2009年3月23日11時29分
滑走路上を跳ねあがった機体は、あっという間に炎に包まれた。強風が吹く千葉・成田空港で23日朝、米航空会社の貨物機が着陸に失敗し、機長と副操縦士が命を落とした。貨物機はなぜバランスを崩し、横転したのか。「もし旅客機だったら……」。利用者に不安が広がった。
事故は北西の強風が吹くなかで起きた。突風の影響による事故は過去にもたびたび起きている。専門家らは一義的には風の影響を指摘する。しかし、いったん着陸後に機体が大きく弾み、炎上に至っていることから、着陸後に操縦士がどう回避しようとしたのかや、貨物の積まれ方も事故原因解明の焦点になりそうだ。
離陸時の3分と着陸時の8分は「クリティカル・イレブン・ミニッツ(魔の11分間)」と呼ばれ、地上に近いうえ、操縦士がやるべき作業量が多いため、事故が多い傾向がある。
テレビ映像などによると、事故を起こしたフェデックス機は、主脚から接地し、いったん前輪が着いたが、すぐに浮き上がった。元機長で航空評論家の前根明さんは「最初の接地の際、機体が急に沈むように見えた。機体が突風で落とされた結果、強く接地した可能性がある」と指摘する。
国土交通省によると、当時は、A滑走路の着陸機の正面やや左から、最大風速約20メートルの強風が吹いていた。
成田発着の国際線経験が豊富な日本航空の小林宏之機長は「風向きそのものはほぼ正面からで問題はなさそうだが、地上付近はたたきつけられたり、浮き上がったりするような突風が吹くことがある。今回もこの可能性がある」と話す。
バウンドするように浮き上がった機体は、次に前輪から接地した。元機長で日本ヒューマンファクター研究所の桑野偕紀副所長は「一義的には強風の影響で強く接地したという印象を持つ」としたうえで、機首から接地した点に注目する。「一般的に機首から接地するのは避けるべき状況だ。操縦士がどう対応したか詳しく調べる必要がある」
前根さんも「浮き上がった時に操縦士があわてて接地させようとして、前輪から接地して事故に至るケースは起こりやすい」と指摘する。
その後、左に大きく傾き炎上、横転した。
機体の重心位置も飛行には大きく影響する。前根さん、桑野さんとも、出発地で貨物が適切に積まれていたかどうかも考慮すべき点だと話す。
積み荷に可燃性の液体があったとされる点も、その後の炎上の状況に影響した可能性がありそうだ。