2009年3月14日10時44分
【ベオグラード=国末憲人】脱税の温床などとして非難を受けていた欧州のタックスヘイブン(租税回避地)諸国が12〜13日、秘密口座の情報開示などで主要国に協力する姿勢を相次いで表明した。タックスヘイブンは4月にロンドンで開かれる金融サミット(G20)の主要議題として浮上しており、米仏独などからの圧力を受けての措置とみられる。
新たに協力を表明したのは、アンドラ、リヒテンシュタイン、モナコ。タックスヘイブンの透明性を求める経済協力開発機構(OECD)が作成したブラックリストに掲載されている3カ国だ。
銀行口座の強い秘密性に、各国の批判が集中していたスイス、ルクセンブルク、オーストリア、ベルギーなども歩み寄りの姿勢を見せた。
これまではOECDや主要国からの協力要請を拒否してきた国々だが、欧州主要国が2月に開いた首脳会合で、タックスヘイブンに透明性確保を迫り、拒む国には制裁も検討することで合意。G20の主要議題とすることで一致した。米国も、税金逃れに利用されているとして強く情報開示を求めていた。
各国からの報道によると、リヒテンシュタインは12日、OECDが定めた透明性の基準を認めると初めて表明。ブラックリストから除外されるよう希望した。これまではOECDを交渉相手と認めない態度を取っていた。アンドラも同日、11月までに銀行の秘密口座をやめると表明。ベルギーも秘密口座を来年廃止する方針を示した。
13日には、モナコも脱税事件に関して情報交換を進めると表明。スイスは、口座の秘密性は保持する一方で「情報の交換を進める」との姿勢を示した。当初渋っていたオーストリアも「法的疑惑がある場合には情報を提供する」と述べ、脱税事件の捜査に協力する意向を示した。
OECDは各国の対応について「大きな進展があった」と歓迎する意向を表明した。
関係各国が態度を転換した背景には、この問題をG20の目玉としたい仏独の圧力があったとされる。ただ、各国の表明がどこまで実行されるかは不明。G20での非難を避ける当面の措置にとどまる可能性も残されている。