16歳の時、役者になると決めて入った世界だったのですが、演技力も何もないまま、人気だけに支えられて立っている自分がいて。どうも自分が目指していた立ち位置と違うと思ったし、まあ、正直、疲れていたのもあった(笑い)。それで一度、登った山を下りて、新たな気持ちで違う山を登ろうと思い、26歳のときアメリカへ行った次第です。
自分の演技や作品が多くの人の活力になったり、次の一歩を踏み出そうと思ってくれるきっかけになったり。そんなふうにお客さんの気持ちや反応を実感できたときに自分の存在意義を感じる。そこでしょうか。プロボクサーの内藤大助選手が「こんなオレでも応援してくれる人がいるから頑張れるんだと。かっこつけでも何でもないよ」とコメントしていたのですが、まさにこの言葉どおりですよ、僕も。
そうですね。何となく40代はこうかなあという期待というか、第六感として感じるものはありますが、まだ漠然としています。今年かかわった作品に対して、自分がどう挑んでいくかによって、手渡される40代の切符も変わってくるような気はしています。
たぶん、40代には40代の壁があり、50代、60代にもそれぞれ壁があると思う。でも、それらにちゃんと向き合い、ずっと立ち続けていられる役者でいたい。そう、役者として「鉄人」でありたいですね。
強くないですよ。本当はめちゃくちゃ弱い人間です。練習だってけいこだってサボれるものならサボりたいし(笑い)。でも、サボっていたら、そんな本来の弱い自分に戻ってしまう。それが嫌だから、自分に対して「コノヤロー!」って言い続けながらやっているだけで。中日ドラゴンズの落合監督が選手時代に「素振りを1本でも多くやったヤツが勝つ世界」と話していたことがあったけれど、何でもそうなんですよね、結局。「これでいいや」と思って、そこでやめるか、いや、あと1回やっておこうと思うか。
そう。関係ないかもしれないけど、僕は子どもの頃から偶数より奇数が好きでね。決して不平等な数字じゃない気がするんです。10より11、素振りも100回でやめずに、101回を目指す。奇数は次への可能性を広げてくれる気がします。
僕なりのロック、かな。小学校1年のとき、下校途中にふと空を見上げて「何なんだ?オレって」と思ったことがあって、あのときからなんか今の自分に通じる「何か」、自分だけのロックが始まっていた気がする。で、それからずっと、何かあるたびに「これでいいのか?」「これしかできないのか?」と自分に問いかけて生きてきた。そうすると不思議なもので、そんなときに限って新しい人や作品との出会いがあって、新しい自分が始まったりする。
実はコンスタントに小さなライブハウスでときどきライブして歌っています。なんか歌っているときが一番楽しいみたいです、僕。昨年は自主制作でミニアルバムも作りました。自分自身の中でバランスをとるためにも音楽活動は不可欠だと思っています。というか、よくよく考えるとね、僕自身、一番好きなのは実は音楽かもしれない。基本的に俳優は職業だと思っているけれど、音楽は違う。仕事にしてしまうと「〜しなくちゃいけない」という面が出てくるけれど、音楽に対してそういう感覚を持ちたくないので、とくにどこかと契約したりもせず、気ままに、演奏したいときに演奏したい仲間と一緒に続けているって感じですね。
やはり「家」かな。投資という意味では「表現者になったこと」。財産は「出会えた人たち」。
尾崎秀実(ほつみ)。5月27日から始まる舞台「オットーと呼ばれる日本人」で僕が演じる、実在した人物です。今から70年前、激動のあの時代、自分の意志を持つことが困難だった時代に、自分の考え方、生き方を貫いた彼に共感せずにはいられない。今の自分の生き方に見事なまでにリンクしています。
片岡義男さんの小説です。兄貴の部屋に何冊かあって、多感な思春期の頃、よく読みました。ジーパンにTシャツ、バイク、そして、バーでマティーニ、みたいな世界にあこがれたというか、いつかこういうおしゃれな大人になりたいなと思っていました。
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