高速道路料金の値下げが始まった。自動料金収受システム(ETC)を搭載した二輪車、軽自動車、普通車が対象で、入り口か出口のどちらかを土日祝日に通過していれば割引が適用される。
20日に本四連絡高速道と東京湾アクアラインの料金が1000円に下がり、28日からは大都市近郊を除き休日ならどこまでも1000円で走ることができるようになる。
今回の高速道路料金の値下げは、原油価格の高騰対策として立案された。しかし、昨夏以降、ガソリンや軽油の価格は急落したことから、燃料価格対策は意味がなくなった。そこで、経済の急激な落ち込みに対処するための需要創造に目的を変えての実施となった。
日本の高速道路料金はもともと高いことで有名だ。休日だけでトラックなど大型車は対象外だとしても、料金引き下げは歓迎すべきことなのかもしれない。
値下げを機に、観光客を呼び込もうと、さまざまなイベントが企画されている。多くの人がドライブを楽しみ、お金を使うようになれば、経済を押し上げる効果が期待できる。
ただし、ETCの車載機需要が急増したため、供給が追いつかない。値下げが行われても、対応できない車がたくさん積み残された形でのスタートだ。
また、料金精算のプログラム開発が間に合わず、首都高速道路など料金体系が異なる区間をまたぐ場合に前後の料金を通算1000円にする割引は、4月29日からの実施となる。
過去に例のない措置だけに高速道路の渋滞がどのようになるのかも予測できないという。フェリーや鉄道など、値下げによって利用客が高速道路利用に流れるケースもあり、それによる不利益をどうするのかといった問題もある。
混乱が起こらないよう関係機関には全力を尽くしてもらいたいが、こうした問題が生じたのは、将来の展望を示さず、目先の人気取りの施策として高速道路の料金値下げが進められたからではないだろうか。
民主党は高速道路料金をなくすと主張している。解散・総選挙を控え、政府・与党としてはなんらかの対応策を示す必要があった。
そんなところから急に出てきた値下げだけに、事前の準備ができていなかった。値下げの財源はとりあえず2年分だけだ。その後、値下げをやめることが果たしてできるのだろうか。
高速道路の利用形態と料金収入のあり方が大きく変わるわけで、高速道路の整備計画にも影響してくるはずだ。そうした点について、何の考慮も行わないまま、とりあえず値下げだけを実施したことになる。
場当たり的な人気取りでは無責任で、日本の交通体系の中で高速道路をどう位置づけるのか、政府・与党はちゃんと示すべきだ。
毎日新聞 2009年3月22日 東京朝刊