なわのつぶや記

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● 竜であり蛇である?われらがアイク   2007年9月4日(火)
  デーヴィッド・アイクの『竜であり蛇であるわれらが神々』(英文原題は『マトリックスの子供たち』)を書店で立ち読みをしてきました。上巻にさっと目を通した感じでは、購入してまで読みたいと思う本ではありませんでした。が、残念ながらその日の朝の段階で、既に上巻をアマゾンで注文してしまっていたのです(昨日届きました)。
  率直な感想は「アイクの正体見たり…」という感じです。アイクこそ、この本のタイトルのように、その魂は竜であり、蛇なのではないだろうか‥‥と思いたくなるような内容の羅列でした。ひとくちにいうと、「傲慢極まる表現が多い」ということです。
  家に帰って、再度『
大いなる秘密』(太田龍・監訳/三交社)の上・下巻を紐解いてみました。‥‥謎が解けました。アイクがなぜこんなにも「新約聖書は架空の物語である。イエスは実在の人物ではない」ということに執着するのか――その理由がわかったのです。以下は私が導き出した結論です。
  まず、アイクはたぶんユダヤ人だろうということです。少なくともユダヤ人の血を引いているのは間違いないと思います。David が「ダビデ」というユダヤ姓であることもそれを表していますが、気になるのは彼が著書の中で「世界を動かしている黒幕がユダヤ民族である」という一般的に出回っている説を執拗なまでに否定している点です。
  また、ユダヤ教を信ずる人たちが長年にわたってキリスト教およびキリスト教徒を攻撃し、既にある時点からは完全にキリスト教の中枢に入り込んで、ユダヤ化させてしまったと指摘されている点については全く触れていません。それどころか、「ユダヤ人も他の民族と同じようにレプティリアンに操られている犠牲者なのだ」と言いくるめる有様です。このあたりの論理の展開はたいへん巧妙です。
  『
大いなる秘密(下)世界超黒幕』の末尾にある索引の「ゆ」の項に「ユダヤ教・ユダヤ教徒」「ユダヤ人」の2項目が載っています。そのすべてのページをめくって内容を吟味してみました。すると、どのページも「ユダヤは世界の黒幕とは関係ない」という“ユダヤ擁護”の内容で埋め尽くされているのです。以下にその一部を抜粋してご紹介します。

  イギリスとオランダ間の本当を言えば、その両国民にはまったく関係のないことだ。レプティリアンやブラザーフッドに騙されるのはもうやめだというなら、「あれはイギリス人だ」とか「あれはオランダ人だ」とか言って、大声をあげるのを止めることだ。「アメリカ人」「ドイツ人」「フランス人」「白人」「黒人」「ユダヤ人」、あるいは「レプティリアンだ」というのもやめるべきだ。こういう「大衆」はいっさいかかわってはいない。かかわっているのはある「一定の血統」と、その内部派閥だけなのだ。
 
一つの人種なり、民族なり、信仰体系なりを非難することは、まさにブラザーフッドがわれわれに求めていることだ。なぜなら、大衆が互いに分裂していれば、統一がとれず、もめごとが多くなり、派閥抗争に発展するからだ。まさに、「分割して統治せよ」だ。裏で操っているのは、いくつかの血統と、今あげたような国々や民族のすべてを通して活動している「使い走り」とで作っているネットワークだ。大衆は一切何も知らされてはいない。(下巻295ページ)

  これは明らかに「ユダヤ人(人種)」「ユダヤ民族(民族)」「ユダヤ教(信仰体系)」を念頭に置いて述べられたものです。アイク自身は、「ユダヤ(人・民族・教)」が世界を支配下に置こうという謀略を持っていると見られていることを知っていて、それをストレートに表現することなく、一般論として処理しているのです。見事な目くらましと言わざるを得ません。
  それ以外にも次のような表現で「ユダヤ(人・民族・教)」を弁護しています。

  レプティリアンが世界支配の媒体として利用しているのはおもに白人種であるが、彼らは、中国人や日本人、アラブ人やユダヤ人とも交配を重ねている。(上巻151ページ)

 
「ユダヤ人だけがレプティリアンの手先になっているわけではない」ということを言いたいのでしょう。アイクによれば、日本人にも憑依されている者はいるようです。「世界を支配しようとしている日本人がいる」ということでしょうか。

