きょうの社説 2009年3月22日

◎長期国債買い入れ 政府の追加経済対策を後押し
 日銀が長期国債の買い入れ額の増額に踏み切った。白川方明総裁は、「国債増発への対 応を念頭に置いたものではない」としているが、政府の追加経済対策を支え、市場に安心感を与える狙いがあるのは明らかだろう。政府は日銀の決断にこたえ、国債の増発を恐れず、骨太の内需拡大策を打ち出してほしい。

 中央銀行による国債の買い入れは「禁じ手」といわれる。財政規律が緩み、インフレを 招くという理由だが、日本の家計部門は豊富な個人金融資産を持ち、企業部門は過剰な生産設備を抱えている。赤字国債の増加を恐れる必要はまったくないし、インフレを心配する環境でもない。

 最大の懸念は、金融不安を内包したまま不況がさらに深刻化することであり、通貨当局 は金融市場に資金供給する姿勢を一段と鮮明にして景気悪化を防ぎ、長期金利の上昇を抑える必要がある。金融機関が保有する長期国債の買い取りを増やせば、金融機関に潤沢な資金が供給され、企業への融資が増える。機能不全に陥っている金融市場のテコ入れになるだろう。

 政府は追加経済対策の策定作業を始めており、財源確保のため国債の大量増発が見込ま れている。与謝野馨財務・金融・経済財政担当相は、GDPの2%、十兆円以上の財政出動を示唆し、与党内ではその二、三倍の規模を求める声も強い。北陸関係では、北陸新幹線の建設前倒しが検討課題になっているが、開業後の採算のめどが立っているだけに、工事の前倒しが実現すれば大きなメリットがある。地方を元気にする景気刺激策として理想的ではないか。

 日銀による長期国債の買い取り額は、月一兆四千億円から一兆八千億円へと四千億円増 額される。これでも財源不足というなら、長期国債の買い取り額をさらに増やせばよい。

 日銀が政府の財政政策から独立した存在であるのは当然だが、経済有事とも言われる今 は、財政支援のための国債買い入れをタブー視せず、政府とのあうんの呼吸で対応することが求められる。百年に一度の経済危機を乗り切るために、あらゆる手を打つべきだ。

◎サッカーで地域貢献 BCリーグと競い合って
 サッカー・北信越フットボールリーグ1部のツエーゲン金沢が来月、子ども向けのサッ カースクールを津幡で開校する。普段はピッチ上で熱いプレーを繰り広げている選手やレベルの高いコーチ陣による指導は、サッカー好きの子どもたちへの何よりのプレゼントとなろう。この種の取り組みはスポーツを通じた地域貢献の基本であり、ファン層を拡大し、クラブの基盤を安定させるためにも効果的である。

 県内では、プロ野球独立リーグ・BCリーグの石川ミリオンスターズも、地域密着を掲 げて子どもたちを対象とした野球指導などに力を入れている。ツエーゲン金沢とは、昨秋にそろって金沢検定を団体受験した「仲」である。サッカーも野球も県民に人気の高いスポーツだけに、これからも競い合って「地域貢献力」を磨き、石川のスポーツ文化をより豊かなものにするために寄与してほしい。

 津幡はツエーゲン金沢のホームタウンの一角であり、サッカースクールにも、町教委や 町内のサッカー少年団が協力する。まずはこの取り組みを軌道に乗せ、金沢などホームタウン全域に輪を広げていきたいところだ。

 ツエーゲン金沢にとって、当面の課題はJFL(日本フットボールリーグ)昇格を果た すことであるが、それはゴールではない。その先にはさらに大きな目標であるJリーグがある。夢への道のりは決して平坦ではなく、成績に加えて組織面や観客数などでも高いハードルを乗り越えなければならない。よって立つ地域の熱烈な後押しなくして、夢の実現はあり得まい。創立四年目の今年は、サッカースクール以外の地域貢献活動にもこれまで以上に積極的に取り組んでもらいたい。

 Jリーグで活躍しているチームも、地域に溶け込むために多彩な活動を展開しており、 中には新人や移籍組の選手に高齢者福祉施設への慰問と事後のリポート提出を義務付けているところもあるくらいである。ツエーゲン金沢はもとより、石川ミリオンスターズにとってもそうした「先進事例」は大いに参考になるだろう。