タケルンバ卿日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-03-21

着うたを扱わなかった理由

先日の音楽業界についての記事ですが。

ブックマークコメンツをはじめ、「何故、着うたとかを含まないのか」と。まあ突っ込まれたわけなんですが、気付かなかったわけじゃないんですよ。

id:takerunbaレコードCD生産、販売数にダウンロードコンテンツを合算しなかったのは、日本レコード協会データ自体がCDレコードダウンロードコンテンツを分けて表にしているからではないか、と思う。

id:takerunbaのエントリが変な事になっている、Disりたい - 煩悩是道場

これは理由の一部ではあるんだけどね。

データとしての一貫性を保てない

ダウンロードコンテンツってのは、ここ最近概念だし、昔にはなかったもの。これを混ぜて論じるよりも、CDレコードという既存の物流での商品を軸に考えたほうが、時系列で比較できてわかりやすいと思ったんだな。「過去10年」ってくくりにしたところで、10年前に着うたiTunes Storeもないわけで。

現実データ元にした日本レコード協会サイトでも、ululun氏が指摘するようにデータを別に分けている。そして何よりも問題なのがだ。

2005年からのデータしかない。

……2004年までは?

データが別になると、こういう問題が出てくる。比較しようにも、比較対象存在しないわけなんで。

2002年12月にKDDIauブランドで開始し(CHEMISTRYMy Gift to You」が世界初着うたである)、2003年12月よりボーダフォン日本法人(現ソフトバンクモバイル)、2004年2月よりNTTドコモも同様のサービスを開始、同年12月よりボーダフォン日本法人Vodafone 3G(現SoftBank 3G)端末向けにロングバージョンを開始している。

着うた - Wikipedia

着うた」自体は2002年からはじまっているのに、データ2005年から。となると、ダウンロードコンテンツを加味した場合、2005年以前がどうしても不正確になる。

もちろん2005年以前のデータ自分で調査し、割り出せばCDなんかのデータと同様に、時系列の比較ができる。が、さすがにそこまでやってられん。データネットに転がっていれば自前で計算するけど、日本レコード協会サイトデータ元が示されていない以上、そこから先を調べるのも難しいし。さすがに限界がありますよって。

データ量が少ない

あとだ。そもそも公表されているデータ自体少ない。公開されている4年分のデータで、何が言えるかという現実的な限界もあるわけで。概念もない。データも少ない。ここから強引に結論を導くのはあれかなあと。そういう判断があったわけでして、ええ。

だいたいタイトルに「どうなるんでしょうね」って書かれていて、当の本人も自分のわかる範囲でのデータを並べる以上のことは出来なかった的なことを言っているのだ。

おごちゃんの雑文 » Blog Archive » しょせんブログだろ?

なので、全体がこういう弱気な感じになったわけです。仕方ないんですよ。わからんもの。わからん部分があるんだもの。わかるほどのデータがないし、わかるほどの器量もないので。「結論がない」という指摘は至極ごもっとも。でも、無理に言い切るよりはいいんじゃないすかね。意外と慎重な面もあるのよ、ワタクシ。

ダウンロードコンテンツは伸びている!

力強く言えるのは、このくらいなものだしなあ。わざわざ言うほどのことでもないね。皆さんご存知の通りですよ。今までになかったものをみんなが使っている。その分のパイは増えている。当たり前ですね。

音楽市場の退潮は明らか

ただ、まだまだダウンロードコンテンツパイは小さいんですよ。現状としては音楽市場全体の中で、CDなどのリアル物品が占める割合は大きい。そしてダウンロードコンテンツがあろうがあるまいが、音楽市場全体がしぼんでいるのは明らかなわけですよ。

(図1)日本音楽ソフト生産金額の推移(単位:百万円)

f:id:takerunba:20090320165907p:image

1998年をピークに下る一方。

(表1)日本音楽ソフト生産金額の推移(単位:百万円)
1979262,589
1980292,844
1981288,65
1982281,037
1983281,663
1984274,111
1985281,337
1986298,920
1987311,584
1988342,947
1989383,332
1990387,770
1991449,252
1992478,247
1993513,679
1994519,246
1995574,031
1996583,862
1997588,019
1998607,494
1999569,559
2000539,816
2001503,061
2002481,454
2003456,179
2004431,269
2005422,210
2006408,408
2007391,113
2008361,775

こちらは過去30年間のデータを表にまとめたもの。1998年に向けて増加し、そこを境に減少していった感じがよくわかる。

ちなみに2007年の額は1990年1991年の間に位置し、2008年の額は1988年1989年の間となる。ともに約20年前の数値。「失われた10年」とはよく言う話だけども、10年どころか、20年が失われた形。

これは着うたが生まれる前からの傾向であるので、着うたの影響を考慮に入れなくても、十分に音楽業界の退潮傾向は言えるのではないですかね。

ダウンロードコンテンツを含めても芳しくない

それにだ。そもそも、ダウンロードコンテンツを加味しても、そんな芳しくねえんです。

(図2)日本オーディオレコード生産金額・有料音楽配信売上金額の推移(単位:億円)

f:id:takerunba:20090320234830p:image

2005年2006年2007年とほぼ横ばいで推移してたけども、2008年でついに減少。ダウンロードコンテンツの増加分でも、CDなどでの減少分を埋め合わせられなかった。

ただ、いずれにせよダウンロードコンテンツデータ2005年以降のもの。たかだか4年程度のデータ。これだけで断定することはできない。これだけでネガティブな話にも持って行きづらいし、かといってポジティブな話にもできない。2005年からの3年間の横ばいという事実をもって、今後もなんとかなるという発想をするのは、さすがに楽観が過ぎるような。現実2008年は減少してるわけだしさ。

それに2004年ダウンロードコンテンツの数字がないだけで、それを加算すれば、実際は2005年の数値を上回ってたかもしれん。数字がない以上は推測にしか過ぎないけども、推測にしか過ぎないということは、いずれの結論も導けないっちゅうことですよ。不明確な事実からは、明確な結論は導けない。

ただ、このアメリカの推移は示唆的ではあるけどね。

(図3)アメリカ音楽出荷金額の推移(単位:百万ドル)

f:id:takerunba:20090320234831p:image

2004年2005年と横ばいだったし、2006年も微減でおさえていたが、2007年でがくんと落ちた。2008年データがないので何とも言えないがアメリカのような現象が日本で起きないとは言えない。その可能性はある。

ただ、現状で手に入るデータと、俺の処理能力では、明確な結論を得ることはできないし、証明することもできない。これが冷厳なる事実。何かを言い切れるほどの根拠がない。だから書かない。着うたに関して言及しなかったのは、そういう事情があるのでございますよ。

現在学生社会人になったとき、大きな変化が起きる可能性がある。

id:takerunbaのエントリが変な事になっている、Disりたい - 煩悩是道場

結論ではこう書きましたが、携帯電話着うたを買ったり、iTunes Storeで曲を買ったり、YouTubeニコニコ動画で歌を聴くのが当たり前の世代が大人になり、自分で使えるお金を手にしたとき、消費動向にどういう変化があるかというのは、現状では読めない。少なくても俺はわからん。

なので、わかる人は是非分析してちょうだい。わしゃ一石は投じた。続きを是非よろしく。

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