  われわれがユダヤ人として呼んでいる人びとの大部分は、イスラエルの地にではなく、コーサカス山地にその起源を持っている。
  歴史学や人類学の研究によって、ユダヤ人と呼ばれている人々のなかで古代イスラエルとなんらかの遺伝的つながりを持っていると考えられる人は、ほんのわずかにすぎないということがわかっている。(上巻178ページ)


  「だから、現在のユダヤ人は、新約聖書の中でイエスを謀略にかけて殺害したとされているユダヤ・パリサイ派とは遺伝的関係はないのだ」ということを言いたいのでしょう。

  ヒンドゥー教、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教などの大宗教は皆、その起源を同じくするものである。それらはみな、7千年前の大洪水の直後アーリア人やそのレプティリアン(爬虫類型異星人)との混血種が出現した中近東から派生したものだ。これらの宗教は、人々の精神を恐怖や罪悪感によって封じ込めるべく作り出されたものだ。(上巻216ページ)

  ユダヤ教をさりげなくその他の宗教と並べ、決して特殊性がないように思わせています。キリスト教の母胎となった新約聖書をご覧いただければ(「マタイの福音書」だけに目を通していただいても)、それが「人々の精神を恐怖や罪悪感によって封じ込める」ものでなく、むしろその逆であることは一目瞭然です。このあたりのアイクの決めつけは明らかに何らかの意図を持っていることが読み取れます。

  イスラエルの子孫たるユダヤ人の物語の大部分は架空のものである。しかし、そのヴェールの下には真実が隠されている。現在に至るまでの数年間、ユダヤ人ほど精神的に捕らわれの身とされてきた人々はいなかった。なぜなら一般のユダヤ人たちは、ユダヤ上層部のブラザーフッドによって、情け容赦ない残酷な迫害を通じての奇怪な精神操作を受け、彼らの計画を推進するために利用され続けてきたのだから。「ユダヤ」のロスチャイルド家は、莫大な金をナチスに出資することによって、一般のユダヤ人たちを恐るべき悲惨な結末へと追い込んだ。(上巻222ページ)

  「悪いのはみなロスチャイルド一族なのです。そして、ロスチャイルドが誕生(18世紀)する前にユダヤ人が働いたとされる悪事の数々の大部分は架空の物語なのです」とアイクは断定しています。ただし、その検証はなされていません。このようにアイクは、ユダヤに都合の悪いことは、イエスという人物を十字架にかけさせたことを筆頭に、すべて架空の物語ということにしてしまいます。

  バビロン時代以来編纂され続けてきたすさまじい量の『トーラー』および『タルムード』は、個人の日々の生活をこと細かく規定するものであり、人間精神に対する砲撃と言ってもよいほどのものでもあった。(中略)
  レヴィ人によって作られたこの書物は非ユダヤ人を排撃する病的な人種主義に満ちており、少しでもユダヤに挑戦する者があれば徹底的に「殲滅」するように説いている。『タルムード』は世界一極悪な人種主義の書である。その精神の病の深さを示すいくつかの例をあげてみよう。
 「ユダヤ人だけが人間であり、非ユダヤ人は家畜である」
 「非ユダヤ人はユダヤ人の奴隷となるために創られたものである」
 「非ユダヤ人との性交は動物との性交と同じである」
 「非ユダヤ人は病気の豚以上に忌避されるべきものである」
 「非ユダヤ人の出生率は極力抑えなければならない」
 「雌羊やロバを失っても取り返しがつくように、非ユダヤ人についても取り替えがきく」
  これらは単に凶悪な人種主義というにとどまらない。もう一度よく読んでいただきたい。それはまさに、ドラコ・レプティリアンとその手下どもが人類に対してとっている態度そのものなのだ。このような恐るべき内容は一般のユダヤ人によって書かれたものではない。
  一般のユダヤ人たちは、このような恐るべき信仰の犠牲者なのだ。
  確認しておきたい。『タルムード』はレヴィ人によって書き上げられた書物である。その彼らは、バビロニアのレプティリアン・ブラザーフッドの血流に属する秘密司祭団であり、ユダヤの人々に対してはアドルフ・ヒトラーほどの誠実さも持ち合わせてはいなかったのだ。だからユダヤ人を責めるのは筋違いだ。それこそブラザーフッドの思う壺なのだから。「分割して支配せよ」は彼らの基本戦略だ。(上巻231ページ〜)


