化学研究ライフハック: Evernoteで論文PDFを一元管理!
Mar
12
2009
電子ジャーナルが発達した現在、「論文を読む場所=図書館、論文の媒体=紙雑誌」という理解は既に過去のものとなりつつあります。 おそらくほとんどの方はインターネットを使って論文検索をし、必要な部分だけ論文PDFをダウンロードし、ラボのプリンタで印刷して、もしくはPDFのままPC上で読む、というスタイルをとっていることでしょう。
とはいえ、入手した論文PDFファイルは一体どうやって整理・管理すれば良いのでしょうか? ネットサーフィン的ノリで論文PDFをどんどんダウンロードするのは良いですが、日々増え続ける一方のファイルを目の前にして、これはかなり大きな懸案事項となっているはずです。
几帳面な人ならば、論文の内容や発表年ごとにフォルダ分けして整理してたりするようです。しかし筆者のようなものぐさ君には、どうしてもそれができませんでした。フォルダを作って分類しても、論文の内容やタイトルなどで検索できない、というのも辛いところでした。「あれ、数週間前ダウンロードした論文、どのフォルダに入れたっけ???」などと考え込み、そのあげく見つからず、結局同じPDFをダウンロードし直す、などということも沢山ありました。
しかしEvernoteというソフトを導入してから、こういった問題に悩まされることがほぼ無くなりました。Evernote自体はオンラインメモ用途を志向したフリーソフトなのですが、未来指向型の機能が沢山搭載されています。それを上手く使えば、とても簡単に論文管理ができるのです。
今回は「化学研究ライフハック」シリーズの一環として、Evernoteを使った論文PDF管理法を紹介してみたいと思います。
Evernoteは2009年3月現在、英語版のみ公開されています。とはいえメニューの日本語化は出来ますし、直観的に使えるユーザーフレンドリーな構成になっているというのもあって、さして現実的な問題ではありません。日本語解説が載っているサイトを、関連リンク欄に紹介しておきます。ソフトの概要やセットアップ法などについては、そちらを参照してください。
それでは具体的な論文管理法について述べたいと思います。ソフトをインストールした後、以下のようにすればOKです。(Windows環境の場合)
① 論文PDF用の新しいNotebookを作り、非同期設定にする
② 作ったNotebook内に新しいノートを作り、PDF をドラッグアンドドロップで貼り付ける
③ PDFを添付したノートに、任意のタグ・コメント・タイトルetcを記入する
これだけ。とても簡単です。①はソフト導入直後にやってしまえばよいので、毎回の作業は実質②③のみです。
適切なタグ付けをしてやれば、論文を自分なりにゆるく分類でき、後々便利になります。検索時に便利になるよう、筆者はジャーナル略称(JACS, ACIE,OLなど)をタグとして付け加えるようにしています。「あとで読む」「これはすごい」「くだらない」などの簡易感想タグも意外と役立ちます。発行年やAuthor名など、既に論文中にある情報は、あえてタグに書かずとも問題ありません。PDF内のテキストも検索対象になります。
注意としては非同期設定を忘れずに行うこと。デフォルトではWebストレージと同期する設定になっており、また一アカウントあたりのアップロード制限があります。PDFまで含めて同期させてしまうとすぐ使用制限を超えてしまうのです。
Evernoteに放り込んだPDFは、元ファイルとは別の独自フォルダにコピーされます。このため元のファイルを消してしまっても問題ありません。デスクトップに散らかっていたPDFファイルをEvernoteに放り込んだ後、完全に消してしまえば綺麗なデスクトップもすぐそこです。
Evernoteの検索機能は大変強力です。たとえば、筆者のEvernoteで"total synthesis baran review 2009"という検索ワードを入れてみると、200以上のPDFの中から、望みのAcc.Chem.Res.をすぐ見つけ出すことができました。著者・タイトル・ジャーナル名・発行年月日などについての記憶があいまいな場合でも、論文の内容さえ記憶にあればなんとか探し出してくることができます。
●基本的にPDFをEvernoteに放り込むだけでよく、超カンタン●PDFの文字列も検索対象になるので、キーワードを考えて登録する必要がない●Supporting Informationや動画などの補助ファイルも、論文とセットにして保存可能●感想・コメントをPDFの横に書いておけば、読後のインスピレーションを記しておくことができる●紙文書をスキャンしてPDF化したものでも、自動文字認識機能(OCR)によって検索可能●内容をテキスト検索できるので、論文の分類・配置に気を遣う必要がない●情報が一元化され散逸しないので、管理とバックアップが簡単になる
Endnoteなど有名論文管理ソフトでも、似たようなことができます。筆者もEndnoteトライアル版を使ったことが実はあるのですが、何となく使い勝手が良くなかった感じなんですよね・・・。勿論Evernoteに無い機能もある一方で、論文へのタグ・コメント付けなどが、とてもやりにくかった記憶があります。何より、Endnoteはお高い有料ソフトなんですよね。貧乏学生時代の自分が敬遠してしまったとしても、致し方ないことかと・・・。
Evernoteは無料ですし、アイデアメモにも使えるソフトです。論文管理に使う気が無くとも一度は試してみるとよいでしょう。応用性も高く、工夫次第でいろんな使い方ができます。一度その利便性を知ってしまえば、おそらく手放せなくなるでしょう。おススメです。
- 関連リンク
Evernote.com
公式サイト。ソフトのダウンロードとアカウント登録はここから行えます。
公式サイト。ソフトのダウンロードとアカウント登録はここから行えます。
Evernoteで自分の脳を拡張する(TechCrunch.jp)
脳をバックアップしてくれるツール「Evernote」(WiredVision)
Evernoteの日本語解説。是非一度読んでみてください。きっとあなたも使ってみたくなるはずです。
ここで書いたのと同様の論文管理法が、分かりやすく解説されています。かなり参考にさせてもらいました。
インストール手順からメニューの日本語に至るまで、詳しく解説されています。
新着論文をRSSリーダーでチェックするようにすれば、時間を大幅に節約できます。本記事ではその方法を詳しく紹介しています。
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