謝罪にネガティブな米国
米国ではそもそも自分たちが生きてはいなかった遠い過去の出来事に責任を負って、謝るという行為への抵抗が強い。リベラル派の政治評論家のリチャード・コーエン氏が奴隷制への謝罪の適否を論じて、以下のように主張していた。
「自分たちがなんのコントロールも持ちえなかった過去の行動や政策に対し、いまその罪を受け入れることはできない」。
この言は、今、日本に慰安婦問題で謝罪の表明を求める米国議会のマイク・ホンダ議員らにそのまま突きつけたいところである。
米国ではこのように国家の謝罪という概念に対してネガティブな反応が強いのだ。特に対外的な謝罪への拒否反応が強いといえる。その理由としては次のような諸点がよく指摘される。
「過去の行動への国家としての謝罪は国際的に自国の立場を低くする自己卑下につながる」。
「国家の謝罪は現在の自国民の自国への誇りを減らす危険がある」。
「国家としての過去の出来事への謝罪はもはや自己を弁護できない自国の先祖の名声、そして未来の世代の名声のいずれをも傷つける危険がある」。
米国のこうした思考や感覚からすれば、首相や政府が毎年のように対外的な謝罪を続けている日本の言動は当然、異質と映るだろう。
その「米国からみた日本の謝罪」は『第二次大戦への日本の謝罪』という学術書に集約されている。2006年はじめに米国で出版された同書の著者はジェーン・ヤマザキという女性の新進日本研究学者である。
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