  『タルムード』が極悪の書であることは一応認めています。しかしながら、それがなぜユダヤ人のために書かれたのか、何の目的で書かれたのかについては説得力が足りません。ですからなかなか苦しい弁護内容となっています。なぜユダヤ人と非ユダヤ人を分割しなくてはならないのか――。頼まれもしないのに『タルムード』という秘密文書を作成して、その中でユダヤ人だけを特別扱いする理由は何なのか――。そもそもレヴィ人とはいったい何者で、『タルムード』が彼らの作という証拠はどこにあるのか――。それらには触れずに、「とにかくユダヤ人は悪くはないのだ」と結論だけを急いでいる感じです。

  少数のエリートたちからみれば、ユダヤ人であろうとカトリックであろうとイスラムであろうと、支配対象であることに変わりはない。これらすべての宗教や人種といったものの欺瞞性は、今日ユダヤ人と呼ばれている人々の実情を見れば明らかだ。あるユダヤ人の人類学者は言う。ユダヤ人なる「人種」は存在しない、と。ユダヤというのは信仰であって人種ではない。だから「ユダヤ人」という概念はまったくの捏造である。(中略)ここで留意すべきは、ユダヤ教徒のなかにも他の文化に属する者のなかにも、レプティリアンの血を受け継ぎ秘密裡に活動している特別な人種が潜んでいるという事実である。(上巻235ページ)

  要するに、「ユダヤ人だけが特別に悪いことをしてきたわけではない。どんな文化に属する者にもレプティリアンは憑依しているのだから」と、世界中で悪事を働いてきたとされるユダヤ人を徹底的に弁護しています。最終的には、「もともとユダヤ人なる人種は存在しないんだ」ということで、イエスと同様、ユダヤ人種までが架空の存在にされてしまいました。

  19世紀末に発見された『シオン賢者の議定書(プロトコール)』は、20世紀に起こったできごととその操作手法を、驚くべき正確さで物語っている。略して『プロトコール』と呼ばれるそれらの文書は、ロスチャイルドらレプタイル・アーリアンによる創作である。(中略)
  ブラザーフッドは『プロトコール』の内容に対する信用度を落とすのに躍起になっている。それほど『プロトコール』の内容は的を射ているのである。
  私は『プロトコール』のことを、一般に言う「ユダヤ」の手によるものであるなどとは、まったく思っていない。はっきり言えば『プロトコール』は、レプタイル・アーリアンによって「ユダヤ」のものであるかのように見せかけて作られたものだ。(上巻488ページ〜)


  ここでも“犯人”は姿の見えないレプタイル・アーリアンということになってしまいました。アーリア人を操って書かせたという異次元の存在を証人喚問をすることはできませんので、確かめるすべはありません。アイクは異次元に行って見てきたのでしょうか‥‥。かくてアイク法廷では、「証拠不十分につきユダヤは無罪!」ということになったようです。

  シオニズムは陰謀の中心であると言われることもあるが、それは間違っている。それは、はるかに巨大なブラザーフッド・ネットワークの一部にすぎない。シオニズムはユダヤ人固有のものではない。それは一種の政治運動である。シオニズムを支持しないユダヤ人は大勢いるし、シオニズムを支持する非ユダヤ人もかなりいる。「シオニズム」イコール「ユダヤ人」と考えるのは、「民主党」イコール「アメリカ人」と考えるのと同じようなものだ。(上巻521ページ〜)

  こうして、徹頭徹尾、「ユダヤ」擁護の内容が続きます。これならADL(ユダヤ名誉毀損防止連盟)から抗議を受ける心配はないでしょう。逆に表彰状と賞金が贈られるに違いありません。
  かつて文藝春秋社が創刊したばかりの『マルコポーロ』という雑誌に、「アウシュビッツのユダヤ人虐殺はなかったのではないか」という記事を掲載しただけで、たちどころにADLから抗議を受けて廃刊に追い込まれたことがありました。私はその創刊号を持っていますが、決して過激な内容ではありません。
  今日、「ユダヤ」を名乗る勢力がこれだけ強大な力を持っていること、そして「ユダヤ民族」の擁護のために他の民族にはない過敏な反応を示すことについて、アイクはどう考えているのか気になるところです。

