日本はたしかに負債、借金は多いが、それ以上に金融資産も多く、アメリカやヨーロッパの国々は金融資産をあまり保有していない。つまり日本の財政赤字の実情は世界で最小ともいえるのです
アメリカのエコノミストまでがしたり顔に日本経済改革の必要性を力説もしてくれて、ウォール街などでは日本溶解(メルトダウン)、日本経済完全崩壊の根拠のひとつとして、この日本の長期債務の増加数字がもてはやされている。一九六五年には国家債務がゼロであった日本が今では世界最悪の状況になってしまった、とアメリカのアナリストたちははしゃいでいる。
しかし第一勧銀総合研究所山家悠紀夫(やまべゆきお)専務理事などが最近の雑誌論攷でわかりやすくパラフレーズし紹介しているが、これには数字のトリックが使われている。
日本とアメリカの二国の数字にはヨーロッパとは方式が異なるせいもあってのことですが、社会保障基金の数字が入っていない。これを含めると日本は三・三パーセントとなり、アメリカも二・〇二パーセントになるが、日本はドイツよりも若干よくなってしまう。
しかも純財政赤字残高とGDPを比較すると一九九五年の日本が一〇パーセント、フランス三五パーセント、イギリス四二パーセント、ドイツ四四パーセント、アメリカは先進国中最悪の五〇パーセントになる。
さらに政府の保有する金融資産を引いた純債務は一九九六年末で七十六兆円で、GDP比で一六パーセントとなり、他の先進国が四〇パーセント台になっているのと比べると、日本ははるかに勝れています。日本はたしかに負債、借金は多いが、それ以上に金融資産も多く、アメリカやヨーロッパの国々は金融資産をあまり保有していない。つまり日本の財政赤字の実情は世界で最小ともいえるのです。
『宣戦布告「NO」と言える日本経済』(光文社)
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