小沢一郎・民主党代表の資金管理団体「陸山会」を巡る政治資金規正法違反事件で、同会の会計責任者で公設第1秘書の大久保隆規容疑者(47)が、2003年9月の旧自由党と民主党の合併を機に、西松建設に対し、献金先を旧自由党の政治資金団体から陸山会へ切り替えるよう指示していたことが、関係者の話でわかった。
今回の事件では、同年以降の陸山会への献金が同法違反容疑に問われている。東京地検特捜部は、合併で大所帯になる民主党の政治資金団体が使いにくくなるため、自由度の高い陸山会を受け皿に替えたことが、違法献金につながったとみている。
政治資金収支報告書などによると、西松建設は1994年、旧新生党の政治資金団体として同年に設立された「改革国民会議」を窓口とする、小沢代表側への献金を始めた。同会議はその後、小沢代表の所属が旧新進党、旧自由党に変わっても存続。2002年まで西松建設やダミーの政治団体「新政治問題研究会」の名義などで、年間324万〜3588万円の献金を受け続けた。
このうち、97〜01年は、同会議から陸山会に年間500万〜3550万円が寄付され、99年には、西松建設側が同会議に献金した3588万円とほぼ同額の3550万円が、同会議から陸山会に寄付されていた。
関係者によると、転機になったのは03年9月の旧自由党と民主党の合併。新しい民主党は小沢代表以外にも有力政治家を抱え、旧自由党に比べ、「小沢色」が薄まった。これを受け、大久保容疑者は、西松建設側との話し合いの中で、献金先を同会議から陸山会に移すよう指示したという。
西松建設側から民主党の政治資金団体「国民改革協議会」への献金は03年以降、一度もない。同協議会への献金では資金の自由度が低くなると考えた大久保容疑者が、献金の受け皿を小沢代表の資金管理団体に替えたとみられる。だが、政治資金規正法の改正で、00年以降、政党や政治資金団体以外で企業献金を受けることは禁じられていた。今回の事件は、陸山会が03〜06年に、ダミー団体名義で西松建設から計2100万円の献金を受領し、収支報告書に虚偽の記載をしたというもので、大久保容疑者による献金窓口の切り替えが、違法献金に直結したことになる。
03年以降の献金窓口の変更などについて、小沢事務所は「担当秘書が捜査対象となっているほか、陸山会の事務所が捜索を受けて資料が手元にないため、お答えできない」としている。
◆政治資金団体=政党に資金援助するのが目的の政治団体。各政党ごとに一つ指定し、企業献金を受けることができる。自民党の政治資金団体は「国民政治協会」、民主党は「国民改革協議会」。旧自由党の政治資金団体だった「改革国民会議」は03年の同党と民主党の合併により、指定が取り消された。
|