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養蜂家の子として生まれた私は、永年、ハチミツが非常に優れた食及び医薬品であるにも関わらず、砂糖の代用品としての価値しかないかのような不当な評価を受けていることを非常に哀しく思ってきました。
それまでは貴重な滋養食品としてそれなりの価格で取引されていた、両親が汗水流して生産したハチミツは、私が中学生の頃(1970年頃)だったでしょうか、問屋に安く買いたたかれるようになり、また、小売り分もサッパリ売れず、という状態になっていました。尋常小学校4年生の時からミツバチを飼い続けて三度のメシより蜜蜂が好きという父親でしたが、「これでは子供達を養えない」と、生業としての養蜂を辞めようかと悩んでいたその寂しそうな姿を30年以上経った今でも鮮明に憶えています。
見直されつつある国内産ハチミツ、しかし、密源の不足で生産量は激減
安価な輸入ハチミツに圧倒されたという事情もさることながら、ハチミツが砂糖の代用品としてしか考えられて来なかったという我が国の歴史的背景が大いに関係していたのだろう、とも思います。西洋蜜蜂が導入されたのが明治10年といいますから、欧米のように蜂産品が生活に溶け込んでいるという状況ではないので無理もありませんでした。また、輸入ハチミツを国産と偽称して販売しつづけてきた大手業者らの存在もあって、本物の国内産ハチミツであるにもかかわらず安いままでした。
現在でこそ国産ハチミツが見直されて来ているとはいうものの、一方で自然破壊に伴って蜜源が激減し、思うように生産できなくなっているのも残念ながら事実なのです。
昨今のハチミツブームも手伝って、甘味料としては認識を深めつつあるハチミツですが、医薬品としての効用についてはあまり良く知られていませんので、簡単にハチミツの薬理効果について説明しておきます。但し、あくまで100%純粋なハチミツについての効果であることをお忘れなく。誌面を利用しての宣伝みたいですが、残念ながら、それほど生産量は多くありません。医者としてハチミツに惚れ込んでいるからだ、と御理解下さい。
(右上に続く)
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古くから使われてきていたハチミツの医薬効果
ハチミツは、古くから、医薬品として、
1)疲労回復に、
2)二日酔に、
3)整腸作用として下痢や便秘に、
4)媚薬として(ハネムーンの語源に関係あり)、
5)鎮静剤として、
6)胃十二指腸潰瘍や口内炎に、
7)咳止め・去痰剤として、
8)糖尿病治療薬として、
9)赤ん坊の成長に(人工栄養の場合は特に有効)、
10)虫下しとして、
11)心臓病・血圧への効用、
12)創傷への効用、
13)目薬として、
14)利尿剤として、
15)麻薬中毒者への更生剤、
16)スキンケアに、
17)貧血の改善に、
等々様々な疾病の治療に使われてきました。1)〜17)まで逐一説明するのは紙面の都合上割愛しますが、今回は火傷や擦り傷など生傷の絶えない日常のために、12)創傷への効用についてのみ触れておきます。
創傷に効果的なハチミツ包帯
創傷といっても様々ですが、切り傷から床ずれ、火傷、シモヤケ、ヘビ咬傷、外科縫合部まで、殆どのものにハチミツ包帯が有効です。 因みに口内炎への適応としては日本薬局方に記載されています。
ハチミツが創傷へ有効であることは、A)抗菌性によって感染を防ぐ、B)水分の浸出やバクテリアによる感染を防ぐ被膜となる、C)治癒能力を促進し組織再生を進める酵素を含む、D)膿を吸収し、それによって傷を清潔にする、E)痛み、刺激を減少させ、悪臭を除去する、などの理由によります。
(左下に続く)
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