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グリコ森永事件25年「彼らの目的は何だったか…」元刑事、悔しさにじませ (1/3ページ)
グリコ・森永事件は18日で発生から25年を迎える。事件の捜査にあたった大阪府警の捜査員の中には「7人の刑事」と呼ばれた捜査員がいた。グリコ・森永事件で捜査線上に浮かんだ「キツネ目の男」を目撃した刑事たちのことだ。「あの顔を忘れたことはない」。7人のうちの一人だった元捜査1課刑事、前和博さん(60)は退職した今も悔しさをにじませる。
昭和59年6月28日夜。旧国鉄高槻駅から京都行き普通電車に乗り込んで、3人の同僚と尾行を開始した。乗客はまばらだったが、京都駅に降りたとき、自分に向ける犯人の男の視線を感じた。
身長178センチ、35〜40歳、つり上がった目、薄いまゆ、ウエーブがかったくせのある髪形。その男が放つ異様な雰囲気も瞬時に察知した。「あいつや」。同僚には指でサインを送り、跡をつけた。
「キツネ目」の姿を自分の目で追ったのは15分間。犯人という確信はあったが、職務質問するまでの一歩がなかなか踏み出せない。「あのときはいろんなことを考えすぎて頭がいっぱいだった」
7人は交代で尾行を続けたが、前さんが途中下車して指揮本部に報告の電話を入れた直後、キツネ目は尾行の網をかいくぐり、姿を消した。前さんにとって、これが最初で最後の目撃だった。
誘拐や企業恐喝事件を担当する捜査1課特殊班に配属されてから半年後に起きたグリコ・森永事件。一連の事件が時効を迎えた後もキツネ目をひそかに追い続け、昨年3月に退職してからも自宅の机の引き出しには似顔絵写真を忍ばせている。
「あのとき、身柄を確保していれば」。事件にかかわった捜査員の間で幾度も繰り返された言葉だ。「現場での判断力不足」と批判されたこともあったが、苦い経験を忘れたことはない。
「私の刑事人生はあの事件とともにあった。でも犯人を捕まえられなかったんだから、私の人生も、刑事としても、すべて中途半端に終わったようなもんです」。自戒を込めながら当時を振り返る口ぶりに、事件を解決できなかった悔しさがにじむ。
ただ、一線を退いてからは「事件の真相が知りたい」との思いも強くなった。
「あのとき、自分たちは何を間違ったのか。彼らの目的は何だったのか。もし犯人に会えるなら聞いてみたい」