この生きにくい世の中を作ったのが人間なら、それを乗り越えるすべをほかに求めても無理というもの。
医師・医学博士にして、二代目養蜂家でナチュラリスト、さらに、かって世界でもっとも過酷なレースといわれた「キャメル・トロフィー」で日本人最高位の準優勝を果たしたこともある宇津田 含が、フィジカル、メンタルな面から、サラリーマンに生き残りの処方箋を書いてくれる。
(おことわり:宇津田 含は、ひとこと多い医者であるため、結構生き方下手である。この処方箋は、健全な身体と心は育ててくれるが、上手な処世術の手助けにはならないかもしれない。服用時には効用の再確認を!)
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 ■Vol.6 ハチミツの薬理効果

   養蜂家の子として生まれた私は、永年、ハチミツが非常に優れた食及び医薬品であるにも関わらず、砂糖の代用品としての価値しかないかのような不当な評価を受けていることを非常に哀しく思ってきました。

  ●砂糖の代用品扱いではもたいなすぎる!!ハチミツの薬理効果は欧米では常識。  

 養蜂家の子として生まれた私は、永年、ハチミツが非常に優れた食及び医薬品であるにも関わらず、砂糖の代用品としての価値しかないかのような不当な評価を受けていることを非常に哀しく思ってきました。
それまでは貴重な滋養食品としてそれなりの価格で取引されていた、両親が汗水流して生産したハチミツは、私が中学生の頃(1970年頃)だったでしょうか、問屋に安く買いたたかれるようになり、また、小売り分もサッパリ売れず、という状態になっていました。尋常小学校4年生の時からミツバチを飼い続けて三度のメシより蜜蜂が好きという父親でしたが、「これでは子供達を養えない」と、生業としての養蜂を辞めようかと悩んでいたその寂しそうな姿を30年以上経った今でも鮮明に憶えています。

見直されつつある国内産ハチミツ、しかし、密源の不足で生産量は激減

安価な輸入ハチミツに圧倒されたという事情もさることながら、ハチミツが砂糖の代用品としてしか考えられて来なかったという我が国の歴史的背景が大いに関係していたのだろう、とも思います。西洋蜜蜂が導入されたのが明治10年といいますから、欧米のように蜂産品が生活に溶け込んでいるという状況ではないので無理もありませんでした。また、輸入ハチミツを国産と偽称して販売しつづけてきた大手業者らの存在もあって、本物の国内産ハチミツであるにもかかわらず安いままでした。 現在でこそ国産ハチミツが見直されて来ているとはいうものの、一方で自然破壊に伴って蜜源が激減し、思うように生産できなくなっているのも残念ながら事実なのです。

 昨今のハチミツブームも手伝って、甘味料としては認識を深めつつあるハチミツですが、医薬品としての効用についてはあまり良く知られていませんので、簡単にハチミツの薬理効果について説明しておきます。但し、あくまで100%純粋なハチミツについての効果であることをお忘れなく。誌面を利用しての宣伝みたいですが、残念ながら、それほど生産量は多くありません。医者としてハチミツに惚れ込んでいるからだ、と御理解下さい。
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古くから使われてきていたハチミツの医薬効果

ハチミツは、古くから、医薬品として、
1)疲労回復に、
2)二日酔に、
3)整腸作用として下痢や便秘に、
4)媚薬として(ハネムーンの語源に関係あり)、
5)鎮静剤として、
6)胃十二指腸潰瘍や口内炎に、
7)咳止め・去痰剤として、
8)糖尿病治療薬として、
9)赤ん坊の成長に(人工栄養の場合は特に有効)、
10)虫下しとして、
11)心臓病・血圧への効用、
12)創傷への効用、
13)目薬として、
14)利尿剤として、
15)麻薬中毒者への更生剤、
16)スキンケアに、
17)貧血の改善に、
等々様々な疾病の治療に使われてきました。1)〜17)まで逐一説明するのは紙面の都合上割愛しますが、今回は火傷や擦り傷など生傷の絶えない日常のために、12)創傷への効用についてのみ触れておきます。

創傷に効果的なハチミツ包帯


 創傷といっても様々ですが、切り傷から床ずれ、火傷、シモヤケ、ヘビ咬傷、外科縫合部まで、殆どのものにハチミツ包帯が有効です。  因みに口内炎への適応としては日本薬局方に記載されています。
ハチミツが創傷へ有効であることは、A)抗菌性によって感染を防ぐ、B)水分の浸出やバクテリアによる感染を防ぐ被膜となる、C)治癒能力を促進し組織再生を進める酵素を含む、D)膿を吸収し、それによって傷を清潔にする、E)痛み、刺激を減少させ、悪臭を除去する、などの理由によります。

