今月末から四月にかけて、全国で地方選が相次いで行われる。財政優遇措置があった旧合併特例法期限の二〇〇五年三月に、駆け込み合併で多くの新自治体が誕生し、首長や議員も新しく選ばれて四年を迎えたからだ。総務省によると、四月に首長・議員が任期満了になる市区町村は百九十三に上り、「ミニ統一地方選」といった様相だ。
特に岡山県では、きょう告示される赤磐市長・市議選を皮切りに八市町で計十五の選挙が行われる“地方選ラッシュ”となっている。二十四日には鏡野町長・町議選が告示され、赤磐市とともに二十九日が投票日だ。
四月に入ると、新見、真庭、美作、備前の市長・市議選(備前は市議補選)が五日に告示される。続いて七日に美咲町長・町議選が告示され、いずれも十二日に一斉に投票される。さらに十二日は井原市議選が告示され、十九日投票となる。
広島県では三原、庄原両市の市長・市議選の投票が四月十二日、香川県では丸亀市長・市議選の投票が十九日に行われる。わが町のかじ取り役を選ぶ首長選は三県合わせて十市町におよび、いずれも議員とのダブル選である。合併して最初の四年間が問われることにもなる。
国で進められている第二期地方分権改革は今年、大きな節目を迎える。政府は今秋にも「新地方分権一括法案」を国会に提出する。今回の特徴は市町村の役割を重視している点だ。政府の地方分権改革推進委員会が昨年五月にまとめた第一次勧告は「住民に最も身近で基礎的な自治体である市町村の自治権を拡充し、『地方政府』に近づけていく」と宣言した。
真の住民ニーズに沿った取り組みができるのは市町村にほかならない。今後、権限や財源の受け皿となる市町村は、まちづくりから福祉や医療、教育まであらゆる分野で地域に責任を負い、住民サービスの担い手としての役割が求められている。
分権時代を生き抜く自治体の戦略が選挙戦では問われよう。過疎や少子高齢化といった課題を乗り越え、どう地域の活性化を図るか。首長には、中央政府からの自立を視野に入れた地域の将来ビジョンが欠かせない。議会も当局を追認するだけでなく、より政策立案にかかわる能力が必要だろう。
地域の新しいステージを開くには、なによりも住民の意識と行動が大切だ。未来を託すリーダーにふさわしいかどうか、候補者の訴えにしっかり耳を傾け、貴重な一票を投じよう。
昨年九月の臨時国会提出以来たなざらし状態だった消費者行政一元化のための消費者庁設置法案など関連三法案が、ようやく審議入りした。民主党も対案を提出しており、政府、与党は修正協議を経て今国会での成立を目指すが、組織の独立性などで双方の隔たりは大きく、調整の難航が予想される。
政府案は、創設する消費者庁を内閣府の外局と位置付け、食品や製品による被害情報を一元的に集約して被害拡大の防止に努める内容だ。自治体には重大被害発生時の速やかな報告を義務付け、有害商品の回収などに応じない業者には一億円以下の罰金を科すなどである。
これに対し、民主党の対案である消費者権利院法案は内閣から独立した消費者権利院の設置をうたう。組織のトップには、民間人から消費者権利官を任命する。政府案が内側での「司令塔」を目指すとすれば、民主党案は外からの「監視役」とスタンスは明確に異なる。
消費者庁構想は「国民目線の改革」を掲げる福田康夫前首相の看板政策として示された。相次ぐ食品や欠陥製品をめぐる問題で縦割り行政の弊害が浮き彫りになった反省に立ち、消費者重視の行政へと転換を図るもので、国民の関心は高い。
それが、審議入りまで約半年かかった。福田氏の突然の辞任や、続く麻生太郎首相の下での次期衆院選をにらんだ与野党の駆け引き、経済危機などが重なり、存在感が薄れた。この間も同様の不祥事が続き、不安を募らせた。政治の責任は重い。
手だては違っても消費者保護の強化へ機能性を高める基本的な認識では共通している。安全・安心は国民生活の根幹だ。「国民目線」に立って効果的な組織像の論議を深め、実現への合意を図るよう求めたい。
(2009年3月22日掲載)