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きょうの社説 2009年3月21日
◎政治献金見直し 個人献金に向かうのが本筋
小沢一郎民主党代表の秘書が逮捕された西松建設の巨額献金事件を受け、民主党が企業
・団体献金の規制を強化する検討を始めた。小沢氏自ら、企業献金の全面禁止に言及したのは、事件を制度自体の問題にすり替えようとする思惑も見て取れるが、この事件であらためて浮かび上がった公共事業をめぐる建設業者と政治との密接な関係は見過ごすわけにはいかない。政治資金規正法は事件が起きるたびに手直しされ、透明化が徐々に進んだが、その都度 、抜け道が用意されてきた。政治家個人への企業献金が禁止されると、政党支部という新たな政治家の“財布”が設けられたほか、政党経由の迂回献金やダミー団体を通した献金も事実上可能である。表の金の流れを透明化した分だけ、裏の操作が一段と巧妙化したようにみえる。西松事件はその典型といえる。 事件の構図が示す通り、公共工事を受注したい企業と、政治資金を集めたい政治家がい る限り、企業献金は見返りを求める性格を帯びやすく、「賄賂性」は決してなくならないだろう。どの企業がどの政治家に献金したのか明白になる制度が難しいなら、企業献金に依存せず、個人献金を促す仕組みを真剣に検討するときである。 政治家への企業・団体献金を規制し、個人献金への移行をめざすことは九〇年代以降の 政治改革論議の一貫したテーマである。税金による政党交付金(助成金)も導入されたが、その目的は企業・団体献金への依存をなくすことだったはずだ。政治献金が個人献金に向かうのは規正法の本筋である。 民主党で始まった見直し論議では、小沢体制で政権公約から消えた公共事業受注企業か らの献金禁止の復活、政党支部への献金規制のほか、個人献金に対する税控除も論点となっている。 個人献金が日本で広がらない理由として、献金を通して政治に参加する意識が薄い、寄 付文化が根付いていないなどの指摘が出ているが、政治家の多くが企業・団体献金を頼りにし、個人献金へ誘導する仕組みづくりを怠ってきたことも大きい。次期衆院選へ向け、与野党は改革案を競ってほしい。
◎北陸のエコ取り組み 太陽光発電プラスαで
国や地方自治体が率先して学校や庁舎など公的施設に太陽光発電設備を取り付けるなど
、地球温暖化対策を景気浮揚や雇用創出に役立てる環境省の日本版「グリーン・ニューディール」構想の骨子が明らかになった。日射量が少なくなる冬場を抱える北陸など雪国では太陽光発電一本やりでなく、それを風力やバイオマス発電などと組み合わせる「プラスα」のアイデアが不可欠である。年間四シーズンのうち、春から秋までの三シーズンについては、太陽光発電でいける。 実はそれを裏付ける立派な試みがあるのだ。 一九七〇年代、当時の石川県立柳田農高が過去三十年の気象を調べた結果、四月から十 月までの日照時間は太平洋側の静岡県と同等であり、北九州をしのぐことを突き止め、能登の内浦でハウス栽培を試みて成功させたことである。 雪国では初めての取り組みで、半信半疑で見守られたが、内浦の成功で北陸でもたちま ちハウス栽培が広がったのである。ただ、冬場を乗り切るために風力、バイオマス等による発電や省エネが必要だ。地域ごとに最適の組み合わせを考えたい。 こうした再生可能エネルギー利用を発展させるためには余った電力を電力会社に買い取 らせる仕組みの整備も不可欠である。これについてはドイツの買い取り制度「フィードインタリフ(FIT)」がお手本だ。二〇〇〇年から施行され、十年ほどで投資が回収できるように買い取り価格を市場より高く設定して太陽光発電を普及させた。普及に連れて設備が安くなるように導き、それに合わせて電力の買い取り価格を毎年下げることにも成功し、シェア世界一の日本を追い抜いたのである。 日本にも買い取り制度はある。が、ドイツほど細密でなく、経済産業省などは買い取り 価格を上げると、電力会社や消費者の負担が増えると長らく消極的だった。政府は先ごろ、やっと現在の二倍の価格で買い取らせる制度の実現に向けた「エネルギー供給高度化法案」を閣議決定したが、利益誘導で普及させる思い切った施策にしたい。
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