今週のお役立ち情報
著作権法改正案でネットの流通は変化するか
2009年03月15日01時53分 / 提供:ITmedia
"設立会見の様子"
●ダウンロードは違法化されるが罰則規制ナシ
2006年4月から2008年12月にかけて開かれてきた文化庁長官の諮問機関・文化審議会著作権分科会の「私的録音録画小委員会」。12月16日に幕を閉じた小委員会でまとめられた報告書が、1月26日に開催された著作権分科会に提出された。それを受けて文化庁が著作権法改正案をまとめ、3月10日の閣議決定へとつながった。
しかし、3年にわたって議論してきた結果は「合意が得られず申し訳ない」といった、中山信弘主査の言葉で幕が閉じられたという。
この中では、デジタル社会が進む中でハードディスクレコーダーやiPodなどへ課金するという提案も出ていたが、権利者側とメーカー側の合意形成はできなかった。補償金課金に関しては、MIAU(インターネット先進ユーザーの会)が3月9日、文化庁に提出した「補償金の規定を著作権法から外し、家電メーカーと権利者との契約上の取引にすべき」と提言しているパブリックコメントを公表したが、今後どのようになっていくのか注目だ。なお、Blu-ray Disc課金に関しては2008年6月に文部科学省と経済産業省が合意して、4月1日スタートに向けて文化庁が準備しているが、メーカー側の強い反対があるという。
逆に、違法録音・録画物のダウンロードを違法化する論議に関しては、大勢が適当としたことが、今回の法改正の目玉ともなっている。
しかし、オルタナティブブロガーの栗原潔氏は、「この法改正が本当に効果的か疑問」という。仮に違法ファイルのダウンロード違法化が実施されても、70%ものユーザーは、CDやDVDなどの購入機会が変わらないと答えたという調査結果があるのだ。
元々、違法ファイルのダウンロードを違法化したいと考えるきっかけは、それによって不利益を被ったと考える著作権者が存在していることにある。つまり、違法ファイルのダウンロードを違法化したところで、正規品の販売が増加しなければ意味はない。タダなら入手したいが、金がかかるならいらないと思われてしまう程度のものしかリリースしていないならば、何も変わらないのだ。
もちろん、先の調査対象が、「違法ダウンロードを行っている」層でなければ、法改正による効果を図ることは難しいが、大勢は変わらないだろう。
3月6日には、JASRAC(日本音楽著作権協会)や音楽配信事業者団体などが、楽曲のネット配信に伴う著作権処理を効率化するための一般社団法人「著作権情報集中処理機構」を共同で設立すると発表した。ユーザーにとっても。クリエイターにとっても、良い方向へ進む形になればいいのだが、実際はどうなるのだろう。
さて、このダウンロード違法化だが、確かに「違法」とはなるが、罰則規定はない。つまり、この行為は違法であると規定しただけなのだ。結局、ザル法になってしまうという危惧もあるが、違法ファイルを入手してはいけないという意識を植え付けるには意味がありそうだ。
1つ気になることがある。それは、YouTubeなどの動画サイトで違法ファイルがアップされているのを閲覧した場合はどうなるか、ということだ。結論から言えば、ブラウザで閲覧している分には問題はない。ただし、キャッシュから別のフォルダへ移動・コピーを行ったり、ダウンロードツールを利用して保存したりすると違法になってしまう。要するに、ユーザーが意識的に違法ファイルを保存する行為が問題になるのである。
これと関連して、検索エンジンのキャッシュなどに関しては、著作権者の許諾を得ずに行えると規定された。いわば「検索キャッシュの合法化」だ。これにより、著作権法違反を考慮してサーバーを海外に置くなどの対応していたものが、国内でも問題なく行えるようになるので、新サービス提供などの活発化につながるという期待があるようだ。
さらに改正案には、2月24日に文化庁が明らかにした、著作権者不明の著作物などを二次利用する際の「裁定制度」も盛り込まれている。通常、著作物を二次利用する場合は、関係者全員の許諾が必要となる。「裁定制度」では、著作者が不明もしくは所在が分からない場合、文化庁に供託金を支払うことで、著作者に代わって許諾することになっている。
現行の「裁定制度」では、著作権者のみが対象だったものが、改正案では出演者や歌手などといった著作隣接権者も対象となった。これによって、過去の番組などのネット配信やDVDなどといったソフト化がやりやすくなることも期待される。
●海外では罰則も
ここまで見た限りでは、ユーザーにとってはあまり不利益を起こすものでもないように感じる。しかし、海外では少し様相が異なるようだ。フランス政府は、違法ダウンロードしたユーザーをインターネットから締め出す法案を出したが、それに対して3月10日、消費者団体と反対派議員が批判を浴びせたという。
日本の改正案には罰則がなかったが、フランスでは、最終的に2ヵ月〜1年間にわたってインターネット接続を遮断するという。この法案に関しては「施行が困難」という批判があるというが、日本への影響も含めて今後を注視する必要がある。
今国会で提出されることになった著作権法改正案であるが、昨年の段階で文化庁の川瀬真・著作物流通推進室長が「政局の関係もあり、法案を実際に提出できるかどうかは何ともいえない」と指摘したように、今後の政局の流れによっては、2010年からの施行ができるかどうかは未知数だ。
とはいうものの、デジタルの世界は日々、進化していく。ズルズルと決定が先送りされていけば、改正された頃には、内容が意味をなさなくなるかもしれない。ぜひ、現実に即した内容を定めてほしいと願うばかりだ。著作権法改正によって、ネットでの流通に変化が起こるのかどうかに注目していきたい。
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