瀬戸大橋など本州四国連絡道路の通行料金の大幅値下げが、三連休初日の二十日スタートした。山陽自動車道など地方圏の一般高速道路の値下げは二十八日から始まる。利用者増が見込まれ、各地は観光客でにぎわうと予想される。高速交通網が整備され、中四国の交通結節点である岡山にとっては地域発展の絶好の機会だ。
高速道路料金値下げは国の追加経済対策の一環で、本四道路ではETC(自動料金収受システム)の利用を条件に、普通車、軽自動車、オートバイの通行料金が休日(土日祝日)は上限千円となった。地方圏の一般高速道路は、休日上限千円で乗り放題となる。
値下げといってもETC搭載車に限られていることや、今回は観光バスが対象になっていないなどから瀬戸大橋の利用増効果は限定的との見方がある。だが、カー用品店にETC車載器の取り付けを希望する客が殺到するなど、値下げに対する関心が急速に高まっている。車載器購入への助成制度が十二日から始まったことが後押しになっているのだろうが、あまりの人気に車載器が品薄となり客の注文に応じきれない状況という。盛り上がりは喜ばしい。
昨春、開通二十周年を迎えた瀬戸大橋は、車の利用が伸び悩んで開通当初の予測を大きく下回っている。理由は割高な通行料金にあるとされてきた。今回の値下げによって阻害要因が薄れたといえよう。問われるのは、値下げ効果を生かしてどこまで通行台数の増加に結びつけられるかである。岡山や香川県がこれまで以上に広域からの観光客を呼び込める地域の魅力を高めることが重要だ。
瀬戸大橋の通行料金値下げに合わせ、岡山県観光連盟は香川県観光協会と共同で土産物店などのレシートを集めて応募すれば特産品などが当たる「岡山・香川観光レシートラリー」を始める。瀬戸大橋唯一のパーキングエリア(PA)がある坂出市・与島PAでも今月から初のフォトコンテストを開催している。しかし、車利用者の関心の高さに比べると、受け入れ観光地側の熱気が今ひとつ感じられないのが残念だ。瀬戸大橋開通時の熱狂ぶりを思い出し「第二の開通」と位置付ける取り組みが必要だろう。
全国の観光地も、地方圏での休日割引を心待ちにしていることだろう。観光客誘致競争が激しくなる。岡山、香川両県は誘致合戦に遅れをとらないよう、一層の連携を強めたい。
国にとっても衝撃的といえる判決が出た。原爆症認定を求めた広島第二陣訴訟で、広島地裁は原告のうち三人を原爆症と認めた上で国に計九十九万円の国家賠償を命じた。一連の集団訴訟で国家賠償が認められたのは初めてである。
訴訟は広島で被爆した男女計二十三人について、本人や遺族が認定申請の却下処分の取り消しと一人三百万円の損害賠償を求めていた。
判決は、原告五人の慢性肝炎や肝硬変、白内障などによる原爆症申請を却下した処分は、放射線起因性が認められるのに認めなかった点で違法と認定。うち三人について、厚生労働相は職務上の注意義務を尽くさず漫然と認定申請を却下したとして国家賠償法上の違法と断じた。
一連の集団訴訟の判決で国は十五連敗となったが、弁護側が「画期的」と言うように、敗訴を重ねながらも審査基準の見直しに消極的だった国の姿勢を厳しく糾弾したものといえよう。
原爆症認定をめぐっては、国の基準に対して司法の判断が常に先行してきた。国は昨年四月、条件を緩和した新基準を導入したが、「積極認定」の対象はがんなど五疾病のみ。その後も敗訴判決が相次いだため国は検討を始めたものの、実質的な審議は進んでいなかった。
被爆者援護法は「国の責任において、高齢化の進行している被爆者に総合的な援護対策を講じる」とする。認定制度の根幹にあるのは、救済すべき被爆者は認定するという精神だ。
認定の審査待ちは約八千件といわれ、集団訴訟を起こした約三百人のうち約六十人は亡くなっている。認定のさらなる長期化は許されまい。国は司法に叱咤(しった)されるまでもなく、適正な基準の再見直しと訴訟の全面解決を目指すべきだ。
(2009年3月20日掲載)