【社会】中国から水銀飛来か 沖縄で微量観測2009年3月23日 朝刊 石炭の燃焼などによって中国で発生した水銀が、風に乗って日本にも到達している可能性があることが、環境省による22日までの大気観測で明らかになった。検出された量は極めて微量で国の指針値を大きく下回り、直ちに健康に悪影響を及ぼすわけではないが、中国方面からは光化学スモッグの原因となるオゾンも日本に流入していることが指摘されており、越境大気汚染対策の強化を求める声が強まりそうだ。 同省は2007年10月から、沖縄県国頭村の辺戸岬で大気中に含まれるガス状水銀の連続測定を始めた。昨年10月までに得られた測定結果によると、濃度はほぼ大気1立方メートル当たり1−2ナノグラム(ナノは10億分の1)で推移。中国や韓国で報告されている大気中の水銀濃度の半分程度だった。 ただ月に数回程度、2ナノグラムを超えるピークが観測され、08年2月には最大値となる4・4ナノグラムの水銀が観測された。 2・5ナノグラム以上と比較的高い濃度が観測された時の大気の移動経路などをコンピューターで分析すると、2ナノグラム未満の時に比べ、中国大陸を通って辺戸岬に到達しているケースが多く、大陸からの影響が疑われた。 国は健康への危険を低減するため、大気中の水銀については年平均値で1立方メートル当たり40ナノグラム以下という指針値を定めている。主なエネルギーを石炭に頼っている中国は、石炭の利用増加に伴って石炭中に含まれる水銀の排出が増加。米国にまで到達しているとの指摘もあり、削減を求める声が世界的に強まっている。 環境省は「(中国よりさらに西方にある)東欧にも大きな排出源があり、大陸を通過してきた水銀がすべて中国起源とは言い切れないが、今後、監視を強化したい」としている。 【水銀による大気汚染】 水銀はいったん環境中に放出されると世界中に広がり、食物連鎖を通じて再び魚などに蓄積、これを摂取した妊婦を通じて胎児の健康に悪影響を及ぼす恐れがある。世界的に規制を求める声が高まっており、国連環境計画(UNEP)は2月、水銀排出規制のための国際条約制定を決めた。水銀は気化しやすく、石炭の燃焼や金を採掘する際に大気中に排出される。UNEPによると、国別では中国からの排出が最も多い。
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