんなこと言ってません」

 Q 「じゃ根拠を示してくださいよ」
 冨澤「示しません」

 Q 「どうしてですか?」
 冨澤「必要あると思いませんから」

 Q 「必要があるかないか、あなたが判断することじゃありませんよ」
 冨澤「あなたが判断することでもない」

 Q 「根拠がないってことをお認めにならないってことですか?」
 冨澤「じゃあないってことを示していただけますか?」

 Q 「もう要望書とかも出してるんですよ、検証して。医学的な検証出してるんですよ、そちらに。それもご存知ないってことでしょ? ほったらかしで。ダメゼッタイホームページには根拠があるんですか、医学的な」
 冨澤「お答えしません。」

 Q 「医学的な根拠はあるんですか、ないんですか?」
 冨澤「押し問答ですから切りましょうか。私お答えしませんし」

 Q 「分かりました。じゃあこの情報も含めて録音を出させて頂きますので」
 冨澤「はい」

 11月8日のTBS「ニュースキャスター」で、元麻薬取締官、現在は(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターの指導員として、キャラバンカーを使って子どもたちに薬物乱用防止教育を行っている浦上厚氏が述べた、大麻が凶暴性を引き起こすという話は、浦上氏がそう思っているだけに過ぎない。そのことが、元厚労省官僚で前長寿社会開発センター専務理事、現麻薬防止センター専務理事、冨澤正夫氏の説明で明らかになった。

 「大麻汚染」を憂えるマスコミの記者諸氏は、公益法人である麻薬防止センターが国民に周知している大麻情報の医学的正確性や、運営のあり方についても取材してみてはどうか。そして、大麻取締法にはなぜ「目的」がないのかについても。

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[39669] この記事の取材録音
名前:白坂和彦
日時:2008/12/13 16:48
この記事の電話取材は、有志が以下に録音をアップしてくれました。

●YouTube日本語版
ダメセン責任者の天下り専務理事の超無責任&横柄な受け答え
●YouTube英語字幕版
Irresponsible reply from Japanese drugfree organization for cannabis
●ニコニコ動画(要登録)
ダメセン責任者の天下り専務理事の超無責任&横柄な受け答え
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