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チャン・ジャヨン文書:「悪質なデマの根を絶つべき」(上)

 悪質なデマに基づく人格攻撃がまたもや繰り返されている。女優チェ・ジンシルさんがデマに基づく誹謗中傷に耐えかねて自ら命を絶ってからわずか5カ月余り。今度は事実関係がまったく分からない「怪文書」が、無差別的に出回るデマの震源地となった。今や、無責任かつ無分別なデマの拡大再生産の根を絶つべきだ、との声が高まっている。

 今月7日に自殺した女優チャン・ジャヨンさん(29)が残した文書には、各界の人物の実名がいくつも記されていることが分かっている。チャンさんはこの文書の中で、「所属事務所のキム社長(40)に強要され、(実名を挙げた)この人たちとの酒席に同席するとともに、ベッドにも付き合うよう求められた」と主張していた。だが、文書を作成したチャンさんは自殺し、一方のキム社長は「すべてでっち上げだ」と主張しているため、文書の内容が事実かどうかについては、警察の捜査に頼るしかない状況だ。

 だが一方で、証券情報誌やインターネット上では、未確認の怪文書である「チャン・ジャヨン・リスト」が急速に出回っている。さらにネット上では、該当する人物の顔写真や主な経歴まで添付され、あたかも有罪判決を受けた犯罪者を告発するかのように、名誉を傷つける行為が繰り広げられているケースもある。中にはリストを公開した上で、「(わたしがリストをアップしたことを、サイト利用規定違反で)通報するのはやめてほしい」と懇願する者もいた。警察は20日、「いわゆる“チャン・ジャヨン・リスト”をばらまく行為について捜査に着手した」と発表した。

 このようなデマを流した者は、何ら罪意識を感じていない、と専門家たちは指摘している。延世大心理学科の黄相旻(ファン・サンミン)教授は「デマを流した人物は、不確実な情報を他人と共有することにより、不安感を取り除こうという心理が働く。デマが実際に広まれば、自分の流した情報が確実だと信じ込み、心理的な安定感を得られるためだ」と話す。

 デマは無辜(むこ)の市民の人生そのものを大きく変えてしまう。実業家でジャーナリストのチュ・ビョンジンさん(50)は2000年、ある女性に性的暴行を加えたという容疑で逮捕され、20年余りにわたって続けてきたテレビ・ラジオへの出演を断念せざるを得なくなった。また、チュさんが経営していた衣類販売会社も大きな打撃を被った。チュさんは2年8カ月にわたる法廷争いの末、大法院(日本の最高裁判所に相当)で無罪判決を勝ち取り、チュさんを性的暴行の容疑で告訴した女性が事件をでっち上げていたことも明らかになった。だが、チュさんの名誉はすでに回復できない状態だ。昨年、「インターネット殺人首謀罪」の制定を提案したチュさんは、「ネット上での悪質なデマは、“精神的な殺人”に等しいものであり、著名な芸能人だけが被害を受けるものではない」と話している。また、チュさんは20日、本紙の電話取材で、ネット上での悪質なデマについての質問に対し、「話したくない」と語った。衣類販売会社を清算し、ほかの事業を起こす計画を練っているというチュさんは、その理由について「うかつにものを言えば、また誤解されるのではないか」と言葉を濁した。

韓賢祐(ハン・ヒョンウ)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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