きょうのコラム「時鐘」 2009年3月21日

 ブランコは簡単に「無重力」を体験できる遊具である。大きくこいでストンと落ちる瞬間、遠心力で宙に放り出される力と引き戻そうとする地球の引力が釣り合って体が浮くようになる。それが一種の「無重力」だという

超上空に航空機を飛ばして急降下する瞬間に「無重力」状況になるのも、ブランコの原理と同じだ。あるいはプールで水の浮力を生かして無重力に近い環境を作ることがある。が、重力をさえぎることのできない地球上では本物の無重力空間を作るのは不可能だ

宇宙ステーションで若田光一さんが3カ月間の無重力生活に入った。映像では楽しそうに漂っているが、地球の重力のおかげで発達した二本足歩行の人体が無重力の中でどうなるか、考えてみれば皮肉な実験ではある

「宙返り、何度もできる無重力」は向井千秋さんが宇宙から送ってきた句である。古くは「ふらここ」ともいった「ブランコ」は春の季語で、俳句と宇宙は仲がいい。「ふらここの宙を二つに割り遊ぶ」(上野泰・大歳時記)

久々にブランコに揺られて、春の一句をひねってみてはどうでしょう。