経済不振に直面する欧州連合(EU)が首脳会議を開き、各国が既に決めた景気対策の迅速な実行や、中・東欧など金融不安が広がる加盟国への特別融資枠の倍増を決めた。追加の財政出動は否定し、金融市場の規制強化を急ぐ方針も確認して、米国の立場と一線を画した。
月初のEU首脳会議で露呈した、ドイツ、フランスなどの西欧勢と中・東欧勢との対立は鳴りをひそめた。4月2日にロンドンで開く20カ国・地域(G20)の緊急首脳会合(金融サミット)を意識し、内輪もめよりも欧州全体としての発言力の確保を優先したといえる。
会議ではEUが計画するインフラ整備など総額4000億ユーロ(約50兆円)の景気対策の使途を大筋で決めたものの、個別国の新たな財政出動は必要ないという考えで一致した。
ガイトナー米財務長官は「国内総生産(GDP)の2%」の財政出動で協調するよう呼び掛けたが、EUではドイツを筆頭に反対論が強い。従来の対策の効果が不明な段階で財政規律を乱すべきでないとの考えが基本にある。欧州は雇用などの社会保障が手厚く、不況下では財政支出が増える機能が働くというのも、景気対策の数値目標を拒む論拠だ。
大型の財政出動を表明した米国や中国と、欧州との隔たりは大きい。金融サミットでの意見調整が焦点になるが、最優先課題は各国が協調して現在の景気悪化を食い止めることにある。G20の首脳は対立を越えて、建設的な合意を示してほしい。
欧州経済は共通市場の創設以来、最大の苦境にある。輸出の不振による実体経済の停滞、資産バブルの崩壊、ハンガリーやバルト3国など中・東欧の通貨不安に伴う西欧金融機関の損失拡大への懸念が同時に広がる。景気が急激に悪化したら、欧州各国がためらわずに大胆な追加策を講じるよう注文したい。
金融規制の強化でもEUの強い意欲が表れた。ヘッジファンドや格付け会社、タックスヘイブン(租税回避地)の監視や銀行の自己資本比率規制の強化などで主導権を握ろうとしており、米国などの反発も予想される。日本もルール作りに乗り遅れないよう、規制論議に極力早い段階から主体的に加わるべきだ。