「県議会が早朝4時半まで続いたので、そのまま神子田の朝市に行ってラーメンを食べた」。県外の知人に何気なく話したところ、絶句された。「県議会が朝まで続く? あり得ない」
県立病院・地域診療センターの無床化問題で、6日に始まった議会は日付をまたいで約15時間に及んだ。他県の常識では理解し難いかもしれない。「岩手県議会の無床化問題に対する真摯(しんし)な姿勢を見れば大いにあり得る話だ」と返しつつ、内心その岩手に住んでいる自分が誇らしかった。
「世の中全体の流れとは反対の方向からも対象をとらえてみよう」。記者を志した私が学生時代に自分に課した思考方法だ。しかし赴任直後の記者コラムで、目の前に次から次へと現れるドタバタを理由にすぐに思考停止に陥ってしまった反省を書いた。新人記者として赴任して5年。思考停止に陥ったのも一度や二度ではない。そんなとき、「世の中全体の流れとは違うもの」を見せることで、私を刺激し鼓舞してくれたのは「岩手」そのものだった。全国に先駆けた県議会改革をはじめ、マニフェスト選挙、平泉の世界遺産登録活動、伝説の選挙参謀の手の内連載なども岩手にいたから取材がかなったテーマだと思う。
4月1日付で東京本社に異動します。次は岩手の面白さの一端でも全国に伝える大使になろう。岩手の皆さん、ありがとうございました。【念佛明奈】
毎日新聞 2009年3月22日 地方版