お料理は目の前で全てご主人が調理されます。短冊におろした魚は皮を引かれ柳刃包丁で手際よく刺身に盛られていきますが常に緊張の連続であります。また魚は全て氷を使った昔の冷蔵庫に保管されているのが面白い! こちらが質問しない限りご主人は口を開きません。産地に値打ちを付けたり大げさに出所を吹聴することもありません。寡黙ながらその包丁捌きは実にお見事、料理人の姿勢としてはまことにご立派であります。マスコミの取材は、今のお客さんを大切にするため敢えてその申し出を断っているのも私たちにとっては有難い。

先付けだけでも4種類出てきます。一所に盛り合わせはせず一皿一皿供するのがここのスタイル、先ずは「のれそれの旨出汁、振り柚子」、器も春を感じさせてくれます。

続いて「由良の紫海胆と淡路の針烏賊」、いわゆる烏賊海胆ですが天然海水塩と酢橘で。

さらに「石鯛昆布〆山椒挟み」、舌触りが実に滑らかな石鯛の昆布〆に山椒の実の佃煮が挟んであります。美味!

先付けの締めくくりは落ち鮎位の大きさの「子持ち公魚の生姜煮」、まさにお化けワカサギです。酢で炊いてから煮汁を捨て生姜醤油で味付けしてありますが残念ながらシャンパーニュとの相性は良くありません。次のボルドー・セックとはとてもよく合うのが不思議。

お椀は「鱚と春菊、土筆に木の芽」、上品な御出汁はさすが吉兆仕込み。

向こう付けも2種類目の前で作られます。先ずは3.2キロという非常に大きな天然鯛、背と腹をそれぞれ盛られますが醤油、ポン酢そして塩が用意され何で食べても自由というのが有難い。

今日の前半のハイライトはまな板の上で踊り狂う大きなトリガイ! 固いものが多いのですが出てきたのはとても柔らかく甘みが凄い! 山葵だけで食べるのがベスト。

凌ぎははじめに「仔鮎の南蛮漬け」、もちろん頭から尻尾まで全て食べられます。冬が長かったはずなのですがかなりの大きさに成長しているのに少し驚きです。

次が箸休めでしょうか干し柿と胡桃は粉をまぶし唐揚げにして食べやすいようにカットされています。
お料理はまだまだ続きます。

焼き物は「鰆木の芽焼、新生姜添え」、とてもふっくらした身の鰆で旨い!さすがは春の魚の代表です。

八寸とは名ばかりですが「玉筋魚釘煮」、これでいかなごと読みますが瀬戸内では「新子(しんこ)」と呼ばれ今が最盛期の春の風物詩の一つ。

そして「甘長唐辛子の焼き浸し、糸削り」、こんな一皿も串打ちから全て目の前で調理されていくので見ていて飽きません。

後半での圧巻は「鯛の骨蒸し、白菜、振り柚子」、大きな鯛の骨付きのアラを豪快に蒸し上げます。天然の鯛の旨味が全て味わうことが出来て嬉しい!

〆の前に天麩羅がまたまた目の前で揚げられるのですが、出色はこの蛍烏賊!

つぎに大きな椎茸ですがこれは油を吸いすぎるので少し問題ありです。

最後に一寸豆と細長いのはトリガイのヒモ。これもなかなかのお味です。

食事は「浅蜊ごはん」、土鍋で炊かれるのでおこげも頂くことが出来ます。

デザートはオレンジゼリーの茶巾絞り。
ワインは次の通りです。
1. Champagne Christian Bourmault Cuvee Grand Eloge Blanc de Blancs Brut NV
2. le G de Chateau Guiraud 2006 AC Bordeaux
3. Sancerre Blanc 2006 Domaine des Quarterons
4. Chateau Lanessan 1990 AC Haut-Medoc