九州初のイスラム教の礼拝施設「モスク」が今週、福岡市に完成しました。
反対運動などにも直面しましたが、対話を重ねて完成にこぎつけ、きょう、大規模な礼拝が行われました。
聖地メッカに向かって祈りをささげるおよそ200人のイスラム教徒たち、九州でこれだけの数のイスラム教徒が集団で礼拝をするのはきょうが初めてです。
福岡市東区のJR箱崎駅近くに、今週、完成したのを受けて各地から集まりました。
九州で初めてとなるモスクは、地下1階、地上3階建てで、屋上にはモスク特有の半球状のドームやミナレットと呼ばれる塔が設置されています。
広さおよそ120平方メートル、赤い絨毯が敷き詰められたホールだけで150人近くが入ることができるほか、2階部分もあわせるとおよそ200人が一度に礼拝をすることが出来ます。
九州大学で学ぶエジプト人研究員のハサバラ・サワフトさんは、モスク建設の先頭に立って来ました。
イスラム教徒は、金曜日に集団で礼拝をします。
九州大学では、インドネシアやエジプトなどイスラム圏からの留学生が数多く学んでいて、これまで、礼拝には大学の留学生会館の一室を使っていました。
しかし、集団での礼拝には手狭で留学生たちは、「神聖で精神的なよりどころが欲しい」とモスクの建設を計画したのです。
建設計画が持ち上がったのはおよそ10年前ですが、多くの困難に直面してきました。
まずは建設費、およそ2億5,000万円と留学生たちにとって大きな負担でしたが、寄付を募るなどして7年ほどでめどをつけました。
しかし、次は周辺住民の反対運動でした。
自治会長の原田秀徳さんは、「外国人が集まると物騒」と不安を訴える住民と留学生らとの間に立って、調整役を務めました。
一方、ハサバラさん達は、イスラム教を正しく理解してもらおうと、モスクの目的を丁寧に解説し、お祈りの様子を実際に見てもらうなど住民説明会を重ねました。
住民への配慮は建物にも現れています。
砂漠の土をイメージしたイスラム風のタイルを外壁にあしらったほかは、周辺の住宅に溶け込むように派手な装飾はなく、様式も現代建築をベースにしています。
モスクの完成を前に、周辺住民を対象とした内覧会も開かれました。
住民からは、モスクの完成を歓迎する声も聞かれました。
ハサバラさん達は、なじみが薄いイスラム文化に親しんでもらおうと、モスクで料理教室などを開き、地域の文化センターとしても開放する予定です。
今週月曜日。
建設資金の大半を寄付したUAE=アラブ首長国連邦の駐日領事が訪れ、モスクの完成を祝福しました。
反対運動に直面しながらも、住民との対話を重ねることで完成にこぎつけたモスク、厳かなお祈りの様子を住民たちは静かに見守っています。