世界的な金融・経済危機の拡大が開発途上国にも影を落としている。
1次産品需要の落ち込みが国家財政の悪化を招いているうえ、先進国からの投資にもブレーキがかかっている。有力な外貨獲得手段である海外出稼ぎ者からの送金も減少している。90年代に入り高い成長が続いてきたアフリカの場合、09年の成長率は3%台まで下落するとみられている。
地球規模での持続可能な経済発展を図っていくためには、先進諸国経済の立て直しとともに、途上国が着実に成長していくことが欠かせない。そこで、先進国による継続的な資金面、技術面での支援は必要である。それが、政府開発援助(ODA)である。
ところが、日本のODA予算は90年代後半から減少に転じており、09年度予算案では7000億円を割り込んでいる。急激な景気後退が進み、内向き志向がさらに強まっている。そうした中、21、22日にボツワナのハボローネで開かれた第4回アフリカ開発会議(TICAD4)フォローアップ会合は、援助を見直す好機になり得る。
日本は昨年5月末のTICAD4で12年までにアフリカ向けODAを18億ドルに倍増することや、民間企業による投資倍増などを約束した。日本以外の先進諸国や世界銀行、国連機関も貧困削減や社会開発、教育、保健などの分野で支援を約束した。
その進ちょく状況を点検することがフォローアップ会合の最大の目的だ。援助離れ傾向がみられるものの、アフリカへの関心は官民とも高まっている。昨年夏には官民合同の投資促進ミッションが南部、東部、中・西部に分かれてアフリカを訪問した。
無償協力、技術協力でも12年までの5年間に供与を予定した金額の3分の1は具体的な案件で合意している。さらに、インフラや農業、水、環境、教育などの分野で100件以上の案件の検討が進んでいる。
レアメタルをはじめとした1次産品の産出国の多いアフリカとの関係強化は有意義である。
日本のODAをほぼ一手に実施している国際協力機構(JICA)がこのほど、クルド人地域であるイラク北部のアルビルに職員を常駐させた。日本が約束したイラク支援は合計50億ドルで、そのうち、35億ドルが円借款だ。これまでに円ベースで約2800億円の契約が終わっている。発電、かんがい、港湾、上下水道、製油所など経済復興に不可欠の案件ばかりだ。いずれも、これから工事が始まる。JICA職員の常駐は、プロジェクト促進に寄与する。
援助は単なる施しではない。日本にとって、資源の安定的確保など経済的にも国益にかなう。経済危機が叫ばれる時だからこそ、復権を図る必要がある。
毎日新聞 2009年3月23日 東京朝刊