【編集日記】(11月12日付)
本来なら人間の尊厳を守る心を養う集団社会でもある教育の現場で、追いつめられた苦を断ち切ろうとする自殺がとまらず、「いじめ自殺」は深刻さを増すばかり▼大阪府富田林市で飛び降り自殺した中学1年女子は「自殺します」の遺書も残し、同級生は小学6年のときからいじめを受けていたと証言しているという。埼玉県本庄市で首をつって自殺した中学3年男子は同学年の生徒から金銭を要求され、言葉の暴力もあったらしい▼一方、いじめを受けたからと学校で自殺を予告する手紙が伊吹文明文部科学相に届いたが、今度は同じ自殺予告の手紙を群馬県教育委員会が受け取り、手書きで「最近いじめが原因の自殺がブーム」といったことも書かれていたという。いじめの言葉が独り歩きしないように見抜く眼力も欠かせなくなった▼「中原よ。地球は冬で寒くて暗い。ぢや。さやうなら」は草野心平の「空間」だが、学校も寒くて暗い空間になりつつある感じさえする。5年の女子児童が同級生から現金を脅し取っていた北九州市の小学校校長も命を絶っている▼歌人与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」に「親は刃(やいば)をにぎらせて、人を殺せと教へしや、人を殺して死ねよとて 廿四までを育てしや」とある。戦場で死ぬなと弟に説いた反戦詩として有名だが、この心情は他人をいたわり、命を慈しむ思いとも重なる▼陰湿ないじめと対決するためにも社会にひそむ心の刃をとぐ根を抜き取るしかない。
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