  さて、ユダヤ問題が長くなりましたが、私がアイクの文章で最も問題があると感じたのは以下の内容です。ここでも、アイクはアメリカや中南米の原住民を虐殺したのがスペインからやってきたコロンブスをはじめとするユダヤ人を中心とした人物であったことにまったくふれていません。それどころか、「暴力を受ける側にもそれと同じような(争う)波長があるからだ」とまで言い切っています。
  インディアンの文化に全く理解を示すことなく、「戦闘用に顔に絵の具を塗りたくるような心性」と言い切っていますが、インディアンが顔に模様を描くのは、決して戦いの時に相手を威嚇するためのものではなかったはずです。それを「殺戮と争いがあふれていた」ことの証明のように断定している姿勢にも、たいへん傲慢なものを感じます。愛のカケラも感じられない人物と言ってよいでしょう。
  以下は『
大いなる秘密(下)世界超黒幕』の515ページ〜516ページの内容です。

  キリスト教愛国主義者に、ブラザーフッドのアジェンダに代わるものは何かと尋ねると、「神のもとに一つにまとまった国」を作りたいと言う。いいだろう。だが、誰の言う神だ? キリスト教の神か、イスラム教の神か、ヒンズー教の神か。それともニューヨークのエセルやロサンジェルスのビルが見た神か。いやいや、彼らが言っているのはもちろんキリスト教の神、彼らが信じている神の姿だ。つまり彼らはブラザーフッドの代わりに自由を求めているのではなく、彼ら流の独裁を求めているのだ。ここでも両者は、自分の意思を他者に押しつけ、他者の生き方や信仰を抑圧しようとしている。どんな口実があるにせよ、互いに引き合わずにはおられないのも、同じ周波数帯で活動しているからだ。
  (中略)
  キリスト教過激派に当てはまることは、イスラム教過激派にも言える。ヒンズー教やユダヤ教ほか、あらゆる宗教の過激派についてもそうだ。これは、ヨーロッパ人がやってきた時点のアメリカ原住民についても、ある程度当てはまる。アメリカ原住民の文化には驚異的な知恵もあるし、すべてのものがつながっているということに関しても、ヨーロッパ人よりもはるかに深い理解をしている。
  だが、ここで極端に走って、ニューエイジ運動を支持した多く者のような
甘っちょろいアメリカ原住民像を描いてはいけない。白人が来るまでのアメリカ先住民の各部族は、その多くが、単に部族が違うからという理由だけで互いに争っていた。
  殺戮と争いがあふれていたのだ。そのように荒々しいばかりで、戦闘用に顔に絵の具を塗りたくるような心性で生きていれば、同じように暴力を正当化する別のエネルギーを引きつけるだろう。
暴力も選択肢のうちと考える2つのグループがいれば、必ず両者のあいだには霊的な対立が起こるものなのだ。
          ―― 『大いなる秘密(下)世界超黒幕』(デーヴィッド・アイク/三交社)

  コロンブスの悪業については、既に当サイトの「ホンのひとくち」に以下の2冊の書籍の抜粋をアップしています。
 
@ 『日本は掠奪国家アメリカを棄てよ
 A 『ユダヤ問題入門

  ここで紹介されている話は史実として幅広く知られているものです。アイクがそのようなアメリカ建国の原点となる歴史を知らなかったはずはありません。この点で、「ラブloveが大切だ」と言っているアイクという人物の欺瞞性を感じないではおられません。アイクの書籍を通じて強く感じるのは、新約聖書でイエスが弟子たちに「世の終わりに大切なこと」として教え諭した内容と、正反対の波長です。
 その一つは「言葉使いが汚いこと(「聖書の神なんか、糞食らえだ!」といった表現)」「知ったかぶりで傲慢な態度(=謙虚さがない)」「歴史的に多くの人の信仰の対象となってきた神を口汚く罵っている(=自分を高くする者)」などなどです。ということで、私もこれ以上アイクの文章にかかわりを持ちたくありません。彼の粗い波長に染まりたくないからです。
  次回はお口直しに、というより「本当にユダヤは歴史的に何も問題がなかったのか」ということを見ていくために、ユースタス・マリンズの『
衝撃のユダヤ5000年の秘密』と太田龍氏の『ユダヤ問題入門』の内容を抜粋してご紹介していきたいと思います。ご期待ください。

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