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 ■純粋国内産ハチミツは、できれば近郷近隣の生産者からの直接購入を勧めたい。


 ハチミツがもつ創傷治癒という特性の一つの側面は、ハチミツの多様な糖類が持つ保水性がリンパ液の排出を促がすことに基づくものと考えられています。もちろん蜂蜜の種類によってもその含有量は違うのですが、蜂蜜の糖は、 水分やミネラルを含む全重量のうち、35〜45%が果糖、25〜45%がブドウ糖、1〜2%が蔗糖、1〜2%がマルトースやイソマルトースなど25種以上のオリゴ糖から成っています。

 その他の組成物として、ミネラル及び微量元素、ビタミン類、フラボノイド(抗酸化物質)などですが、ハチミツの抗菌性は、含まれるグルコースオキシダーゼという酵素が傷からの浸出液で30%に薄められた時に特に活発になり過酸化水素を発生するからだとも考えられています。過酸化水素といえば、オキシフルやオキシドールという商品名で市販されている代表的な消毒薬の一つです。
具体的な治療としては、傷口にハチミツをタップリ沁み込ませたガーゼや包帯を直接あてるだけのことです。そして1日1回取り替えます。体温やリンパ液で粘度を下げたハチミツが流れ出さないように、メリケン粉をハチミツに練りこんでおくという方法もあります。外傷被覆材としての利用では、皮膚粘着性が無いために、効果的であるばかりでなく、他の材料よりも快適です。

常備薬として職場や家庭にハチミツを

医師でもある私はハチミツを創傷治療に利用していますが、医療現場で使用されている一般的薬品よりは、治癒が速く、傷跡も綺麗です。消毒と欠損部の再生を同時にやってのけるこれほど優れた医薬品を私は知りません。
様々な職場で内燃機関を動力に作業がなされていますので、焼けたエグソーストパイプや溶接の火の粉で火傷するケースも少なくありません。もちろん調理で火傷することも度々です。流水でしっかり冷した後にハチミツ包帯をしておけば水疱もできず痛みの程度も軽くて済みます。

打ち身、捻挫にも有効です。
その収斂作用を利用して抜け難いトゲを自然に排出させるという方法もあります。
救急セットの中にハチミツの小瓶を加えておくと、奥の手として様々な場面で重宝されること請け合いです。



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国内産ハチミツにこだわる理由
 色々なハチミツが市販されていますが、100%純粋ならどれでも良いのでしょうか。私は、その人に合うハチミツは何と言っても故郷あるいは祖先の出身地のものだろうと考えています。出来るだけ自分の生まれた場所の近くで採取されているハチミツを捜してみることをお勧めします。もしくは祖先の出身地の近くのものを捜してみましょう。
本来、生物というのは生まれた場所の近くで一生を過ごすものであり、身体もその場所の環境に適応するようにできているものだと私は考えています。
現在でこそ日本人は点々と住居地を変えますが、かっては生まれ故郷で一生を過ごすというのが普通でした。だから、何代にも渡るうちに、その土地に適応できるような遺伝情報を獲得していった筈なのです。自分自身のルーツにこだわってハチミツやミネラルウォーターやその他の食品を探すのも楽しいではありませんか。

深刻な状況にある自然破壊と後継者不足


 世界的なハチミツの不作や外国産の一部のものから残留農薬が検出されたことから国産品に人気が集中しているのですが、自然破壊や後継者不足から国産ハチミツは需要の10%にも満たない(7〜8%)のが現実です。
こういう状況に加えて、輸入蜂蜜を国産と偽称して販売しつづけてきた大手業者らが偽証表示を暴露されることに危機感を募らせ国産ハチミツの買占めに走っているため、卸価格は250%に達するものもあり、従って小売価格も昨年の1.2〜1.5倍という状態です。
「国産品」「純粋ハチミツ」と称されていても本物かどうかは怪しい、というのも哀しいかな現実です。何しろ70%以上の含有率であれば「純粋」と称してもOK、というのが我が国のハチミツ事情ですから。
「果糖ブドウ糖液に、香りづけ色づけ味つけ程度にハチミツを加える」とうそぶく業者もいます。

安心なハチミツを手に入れるには

前段で述べたような理由からも、近郷近在の信頼できる養蜂家から直接購入するのが一番安心でしょう。もしどうしても信頼できるものが手に入らなければ、筆者も若干なら用意できますので、メールにて連絡をとって貰えば対応します。末尾にメールアドレスを付け加えてます。
国産ハチミツの安全性や美味しさ、そして薬理効果が見直され、それがまた我が国、ひいては地球の自然の再生へとつながればどんなに素晴らしいことかと夢に思う今日この頃です。


宇津田養蜂場 uzuta-api@syd.odn.ne.jp

宇津田医師監修雑誌
「はちみつで元気を手に入れる」

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