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群馬老人施設火災:生活保護者が入所 大半が東京から

 群馬県渋川市の老人施設「静養ホームたまゆら」の入居者の多くは、東京都墨田区などから受け入れた高齢の生活保護受給者だった。背景には、都内の施設が飽和状態で入所先探しに行政が苦慮していることがあり、受け入れる施設にとっては保護費で入所費などを確実に回収できる「ビジネス」として広がっている実態がある。都の調査によると、都外で暮らす保護者は約500人(昨年1月現在)だが、その不透明さを指摘する証言もある。

 「墨田区の紹介を受けて、2年前にここに来た。突然来たので、何がなんだか分からない」。火災から一夜明けた20日朝、近くの特別養護老人ホームに避難した女性入所者(89)はぐったりした表情で話した。入所者の多くは身寄りがなく、介護が必要なため、自治体が都内で収容する施設を見つけるのは難しい人たちという。

 たまゆらを運営する「彩経会」の高桑五郎理事長も積極的に生活保護受給者の受け入れを進めた。墨田区によると、理事長自身が区にPRに訪れ、04年2月以降、50~80代の男女15人を送り出した。

 墨田区は20日、同区から「たまゆら」に入所した生活保護受給者のうち、3人が亡くなった可能性があることを明らかにした。群馬県警の情報という。

 たまゆらの元職員によると、施設の利用料7万~9万が自治体から支払われ、入所者には少額の「小遣い」が渡される仕組み。「利用者の中には『うば捨て山に捨てられたも同然』と言う人がいる。でも、自治体に財政的余裕はなく、都会には場所がない。自治体が黙認しているのだから、仕方ないのでは」と語った。

 入所者の待遇には、近所でも不審の目が向けられていた。

 建設業の男性(59)宅には約1カ月前、東京から入所したばかりの女性が「こんなところに来たかったわけじゃない。助けて」と保護を求めてきた。女性は警察に保護されたが、その後施設に戻されたという。2年前には入所者が路上で倒れていたこともあり、男性は入所者を送り出す墨田区に抗議したが、「職員を派遣してきちんと現状を把握しています」という回答だった。

 墨田区は「年1回の訪問調査は行っている。問題点は聞いていない」としている。

 たまゆらの職員は6人で夜間は1~2人だけ。やはり墨田区から来たという男性入所者(63)は「施設が粗末なのはやむを得ないが、食べさせて寝かせられるだけ。東京から来た自分としては、こんな寂しいところで死ぬなんてと思う」と首を振った。【前谷宏、杉山順平、山本将克】

毎日新聞 2009年3月21日 2時30分(最終更新 3月21日 2時40分)

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